太平洋戦争末期のペリリュー島(パラオ)の戦闘を描いた「ペリリュー 楽園のゲルニカ」の外伝作品が「ペリリュー外伝」です。外伝と銘打っていますが、あくまで本編を多角的に視たシナリオ展開となっています。
話は大きく4種類。片倉分隊に所属していた吉敷の話、ペリリューに上陸したアメリカ兵視点の話、田丸の帰国後の話、ペリリュー島の住民視点の話となります。
「この死体を痛めつけろ 見つけたアメ公が震え上がるくらいな」
田丸と合流する前の吉敷が描かれるのが最初の話となります。物資調達と称して死体漁りがメインとなっているような片倉分隊、そこでの対アメリカ兵とのやり取り等が描かれます。
一方で吉敷は新兵であり、まだ戦闘に抵抗がある状態。そこで上記のようなエゲつない命令に従うのかどうか、という葛藤が見れます。
戦争という極限状態に染まってしまっている片倉分隊の面々と、まだ染まっていない吉敷の対立等が見どころです。窮地に追い込まれて、もう正常な思考も出来ないということなんだろうとも読み取れます。
また、敵兵を発見して攻撃を仕掛けたものの、その大半は負傷兵である状況にも遭遇してしまいます。敵とはいえ、弱っている相手を手に掛けるべきなのか、個人としてはともかく、軍として取るべき行動とは、色々と考えさせられる描写です。
アメリカ兵視点のお話は、ペリリュー島に上陸する新兵のものです。国からは数日で落とせる簡単な戦闘という情報をもらっており、勝ち戦のような気分で戦場に臨むアメリカ兵達。しかし、揚陸艦は日本軍から徹底的な抵抗を受けます。
「神の御加護を」
雨のように降り注ぐ銃弾、砲弾を掻い潜りながらの上陸作戦。仲間達は次々とその攻撃の前に倒れていき、果たして生きて上陸出来るのか。そして上陸した先もまた戦場であり、これが戦争だというものを嫌というほど思い知らされるお話です。
作中では豊富な物資で次々と日本兵を追い込んでいましたが、そのアメリカ兵もまた、嬉々として戦闘を好んだわけでは決してなく、田丸や吉敷のようにただの戦争に駆り出された一般人であるという描写なのでしょう。すなわち、本質的な勝者は誰もいないという、戦争の悲惨さを表現したのではないでしょうか。
これらのように、本編では語られなかった視点のお話が多種多様と出てきます。やっぱり「ペリリュー」は決して写実的な絵ではないのに読みやすくて、その絵柄だからこそきっちりと戦争の怖さというものを教えてくれます。なので非常にすんなり読めてしまうのです。ホント面白い。
もちろん本編も面白かったですが、外伝であればもっといろんな視点、特にアメリカ兵視点のものがもっともっと読みたいですね。戦争が集結したのに抵抗を続ける日本軍に対して、どういう気持ちで対応を続けたのかとか。楽しみです。
眠気覚め度 ☆☆☆
本編11巻の感想はこちら(終戦、帰国、それから現代へ、歴史をつなぐ意欲作ここに完結)
話は大きく4種類。片倉分隊に所属していた吉敷の話、ペリリューに上陸したアメリカ兵視点の話、田丸の帰国後の話、ペリリュー島の住民視点の話となります。
「この死体を痛めつけろ 見つけたアメ公が震え上がるくらいな」
田丸と合流する前の吉敷が描かれるのが最初の話となります。物資調達と称して死体漁りがメインとなっているような片倉分隊、そこでの対アメリカ兵とのやり取り等が描かれます。
一方で吉敷は新兵であり、まだ戦闘に抵抗がある状態。そこで上記のようなエゲつない命令に従うのかどうか、という葛藤が見れます。
戦争という極限状態に染まってしまっている片倉分隊の面々と、まだ染まっていない吉敷の対立等が見どころです。窮地に追い込まれて、もう正常な思考も出来ないということなんだろうとも読み取れます。
また、敵兵を発見して攻撃を仕掛けたものの、その大半は負傷兵である状況にも遭遇してしまいます。敵とはいえ、弱っている相手を手に掛けるべきなのか、個人としてはともかく、軍として取るべき行動とは、色々と考えさせられる描写です。
アメリカ兵視点のお話は、ペリリュー島に上陸する新兵のものです。国からは数日で落とせる簡単な戦闘という情報をもらっており、勝ち戦のような気分で戦場に臨むアメリカ兵達。しかし、揚陸艦は日本軍から徹底的な抵抗を受けます。
「神の御加護を」
雨のように降り注ぐ銃弾、砲弾を掻い潜りながらの上陸作戦。仲間達は次々とその攻撃の前に倒れていき、果たして生きて上陸出来るのか。そして上陸した先もまた戦場であり、これが戦争だというものを嫌というほど思い知らされるお話です。
作中では豊富な物資で次々と日本兵を追い込んでいましたが、そのアメリカ兵もまた、嬉々として戦闘を好んだわけでは決してなく、田丸や吉敷のようにただの戦争に駆り出された一般人であるという描写なのでしょう。すなわち、本質的な勝者は誰もいないという、戦争の悲惨さを表現したのではないでしょうか。
これらのように、本編では語られなかった視点のお話が多種多様と出てきます。やっぱり「ペリリュー」は決して写実的な絵ではないのに読みやすくて、その絵柄だからこそきっちりと戦争の怖さというものを教えてくれます。なので非常にすんなり読めてしまうのです。ホント面白い。
もちろん本編も面白かったですが、外伝であればもっといろんな視点、特にアメリカ兵視点のものがもっともっと読みたいですね。戦争が集結したのに抵抗を続ける日本軍に対して、どういう気持ちで対応を続けたのかとか。楽しみです。
眠気覚め度 ☆☆☆
本編11巻の感想はこちら(終戦、帰国、それから現代へ、歴史をつなぐ意欲作ここに完結)
ペリリュー ―外伝― 1 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ (ヤングアニマルコミックス)
posted with AmaQuick at 2022.08.03
武田一義(著), 平塚柾緒(太平洋戦争研究会)(著)
白泉社 2022-07-29T00:00:00.000Z
¥660
白泉社 2022-07-29T00:00:00.000Z
¥660