遂にヴィンランドに降り立ち開拓生活を送る「ヴィンランド・サガ」26巻です。

本当に端的に一言だけ、すごく良かったです。この「ヴィンランド・サガ」という物語が迎える終焉ともいうべき結末を迎えています。これを描くためだけに、この26巻という長い話を連ね続けたと言っても過言ではないのではないでしょうか。

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「トルフィン 私はお前を赦すよ」

このシーン、そしてここに続くトルフィンの表情、思いが「ヴィンランド・サガ」で描きたかったものなのでしょう。それほどまでのインパクト、そして感情を揺さぶられる最高のシーンになっていました。読者の多くはこれを読むためにこの作品を読み続けていたのかもしれません。

思い返すと、戦士という存在に憧れて密かに船旅についていき、そこで父親を殺され、その仇を殺すために一流の戦士となり何人もの人を殺め続けた子供時代。

仇敵であり育ての親でもあるアシェラッドの死による喪失感と、それまで人を殺め続けたことによる後悔、苦悩に苛まされ続けた奴隷時代。

良き友を得、過去の罪を抱えながらも正面を向き立ち上がり、その贖罪のために人を殺さないという誓いとともに送った時代。

そして、妻や新たな仲間たちとともに緑豊かなで戦争のない国を目指して開拓を始めた開拓時代。

これらの人生を送る中で、トルフィンは前向きになりつつも心の陰では常に過去の自分と立ち向かっていました。そしてその罪は、決して許されるようなものではなく、永遠にトルフィンの心を蝕む闇として立ち塞がるはずのものでありました。

それが、トルフィンが次に人を殺した時には必ず殺すと言って見張りの如くついて来たノルドが、トルフィンの罪を全て赦すと告げたわけです。

決して許されることのないと思っていたトルフィン。そして何よりも、トルフィンに家族を殺されたことからずっと殺意を向けていたノルド。そのノルドが赦すと告げたことで、如何にトルフィンの心の闇が晴れたのか。それは、このシーン後のトルフィンの描写で見事に語られています。

やはりこういうシーン、漫画だからこそ得られる素晴らしいシーンなのではないでしょうか。ほとんどセリフなどなく、その場での表情、動き、それらの表現全てから、トルフィンの心が解放されたことを読み取ることが出来るのです。さながら、名映画のクライマックスシーンを見ているかのようでした。素晴らしい描写だと思います、前述しましたが、このシーンのために「ヴィンランド・サガ」という長い物語があったのでしょう。


本当に、本当によかった。たった数ページなのに、感想描くためにシーンを見返す度に涙が出てきます。最初から名作だと思って読み続けて来ましたが、この26巻で改めて名作であるということを証明したと思います。

さて、「ヴィンランド・サガ」はあとはエンディングに向かうだけな気がしますが、ここからあとどれくらい続くのでしょうか。原住民との争いがありそうな気もするので、そこも描かれたら余裕で30巻越えそう。でも逆に、次の巻で一気に時代が進んでエンディングを迎えても納得できます。さてどうなるやら、楽しみです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ヴィンランド・サガ(26) (アフタヌーンコミックス)
幸村誠(著)
講談社 2022-05-23T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.9
¥693