名作

ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 21巻 - 虎松譲二事件完結!大事件の事後処理といつものギャグパートが再開します

20巻の大事件事後処理から始まる「ハコヅメ」21巻です。アンボックス含むと実質22巻目です。

21巻の前半は伊賀崎交番署長の過去篇から繋がる物語の後処理になります。主にあの事件がどれだけ対応した川合と源に影響を与えたのか、どうしてあの事件当時あのような行動を取れたのか、そして伊賀崎は今後どうなるのかという描写がされています。これで虎松譲二との因縁話もおそらく完結です。

やはりその中でも、新任ながらに源を信じて人質となった川合の機転、そして感情、更に如月部長との関係と心が揺れ動きまくっているのが読み取れます。

正直この肝の座りっぷりは1巻の頃から考えられないほどの成長ではないでしょうか。いや、成長どころかむしろそれが川合のらしさなのかもしれません。

元々似顔絵捜査の時から発揮されていたように、川合は洞察力がものすごいのです。人の顔を見るだけで今日は機嫌が悪そうですねと挨拶代わりに言ってしまうほどで、誰よりも周りのことを観て察していいます。人質になった経緯もそのような洞察があったからこそと語っています。

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「私は女だから源部長ほど酷い目に遭わなかった」「弱音を吐けない源部長のほうがきついはず」

その洞察に加えてこの気遣いです。源のことを嫌っていると言いつつも、山田や聖子ちゃん同様に源のことを信頼しており、源ならこう動いてくれる、源ならこう考えてくれるというところまで察して行動しています。おまけにその後のことまで気を遣えている、とんでもなく成長していますね。敷根に爪のアカ飲ませてやりたい。

それだけの洞察力、気遣いがあるくせに、頑なに如月部長の気持ちに真正面から応えようとしないのがまた川合らしくていいですよね。恋愛慣れしていなくて、自分が憧れていてイケメンに迫られていて、感情がわけわからなくなっているんだと思います。

だからこそ、事件後にどれだけ如月部長から心配されても、心の余裕がまだなくて、むしろ心の負担になってしまっているのが見ていて切ない。


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「好き  藤部長が大好き‥!」

そうして、心の弱った時に一番言葉を掛けてほしい相手が聖子ちゃんなんですなあ。元々女性警官バディものとして始まったハコヅメ、ここで原点回帰してきましたね。

なんかこの流れだと、結局如月部長とはどうともならない気がしてきます。20巻まではまだ何か起きそうな気がしてましたが、川合が無理ってなるんじゃないかなあこれ。


21巻の後半は事件の後遺症を残しつつも、徐々に元のハコヅメに戻って来てます。いわゆるこれまでもあったギャグパートを挟みながら事件に対峙していく流れです。

この元の流れ、面白い、確かに面白いんですが、、、シリアスパートが面白すぎたことに加えて、事件の事後処理である21巻前半も面白かったので、正直ギャグパートが相対的に面白くなく感じてしまっている気がします。

それと、絵がうまくなりすぎてるのも弊害な気がするんですがどうでしょう。やっぱり8巻とか10巻あたりの絵がギャグパートには向いていた気がします。シリアスパートは今の絵で抜群に合うと思うのですが。

うーん、難しいですね、どっちもまさしくハコヅメなんだけど、どっちであるべきなんだろう。やはりギャグあってのハコヅメとも言えるので、今くらいのバランスが丁度いいのかなあ。


そしてそして気になる次巻予告ですよ。重大事件は起きなさそうですが、聖子ちゃんと山田がどうなっちゃうのの展開じゃないですか。もしかしてギャグと恋愛を全面に押し出していくのかな?


ギャグパートはみたいなことを書いてはしまいましたが、21巻も実に面白かったです。噂ではそろそろハコヅメは完結して、今の年齢のうちに描ける作品に取り掛かる予定とのこと。ハコヅメが何巻まで続くのか、そして終わってしまうのは寂しいのですが、新作が読めるならそれも待ち遠しいです!

参考:販売絶好調の『ハコヅメ』、なのになぜ今“終わる”のか?


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ハコヅメ3巻の感想はこちら(川合先生初登場の似顔絵特別捜査本部)
ハコヅメ4巻の感想はこちら(黒田カナ伝説はここから始まった)
ハコヅメ5巻の感想はこちら(とにかく笑える内容盛り沢山)
ハコヅメ6巻の感想はこちら(伝説の笑ってはいけないお誕生日会が収録されたハコヅメの最高傑作巻)
ハコヅメ7巻の感想はこちら(煽り役としてパーフェクトな聖子ちゃんが見れます)
ハコヅメ8巻の感想はこちら(これ警察学校で習ったやつだ!)
ハコヅメ9巻の感想はこちら(色々な話が詰め込まれている、これぞハコヅメ)
ハコヅメ10巻の感想はこちら(迷惑防止条例と強制わいせつの違いが勉強になります)
ハコヅメ11巻の感想はこちら(1巻の伏線を見事回収、この日の出会いを何度も後悔することになる)
ハコヅメ12巻の感想はこちら(同期の桜完結、川合の成長を感じられる最高の展開)
ハコヅメ13巻の感想はこちら(アンボックス事件のカップルが登場)
ハコヅメ14巻の感想はこちら(奥岡島事件発生篇)
ハコヅメ15巻の感想はこちら(奥岡島事件解決篇)
ハコヅメ16巻の感想はこちら(1巻で出てきたキャラが再登場する感動の成長譚)
ハコヅメ17巻の感想はこちら(アンボックスを読んだ後に読むと非常に切ない)
ハコヅメアンボックスの感想はこちら(警察の負の感情を全力で主張した傑作)
ハコヅメ18巻の感想はこちら(即ハメあんあん激イキスクール)
ハコヅメ19巻の感想はこちら(20巻を読むために覚悟させられる巻なのではないか?)
ハコヅメ20巻の感想はこちら(アンボックス級のシリアス話が一貫した傑作巻)


ハコヅメ~交番女子の逆襲~(21) (モーニングコミックス)
泰三子(著)
講談社 2022-06-22T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.7
¥693




おまけ
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遂に噂の術科師範が出てきてここは盛大に笑ったwww


ヴィンランド・サガ 26巻 - トルフィンの贖罪が解放される日

遂にヴィンランドに降り立ち開拓生活を送る「ヴィンランド・サガ」26巻です。

本当に端的に一言だけ、すごく良かったです。この「ヴィンランド・サガ」という物語が迎える終焉ともいうべき結末を迎えています。これを描くためだけに、この26巻という長い話を連ね続けたと言っても過言ではないのではないでしょうか。

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「トルフィン 私はお前を赦すよ」

このシーン、そしてここに続くトルフィンの表情、思いが「ヴィンランド・サガ」で描きたかったものなのでしょう。それほどまでのインパクト、そして感情を揺さぶられる最高のシーンになっていました。読者の多くはこれを読むためにこの作品を読み続けていたのかもしれません。

思い返すと、戦士という存在に憧れて密かに船旅についていき、そこで父親を殺され、その仇を殺すために一流の戦士となり何人もの人を殺め続けた子供時代。

仇敵であり育ての親でもあるアシェラッドの死による喪失感と、それまで人を殺め続けたことによる後悔、苦悩に苛まされ続けた奴隷時代。

良き友を得、過去の罪を抱えながらも正面を向き立ち上がり、その贖罪のために人を殺さないという誓いとともに送った時代。

そして、妻や新たな仲間たちとともに緑豊かなで戦争のない国を目指して開拓を始めた開拓時代。

これらの人生を送る中で、トルフィンは前向きになりつつも心の陰では常に過去の自分と立ち向かっていました。そしてその罪は、決して許されるようなものではなく、永遠にトルフィンの心を蝕む闇として立ち塞がるはずのものでありました。

それが、トルフィンが次に人を殺した時には必ず殺すと言って見張りの如くついて来たノルドが、トルフィンの罪を全て赦すと告げたわけです。

決して許されることのないと思っていたトルフィン。そして何よりも、トルフィンに家族を殺されたことからずっと殺意を向けていたノルド。そのノルドが赦すと告げたことで、如何にトルフィンの心の闇が晴れたのか。それは、このシーン後のトルフィンの描写で見事に語られています。

やはりこういうシーン、漫画だからこそ得られる素晴らしいシーンなのではないでしょうか。ほとんどセリフなどなく、その場での表情、動き、それらの表現全てから、トルフィンの心が解放されたことを読み取ることが出来るのです。さながら、名映画のクライマックスシーンを見ているかのようでした。素晴らしい描写だと思います、前述しましたが、このシーンのために「ヴィンランド・サガ」という長い物語があったのでしょう。


本当に、本当によかった。たった数ページなのに、感想描くためにシーンを見返す度に涙が出てきます。最初から名作だと思って読み続けて来ましたが、この26巻で改めて名作であるということを証明したと思います。

さて、「ヴィンランド・サガ」はあとはエンディングに向かうだけな気がしますが、ここからあとどれくらい続くのでしょうか。原住民との争いがありそうな気もするので、そこも描かれたら余裕で30巻越えそう。でも逆に、次の巻で一気に時代が進んでエンディングを迎えても納得できます。さてどうなるやら、楽しみです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ヴィンランド・サガ(26) (アフタヌーンコミックス)
幸村誠(著)
講談社 2022-05-23T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.9
¥693


もういっぽん! 18巻 - 強者同士の思いをぶつける戦いが熱すぎる

来年のTVアニメスタートが決定して原作も超大盛りあがりしている「もういっぽん!」18巻です。

未知たち2回目の金鷲旗、去年を超えるための3回戦、超強敵のダークホースである幸徳学園と決着する巻となりました。

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勝負はもつれにもつれて大将戦、青西のエース氷浦永遠と幸徳学園最強大和が全力でぶつかります。

ここまでの幸徳学園戦、先鋒の南雲を始めとした、ある意味青西側は挑戦者という立場であったように思います。

剣道から柔道に転向し、まだ柔道を始めて1年しか経っていない南雲、中学から未知とともに柔道を続けていたけれども、決して強者とは言えない立場で努力を続けてきた早苗、相撲の経験があるとはいえ高校から柔道を始めたばかりの司、柔道を続けていたけれども強さにあまり結びつかず試合で一本経験をしたことがなかった姫コ。

いずれも強者という立場ではなく、いつ何時も挑戦者としての心持ちで戦ってきたのではないでしょうか。

そこに対して、青西のエース氷浦永遠は、青西内だけでなく周囲から認められる強さを持った強者です。絶対的な青西のエースとして、時には相手を秒殺し、時にはチームの強さを底上げするために尽力し、青西を代表する強者として立ち振舞いました。

その相手となったのが幸徳学園のエースである大和になります。すなわちこれは、弱者による挑戦ではなく、強者による頂上決戦なのです。※あまり弱者と書くと早苗達が弱いという誤解を生みそう。


何が言いたいかというと、早苗や姫コは、試合中いつも練習を思い返すことで、これまでの練習や努力の上で強者に立ち向かうジャイアントキリングが幾度も表現されてきました。

そしてそれが何度も私の涙腺を刺激して感情を思い切り揺さぶってきたので、この努力やみんなの力を一つにする思いというのが「もういっぽん!」の最大の魅力だと思っています。

それに対し、実は永遠の試合というのはあまり努力を思い返すことが無いというか、これまで作中で培ったものを使って勝利に繋げるというわけではなく、作中で描かれていない永遠自身の練習努力の成果で勝っていたところがあると思うのです。※もちろん、その強さの背景にみんなの思いが乗っかっています。

例えばやぐら投げを繰り出したところとか、腹包みを繰り出したところとかは、いきなり永遠が作中で繰り出すわけじゃないですか。これが永遠の強さと成長を描写しているところだと思うのですよね。

どうしても未知や早苗を始めとした実力が足りないキャラ達の練習にフォーカスするために、永遠の細かい練習描写にはあまり割かれていません。そのためか、これまで早苗や姫コの試合で表現されたようなこれまでの努力成果による盛り上がりはありません。

しかし、強者の戦いには強者の戦いによる盛り上げ方があるのがまた、「もういっぽん!」の面白いところなのだと改めて気付かされたわけです。

強者というのはもちろん永遠だけでなく、対戦相手の大和も含んでいます。この2人の戦いはこれまでの4人の戦いと違い明らかに異質であり、お互いがただお互いのためだけに戦っているのが本当に強者であることを感じさせるのです。

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「自分を強くしてくれる相手さえおれば…大和忍/氷浦永遠は…どこまででも辿り着ける」


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「自分のために 私は今この瞬間 私自身がただこの人より強いことを証明したい 柔道はみんなが作ってくれた…私の道」

このシーン、これまではチームとしてというところがあったにも関わらず、彼女たちには自分のことしか見えていないという人間臭さが本当にたまらなくて良かったです。

そして何度も書きますが、これまでのみんなの思いと努力を重ねたチーム戦から、強者による自分自身のための戦いを表現しているのが素晴らしいと思うのです。

また、この場面を応援している未知の表現がまた良くて、2人の世界が出来上がっていることに気づくと同時に、まだ自分がそこのレベル達していないと思い知らされてるんです。怪我で試合に出られなく、練習期間も短くなってしまい、おそらく未知は心の中で負い目を感じています。

しかしそんなことをおくびにも出さず、チームメイトを全力で応援サポート、そして気遣いが出来るように成長した未知にも拍手を贈りたいところ。試合に出ることができなくても、大きな成長をまたしたのだろうなあ。


熱い青春から熱いスポ根まで見せてくれる「もういっぽん!」は本当に面白い。感情は揺さぶられるし青春を思い出すしこんな学生生活送りたかったと思わせる。この作品に出会えたことに感謝。


お話としては、やはり3巻に及んだ幸徳学園戦が青西の金鷲旗のピークでした。お互いのキャラを掘り下げまくるし決勝みたいな盛り上げ方してたもんなあ。そのぶん熱量が物凄くてこっちも本当に心から楽しめて読めました。

また、これまで既に多くのキャラクターが出てきて、その彼女たちもまた成長を続けていることをしっかり表現していることが嬉しくなります。特に霞ヶ丘のモブキャラたちがモブから完全なレギュラークラスまで成長していて、早苗や未知達の思いを焚き付けているのがホント素敵。

キャラが沢山出てるのにしっかりみんな個性的だし、みんなが魅力的なのがたまりません。主人公やライバルだけでなく、それ以外をきちんと掘り下げてキャラ付けされる作品は名作の証だと思います。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


15巻の感想はこちら(2回目の金鷲旗、青春と若さをぶつけ合う)
16巻の感想はこちら(最高に熱い青春ドラマが眩しすぎる)
17巻の感想はこちら(全員の思いを一つにして挑む団体戦が美しすぎる)


もういっぽん!【電子特別版】 18 (少年チャンピオン・コミックス)
村岡ユウ(著)
秋田書店 2022-05-06T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥446



おまけ
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最後のこの顔好き過ぎるwwwwwwww


忍者と極道 9巻 - ガムテが主人公になりました

ガムテが主人公になった「忍者と極道」9巻です。

9巻でグラス・チルドレン篇が完結します。忍者の犠牲者3名、破壊の八極道の犠牲者3名、双方とも残るは5人ずつで、互いの素性も明らかになり、10巻から第2部が始まる形となります。

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「これがッッ 殺し屋ガムテすべてを賭けた本気の本気だ!! 多仲忍者 てめーには絶対負けない!!」

これまで共に戦ってきたグラス・チルドレンの極道技巧を次々と使い、仲間と共に宿敵忍者(しのは)を倒そうとするガムテ。こんなんもう主人公だろ。。。


しかも忍者(しのは)を倒す為に、自分の命を投げ出してヘルズクーポン2枚服用しているガムテ。

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「オレは…5分で死ぬ」

こんな命の賭け方、もう主人公だろ。。。



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「他人に殺された心はッッ!他人を殺さなきゃ正気ではいられないッ!! 殺さなきゃ生きらんない!!」


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「オレ達は!!そんな生き物なんだ!!! そんな生き物になっちまった!! なっちまったんだ!!!」

いずれも悲しく辛い過去を持つ、グラス・チルドレン。大人に壊されて、壊す立場にならなければ生き残れなかったグラス・チルドレン。彼らの代表として、彼らの受け手として振る舞ってきたガムテの強い思いの吐露。こんなんもう主人公だろ。。。


ガムテが終始格好良くて、正直なところ主人公の忍者(しのは)よりも応援したくなるくらい魅力的なキャラでした。9巻の作者あとがきで少し触れていたのですが、ガムテの初登場はとことん道化で、嫌われる為に存在するキャラだったんですよ。

そんなガムテの思いが解き放たれて、グラス・チルドレンを束ねるカリスマ性を持つ裏付けも明確に受け取れて、忍者(しのは)の宿敵としてここまで格好良い存在になるなど誰が予想出来たでしょうか。

おまけにグラス・チルドレン篇の終盤では、ガムテが忍者(しのは)をずっと名前呼びして明確にライバル視してるのがまた格好良くて。それだけ思いが強いことが読み取れて感動してしまいます。

本当に、本当にこのグラス・チルドレン篇のガムテは素晴らしかった。誰よりも強くて、誰よりも闇が深くて、誰よりも自身の信念を貫いて。そんな魅力的なガムテがいたからこそ、グラス・チルドレン篇はとても面白かったのだろうな。

決着がついたあとも、これまでの中では唯一生首にならず終わりを迎え、その瞬間まで忍者(しのは)と極道(きわみ)の関係をぶち殺す執念は本当にお見事。これでグランドフィナーレになってもおかしくないくらい格好良さが際立ってました。

しかも本当にガムテがほしかったのは、極道(きわみ)からの愛だったことがまた涙を誘います。ガムテらしく、その本心を明かすことなく、信念を貫き通した姿もまたカッコいい。


正直グラス・チルドレン篇はガムテがカッコよすぎたので、忍者たちのカッコよさが霞んでしまっています。これまでは笑いながらも忍者の活躍を見れて、そこまで極道側に肩入れは出来なかったように思います。

それが、このグラス・チルドレン篇では立場が完全に逆転。極道側、特にガムテに個人的には物凄く肩入れしてしまいました。

弱者が挑む強者への挑戦。弱者だからこそ様々な策を弄して忍者を殺そうとする立ち振舞い。その一挙手一投足が全て格好いい。

前回の感想でも書いたのですが、これ以上面白い展開に出来るのでしょうか?グラス・チルドレン篇が面白すぎたので、このあとの展開で盛り下がってしまうことが心配になってしまいます。もちろん相対的な話であって、これまでの面白さを維持するだけでも十分名作に値する作品になると思うのですけれども。


なんかもう、ガムテが死んだことで消失感があります。残りの破壊の八極道が勢揃いしたり、忍者(しのは)と極道(きわみ)が互いの正体を知ってしまったりと第2部に続くための仕込みはいくらでもあるのですが、そこを語っても仕方ない気がするのでここまでにしておきます。

ガムテに合掌。10巻が待ち遠しいです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


6巻の感想はこちら(生首エンターテイメントはグラス・チルドレン篇で大きな転換期を迎える)
7巻の感想はこちら(忍者と極道の共闘は生首エンターテイメントを最高潮に盛り上げる)
8巻の感想はこちら(グラス・チルドレン篇最高潮、ガムテと忍者の決着迫る) 


忍者と極道(9) (コミックDAYSコミックス)
近藤信輔(著)
講談社 2022-04-13T00:00:00.000Z

¥693




おまけ
連載時に気づいていたのですが、以下のコマはそのままでした。

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左手が無いはずなのに両手を使って消火器を潰すガムテ。

左手は2巻時点で忍者(しのは)にぶっ飛ばされてるので、無いはずなんです。ここだけ復活した?



GROUNDLESS : 10巻 -君殺す事なかりせば- - 政治家と軍人

個人的に激推ししている「GROUNDLESS」10巻です。10巻も本当に面白かった。政治家と軍隊の関係性の苦悩を表現していたり、図らずも疫病の話が現実世界と同期していたり、戦闘を繰り返して歴戦の兵になっているダシア自警団の凄さが描写されたりしています。

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10巻はユズハの故郷の話です。9巻はシュバーハンの話を掘り下げていたので、順番にメインキャラクターの背景を掘り下げている形になります。

シュバーハンは当初から活躍しまくってたし、ユズハも衛生兵として最初から活躍していたのでこの展開は嬉しいところ。狙撃兵ソフィアだけでなく、ダシア自警団の面々の過去を含めて苦悩が見えていくのが本当に興味深い。

そしてユズハは島民系の出自で、この世界では差別を受ける側の民族であり、今回の舞台はそのユズハの故郷なので、架空戦記としての国家形成設定を存分に発揮しています。

というのも、今回の政治家と軍隊の話というのは、大陸系にすり寄って島民区を維持し続ける被迫害側の政治の話と、その体制に不満を持つ軍隊派閥の話なのです。現実でもよく聞く話ですね。それが行き過ぎるとクーデターが起きたりとか。

ではなぜ文民統制が成り立つのか、なぜ武器を持たない政治家が軍隊に命令ができるのか、そういった疑問にダシア自警団がある種答えを出す話とも言えます。これは、ユズハの故郷アイアンクラウンがそうなってしまったことと、なぜダシアはそうはなっていないのかの国家形成も含んでいます。

なんだか難しい話になってしまったなあ。まあ、いずれにせよ、そういった思想の話、民族迫害も「GROUNDLESS」のテーマなので、そういったものが楽しめる方なら絶対に楽しめると思います。


今回もダシア自警団が訪れたアイアンクラウンで開放市民軍が蜂起して戦闘が起こってしまうのですが、そのあたりもダシア自警団とアイアンクラウンの防衛隊の違いが如実に出てくるのがやはり面白い。

幾度も訓練を重ねるよりも、数度の実戦を経験し死線を乗り越えた部隊の方が、実戦では結果を出してしまうというところとかが凄くリアルなのです。

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「我々は…落ちこぼれと寄せ集めが運よく生き残っているだけのしょうもない部隊ですよ。」

ここまで読み続けている読者ならまさしく共感するはずなんですよこのセリフ。とんでもない戦いを切り抜けてきて、しかもその大半の成果はソフィアの狙撃で、しかしここまで生き残ってきたダシア自警団。初期メンバしかしっかりとした訓練などしておらず、半分近くがほぼ訓練なしで実戦投入されてきた背景を鑑みると、このセリフの通りなんですよね。ここまで生き残っているからこそ、実戦になると統率の取れた動きができる精鋭となっているわけですが。

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「訓練のときとは比べ物にならないくらい 方針も指示も精神状態の作らせ方も、詳細で明確に行っている…」

やっぱり実戦になるとカッコいい。この命令もひとつひとつが丁寧で非常に緊張感を持って読めるのが「GROUNDLESS」の良さなんです。好きな人にはホントたまらないです。


そしてこの10巻の肝は、やはり前述した通り政治家と軍隊の話でしょう。

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「我が区出身者を前衛に置く事は譲れませんぞ!!!そこは最低限、徹底してお願いしたい!!!」

アイアンクラウン自治区の防衛隊だけでは開放市民軍に敵わないと判断した区長は、即座にダシア自警団に協力を依頼し、その上ダシア自警団にいるアイアンクラウン出身者を前衛に出せと厚かましい依頼をするのです。

これは、ダシア自警団に手柄を取らせても、アイアンクラウン自治区としては自身の自治区出身者が開放市民軍を制圧したと放言したいがゆえですね。そうすることで大陸民に島民自治区として戦えるという牽制になると。

これ、言っていることは人でなしなんですが、ある意味政治手腕としてはそんなに間違っていないとは思います。ただ、作中ではこの区長は悪く書かれすぎかなという気はしますね。実態としてアイアンクラウン自治区の為ではなく区長自身の手柄という欲が強いからというのもありますけど。

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「あなたはどれだけ恥知らずで他力本願なんです…!!!軍人の命もその仕事も…あなたのものではないんですよ!?」

この区長の態度に対して、やはりこの軍人の反応になるわけです。自分たちの力では開放市民軍を制圧できないことがわかってしまったアイアンクラウン防衛隊は、恥を偲んでダシア自警団に制圧を依頼するわけですから。

自分たちが無力だとわからされるのはキツイよなあ。おまけに損害が出たあとであり、しかもその原因はやはり区長の命令に起因してるというのがまた。

なぜ武力を持っている軍人が、武力を持たない政治家に道具のように命を扱われなければならないのか。その葛藤が10巻では炸裂します。

正直この区長は読んでてホント胸糞。人によっては読んでてイライラするかも。

これに似たような話どこかであったと思い返したら「ナポレオン-獅子の時代-」3巻でした。こっちは単に兵士とその上官の話ですが、無能な上官のせいで兵士が死ぬというのは、政治家におもちゃのように扱われる軍人という構図も同じようなものではないかと。

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「戦死者の何割かは味方の撃った銃弾に殺された者だ  兵たちの間で実しやかにささやかれる噂によればその割合は四人にひとり」(ナポレオン-獅子の時代- 3巻より)


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「理由もなく部下をイジメる上官や無能な将校はそうやって片付けられるんです」(ナポレオン-獅子の時代- 3巻より)

軍人の命を好きなように扱う政治家、同じ様なことをされるのでは。。。


というわけで相変わらず高水準の面白さを保っている「GROUNDLESS」10巻でした。ホント面白い、もっと売れてほしい。これが売れないのはおかしい。

ただちょっとキツイかなと思ったのは、ベースになる字が小さいことです。字が小さい上に文字が多いので読むのに苦労するかも。読み切るまで40分くらい掛かりました。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


1巻の感想はこちら(隻眼の狙撃兵 - ミリタリーアクションの傑作)
2巻、3巻の感想はこちら (第三穀倉地域接収作戦 - 初侵攻、新兵、暗闇の戦い、問題山積みの接収作戦)


GROUNDLESS : 10-君殺す事なかりせば- (アクションコミックス)
影待蛍太(著)
双葉社 2022-03-17T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥730


ナポレオン ―獅子の時代― (3) (ヤングキングコミックス)
長谷川哲也(著)
少年画報社 2005-02-10T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.5
¥547


もういっぽん! 17巻 - 全員の思いを一つにして挑む団体戦が美しすぎる

今一番熱い女子高生青春柔道漫画「もういっぽん!」17巻です。今回は表紙を飾った1年生、司と姫コが大活躍します。

17巻も良かった。16巻ほど泣けるわけではなかったけど、司と姫コが熱すぎて熱すぎて、特に姫コがこれまでの鬱憤を晴らすかの如くフォーカスされまくって本当に良かった。


ベスト8を賭けた3回戦、初出場ながら完全なダークホースだった幸徳学園との対戦は、天才南雲とキャプテン早苗の頑張りで2勝2敗の状況。そこで回ってきたのが大会初出場かつ試合初参戦の司、そして去年共に戦った姫野紬の妹である姫コ。彼女たちの精一杯が見れる17巻になります。


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「目の前の相手に…自分のできることを全部ぶつけます!!」

試合前に南雲に言われた「自分のことだけ考えろ」を思い返す司。状況としては団体戦の勝敗に大きく関わるものとなっていて、本来なら絶対負けられないと意気込んでしまうところで、直前の先輩の言葉が心を落ち着かせる契機になってて良いんですよね。


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「私は練習でみんなと乱取りをする時…正直なところ司が一番手を焼くんだ」

ここにきて、司の体格、相撲経験という設定が生きてきて、青葉西に足りないガタいが良い選手の枠であることが主張されてくるんです。よく考えたらみんな小柄だしね。姫コも小柄だし、確かに司がそういう立場になるのか。一年で柔道未経験だからといって、この土壇場でお荷物になるわけでなく全力で戦えるのがカッコいい。

これまで実は司の凄さというのは語られる機会がなかったのがまたこのギャップ表現になっているような。まあそもそも初試合ということもあるのと、これまで他のキャラが濃すぎて目立てなかったからでもありますよね。縁の下の力持ち的な、ある意味ムードメーカーの一端を担っていました。司がいるからこそみんな冷静になれるところもあったし。


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「自分らしく冷静に…今の自分でもできることを!!」

そんな司だからこそ、自分の長所を理解している司だからこそ、試合で窮地に追い込まれても誰よりも冷静に、今自分が為せることを考えて動くのがホントカッコいい。

そして対戦相手の樹里が真逆のタイプで、とことん熱くなるタイプなのが良い対戦になってるんですよ。片や冷静に事を運び、片や熱くなって力で全てを凌駕しようとする。まさか初試合の1年生がここまで熱い戦いになるなんて思いも寄りませんでした。


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「あんたの炎でぜ~んぶ燃やし尽くしたれ」
「冷静に…頑張れ司!!!」


幸徳学園のキャラも凄く立ってて、それぞれの柔道に掛ける思いが強くて、幸徳学園側も思わず応援したくなってしまうのがまた憎い。

実のところ、そこまで柔道に思い入れは無く始めた司よりも、小学生の頃から柔道をしていて中学で一度空白期間が出来てしまった樹里の方が柔道に掛ける長年の思いは強いわけで、見方を変えたら幸徳学園が主人公の話になってもおかしくないはずなんです。そんな相手を、去年を越えるための金鷲旗3回戦で当ててくるのが上手いよなあ。


そうしてこの対戦は決着して、なんやかんやあって今度は姫コの出番なんです。今回は姫コの話が本当に良いんです。姫コというここまで温存された秘密兵器が、ネガティブが多くて士気を下げがちで、まさしく1年生の自信が無い可愛い後輩だった存在が遂に晴れ舞台に。

しかも未知の怪我の原因を作ったのが姫コであり、未知の代わりに立つことになるのがまたプレッシャー。おまけに団体戦の行方に影響を与える状況。舞台は完全に揃ってますね。

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ネガティブ姫コ、初団体戦で対戦相手は全国レベルということに怯えていた姫コ、だけど早苗の逃げない戦いを見て、誰よりも熱い思いを滾らせた姫コ。そんな姫コが遂にベールを脱ぐわけです。


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姫コが!


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姫コが!!


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姫コが!!!

こんなにもボロボロになりながら、スタミナを限界まで使って、限界を迎えながら闘志を持って立ち向かう姫コが本当にカッコいい。

しかもこれまで培ってきた教えや経験を全て出し切って戦うのが本当に良いんです。姫コの強さの裏付けであり、姫コの思いの強さであり、託すもの託されるものの思いであり。姉の姫野紬の思いを継承して、怪我をさせた未知への思いを乗り越えて、覚悟を見せてくれた早苗の気持ちを背負って、共に頑張ってくれた1年生の司からバトンを受けて、関係する全ての人たちから、紡がれる思いを全てその背に乗せて戦いに臨む姫コが本当にカッコいい。もう主人公でしょこれ。


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「もしかしたら…あの目…乱れも睨んだ上での猛攻?」

姫コは昔からカッコいい顔を良くするんですが、17巻ではそれが際立ってました。

これまで柔道を続けても一本勝ちしたことがなく、青西の中でも明らかに実力で劣っていると感じていて、他の皆と同じ様に試合で全力を出すと体力が持たないこともわかっていて。

だけどそれがわかっているからこそ、これまでの教えを全て生かそうとして、これまでの思いが溢れかえって、自分も青西の一員であることを理解したくて、でも今までのままでは貢献出来ていなくて。

だからこそこの団体戦、ベスト8を賭けた舞台だからこそ、自分がお荷物になるわけにはいかなく、自分が持てる全ての力を発揮しようとして。

そんな姫コは、やはり一人で戦っているのではないのです。皆の思いを背に乗せて、青西の一員として皆の為に皆の力を合わせて戦っているのです。そんな思いが見て取れて本当に良かった。


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「だから知恵と工夫で前へ進もう 同じ事故を繰り返さない技術を身につけよう」

このシーンの夏目先生カッコ良すぎでしょ。。。

未知を怪我させてしまった姫コ、そして奇しくも同じ状況になったこの試合。これがまさしく、未知を怪我させた姫コにとってのトラウマ供養であり、それを乗り越えた先にある姫コの成長に繋がるのがお見事。

良い経験も悪い経験も清濁併せ持ち、特にネガティブ姫コにとっては未知の怪我はいつまでも心のどこかで後悔につながっていたはず。それをこんな最高の舞台で、最高の展開で供養出来るのは本当に素晴らしいではないですか。やっぱり主人公でしょこれ。


もうね、司の活躍で十分すごかったのに、この姫コの流れが凄すぎて震えます。ここまで青西全員頑張り過ぎて、作品の最後の試合なんじゃないかと錯覚してしまうくらい。それくらい濃いでしょこの団体戦。これより凄いものなんて想像出来ないぞ。


そして遂に来た大将戦。エース永遠が満を持して登場。

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「勝ちたい 去年を超えたい」

全員が全力を出し切って、全員の思いを一つにして、まさしく団体戦という名にふさわしい戦いをしてきた青葉西高の面々。その総大将 エース氷浦永遠が団体戦の勝利を賭けて遂に大将戦へ。

去年は4人で挑まざるを得なく、実力としても遥かに劣りながらも後に優勝する立川学園に立ち向かい、力及ばず2人目で敗退してしまった青葉西高。

そんな悔しい思いを晴らすべく、全員で挑んできた団体戦、去年を越えるべく3回戦で立ちはだかったダークホース幸徳学園。誰よりも努力していて、誰よりもその強さを信頼されていて、チームとして誰もが認める、誰もが信頼している永遠の戦いに全てが掛かっています。今、全ての思いを受けて、全員で去年を乗り越えようとする姿が本当に美しい


青春だなあ。ホント素晴らしいなあ。こんな青春を送りたかった。そんな素晴らしい「もういっぽん!」はテレビアニメ化も決まったようでますます楽しみですな。

にしてもこれ、勝敗どうなるんだろ。いや、公式Twitterとか作者Twitterとかフォローしてたらそれっぽい結果が流れてきてしまってるので想定は付いてるんだけど。しかも明らかにここが最後の戦いの勢いで濃い描写なんですよ。2年生の金鷲旗団体戦はここでおしまいで、3年で未知も含めて乗り越えていくという展開になりそう。その場合誰が団体メンバ外れることになるんだ。。。あまり考えたくないなあ。。。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


15巻の感想はこちら(2回目の金鷲旗、青春と若さをぶつけ合う)
16巻の感想はこちら(最高に熱い青春ドラマが眩しすぎる)
18巻の感想はこちら(強者同士の思いをぶつける戦いが熱すぎる)


もういっぽん!【電子特別版】 17 (少年チャンピオン・コミックス)
村岡ユウ(著)
秋田書店 2022-03-08T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥495




おまけ
姫コの存在や強さって、姉の姫野紬が未知たちを通してまさしく紬いだものなんだなって。そこまで考えて「姫野紬」って名前にしたのかな。だとしたらセンスありすぎだなあ。


ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 20巻 - アンボックス級のシリアス話が一貫した傑作巻

伊賀崎交番所長にフォーカスを当てたシリアス話が展開される「ハコヅメ」20巻です。アンボックス含むと実質21巻目です。

これはアンボックスと同レベルのシリアスさを放っています。巻中でしばしばいつも通りのノリのギャグが繰り広げられるものの、正直それまでの流れからは笑えるようなものは少なく、終始一貫してシリアスです。

普段は笑い重視のハコヅメ、しかし警察官は常に死と隣合わせの可能性がある危険な職業であることを全面に表現し、警察官の非常にシビアな話をまた描写してくれています。アンボックスのアナザーバージョンとも言えるでしょう。それぐらい、覚悟を持って読むことをおすすめします。

読んでる最中はまさに息を呑むような展開が続き、終盤は事件に立ち向かう川合たちの心境がありありと伝わる見事な描写で、警察官といえど一人の人間であることを思い出させてくれます。

今回の事件の犯人もまた、一人の人間だからこそそういう思考に至るのも致し方ないとも思える動機であり、それぞれ非常に人間臭い感情が発生しています。だからこそ読み手に全力で訴えかけてくる、心を握りつぶされたような感覚に陥ります。

読んでてこんなにハラハラドキドキさせるものはそうそう無いですよ、それだけでこの作品がやはり凄いということが再認識できます。


話としては、というか話の感想書くとどう書いてもネタバレに触れなきゃならないので難しいのですが、虎松の話がまた関係してきます。死してなお生ける関係者を走らせる、どれだけ虎松譲二が人たらしであり、策略家であったのか。一つの組織から関連事件が多すぎるんだよなあ。

しかも20年前の潜入捜査時期から関係させてるとか、一体どこまで考えて伏線置いているのでしょうか。この調子だとこれまで出てきたキャラが全員何らかの大きな事件に関係するまで発展してしまう。町山市とんでもないな。

そして今回の事件の犯人が、これまでの誰よりも悪意が強いというのが、この話をシリアスにするのに拍車を掛けています。計画性があって、信念があって、全てを理解した上で犯罪をしているタイプはこれまでハコヅメでほとんど出てきていません。その代表格がやはり虎松譲二を始めとした反社グループであり、今回もまた虎松譲二関連なのです。

想像も入りますが、普段の警察官が対応し得る事件は、交通事故等を始めとした過失事故だったり、欲望に負けた性犯罪だったり、計画性の無い窃盗だったりが多いのではないでしょうか。特に新任の川合が請け負った事件はそういったものがほとんどでした。

それに対して、今回の犯人はある意味組織だって行動をしており、自分のしていることが犯罪だとわかった上で実行しています。そういった覚悟を持った相手に対するのは川合を始めとした町山署のメンバには経験が少ないものでしょう。だからこそ、緊迫感に溢れた事件対応が繰り広げられることになったのではないかと。


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「嫌です!行きたくない」

事件の対応といえど、恐怖のあまり拒絶する川合。冗談の範疇ならともかく本気で嫌がるような描写は初めてに思えます。死に直面する可能性と警察官としての正義の間で揺らぐのはまさに人間らしい感情です。警察官とはいえ一人の人間であることを思い出させてくれます。


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「あと5分あるけど…親に電話するか?」


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「命の危険がある任務だから 配置につく前に一応…2分間とるから大事な人と話をしといで」

もしかしたら、この任務の結果死ぬかもしれない。なので事前に話をしておきたい相手と話をしておけという上司からの温情。死の機会があり得るからこそ覚悟しろという命令。これを見せられると否応なしに緊張感が走ります。彼らは間違いなく、死ぬかもしれない危険な任務についているのだと。

シリアスはこれまで度々ありましたが、どれも身に危険が及ぶようなものはこれまでなかったです。だからこそ今回、このような非常にリアルな現場表現が見れたことは、「ハコヅメ」の面白さを更に裏付けたものになるのではないかと思うわけです。

というのも、「ハコヅメ」は基本的に警察官の日常を描くのがメインであり、元警察官の作者だからこそ表現できるリアリティが面白さの一部でした。

それをこれまで大いに表現した上で、時たま起こる非日常事件というのがまた余計にリアリティを発揮していると思うのです。テレビやニュースで語られるような事件はどのような現場対応しているのか、その時の警察官はどのような気持ちで臨んでいるのか、それらが非常に良く表現出来ていると思います。

特にそこに表現される警察官の人間らしさが拍車を掛けます。

死ぬかもしれない、行きたくない、怖い。だけど私が(警察官が)命を危険にさらさないと、他の一般市民が危険にさらされてしまう。警察官としての正義は文字通り自己犠牲をしてまで達成しなければならないのか?しかしそれをしなかった時に自分は激しく後悔しないだろうか?そんな感情まで見え隠れします。

この人間らしいリアリティが非常に上手く、現場の緊張感が読み手にも伝わってくるのです。これ、映画見ててもこんなにハラハラしないですよ。元々漫画を読む時には感情移入しがちなのですが、そうだとしてもこんなにドキドキしたのは初めてかも。固唾を飲んでページをめくってしまった。


それくらい凄まじい20巻でした。アンボックスとはまた違う方向でリアリティがあります。アンボックス好きな人はこういう話好きなんじゃないかなー。ただ、こういうノリばかりになってしまうとそれはそれで辛いかも。


あとはこの事件を通して中富課長の警察幹部としての苦悩だったり、源の天才がゆえの苦悩だったり、潜入捜査官としての伊賀崎がどれだけ過酷な捜査をしていたのか読めたのがすごく良かったです。

特に源のくだりは、何気ない伊賀崎交番所長の語りから事件につながるところがあって好きだなあ。

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「人が「理解するため」苦しんでる時間 天才は「理解されるため」苦しむんだろうなって思ってね」

このシーンがまさか源の苦悩につながるとは最初思いませんでした。ただ思い返すと、もともと源は取り調べの天才と度々言われており、この20巻でもしばしば中富課長がそれに言及しています。


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「源部長は良かれ悪しかれ「特別」だと思うから…」


そして事件発生時、対応に向けて源も違和感を感じます。
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「自分の「感覚」が鳴らす警鐘を どうあがいても打ち消せない」

源の「感覚」でしかないからこそ、源自身はこれで間違いないはずだと思うものの、上司である刑事課長や中富課長からその対応はせずに応援を待てと言われて葛藤します。これが「天才」もしくは「特別」だからこそ持ちうる、「わかりあえない」という気持ちなんですよね。

まさしく、「人が理解するために苦悩している」のに対し、「天才が理解されるために苦悩している」シーンなのです。


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「対峙した上での源部長の判断なら それが絶対に最善策です」(ネタバレのため一部セリフを伏せました)

それを理解してくれたのが川合であるというのがまた良い。源の行動は傲慢で組織に逆らう懲戒ものかもしれないけれども、現場にいる川合はそれが被害者を助けるための最善策として捉え、共に行く覚悟をするというのが本当に素晴らしい。「特別」な源誠二が「理解された」瞬間です。

この流れからの、事件解決に向かうやり取りがすごく良かった。これってこの20巻までで展開された川合と源の関係値があるからこそ出来た表現だと思うんですよ。普段馬鹿にしていても肝心のところで信頼し合える関係が素晴らしいじゃないですか。

そんな素晴らしい2人も見れるのが「ハコヅメ」20巻です。素晴らしかった。


いやあホント、19巻で閑話休題したのとちょっと面白さがなくなってきたかなーと思っていたところで、この20巻という流れですよ。ホント化け物ですねこの作品、また面白さが加速してる。思わず1日で2回読んでしまいました。1回読むのに30分は掛かるのに。まだまだ安泰ですねこれは。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ハコヅメ3巻の感想はこちら(川合先生初登場の似顔絵特別捜査本部)
ハコヅメ4巻の感想はこちら(黒田カナ伝説はここから始まった)
ハコヅメ5巻の感想はこちら(とにかく笑える内容盛り沢山)
ハコヅメ6巻の感想はこちら(伝説の笑ってはいけないお誕生日会が収録されたハコヅメの最高傑作巻)
ハコヅメ7巻の感想はこちら(煽り役としてパーフェクトな聖子ちゃんが見れます)
ハコヅメ8巻の感想はこちら(これ警察学校で習ったやつだ!)
ハコヅメ9巻の感想はこちら(色々な話が詰め込まれている、これぞハコヅメ)
ハコヅメ10巻の感想はこちら(迷惑防止条例と強制わいせつの違いが勉強になります)
ハコヅメ11巻の感想はこちら(1巻の伏線を見事回収、この日の出会いを何度も後悔することになる)
ハコヅメ12巻の感想はこちら(同期の桜完結、川合の成長を感じられる最高の展開)
ハコヅメ13巻の感想はこちら(アンボックス事件のカップルが登場)
ハコヅメ14巻の感想はこちら(奥岡島事件発生篇)
ハコヅメ15巻の感想はこちら(奥岡島事件解決篇)
ハコヅメ16巻の感想はこちら(1巻で出てきたキャラが再登場する感動の成長譚)
ハコヅメ17巻の感想はこちら(アンボックスを読んだ後に読むと非常に切ない)
ハコヅメアンボックスの感想はこちら(警察の負の感情を全力で主張した傑作)
ハコヅメ18巻の感想はこちら(即ハメあんあん激イキスクール)
ハコヅメ19巻の感想はこちら(20巻を読むために覚悟させられる巻なのではないか?)
ハコヅメ21巻の感想はこちら(虎松譲二事件完結!大事件の事後処理といつものギャグパートが再開します)


ハコヅメ~交番女子の逆襲~(20) (モーニングコミックス)
泰三子(著)
講談社 2022-02-22T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.9
¥693

 

トリリオンゲーム 3巻 - 一気にステップアップしていく経営戦略がたまらない

1兆ドル企業を目指してあの手この手のマネーゲームが繰り広げられる「トリリオンゲーム」3巻です。ステップアップのスピード感が素晴らしくテンポが良いので、ついつい時間を忘れて読む手を進めてしまうほどにのめり込んでしまいます。

2巻までのAIが商品をおすすめするサイト(ただしAIではなく人力)を流行らせる為に、商品は花に目をつけて、最も花を購入する層が夜のお店だということでガクとハルがホストとして潜入するところからとなります。

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「ムリムリムリムリ。僕が、ホストとか……!!!」

と言いつつ、柔軟にホストとしてなんとかやっていくガクはやっぱりすごいw

そしてしっかりとホストに来るキャバ嬢から情報を収集してサイトを次々とアップデートし、着実に売り上げを伸ばしていくところが本当に面白いです。全然無理筋の話はしてなくて、それこそキャバクラあるあるの話に繋げていくところがお見事。

最初は花で月商二千万という無茶振りと思われましたが、そもそもキャバクラで使うお金の桁が一般のそれとは大きく違うという客単価の違いも相まって一気に加速していきます。ここまで最初から見込んだ上での設定だったんだろうなこれ、他の商売じゃ企業相手とかじゃないと二千万なんて無理だしなあ。


何より、このスピード感が凄いのです。まさしく疾走、トリリオンへの階段を駆け巡るイメージがぴったりで、このAIサイトの話も3巻の3分の1ほどで結末まで走りきってしまいます。

そのあとはもう次のビジネスの話。AIサイトを使って一気に1億円の契約を取り付け、次はゲーム会社の話へ。

このゲーム会社の話もゲーム本体にはあまり言及することなく、投資家を利用してお金を集めることに終始しており、集めた投資で如何にゲームを宣伝するかという話へステップアップしていきます。

もう、読んでいて次から次へと話が展開するので、ホントずっとドキドキワクワクが止まらずに駆け抜けられるんですよ。このシナリオ構成が本当にお見事だと思うのです。

作品によってはここまでの展開でもっと何巻も続けるほど濃いものを、たった数話に詰め込んでいます。そりゃ面白いわけですよ、それが面白くないわけがない。

深夜枠からゴールデン枠に放映時間を移したテレビ番組とかって、深夜だったから面白かったのにという現象よくあるじゃないですか。そういう意味では「トリリオンゲーム」は極めて深夜枠のテレビ番組並みの詰め込み具合なんじゃないかと。しかも話が濃くて深いですからね。なのに読んでて全然疲れない、天才のネームなんじゃないでしょうか。本当に素晴らしい。


あとは、その濃密なシナリオを疾走するかの如く読ませてくれるのは、やはりハルのキャラ設定のおかげですね。超わがままで自分の野望を達成するためなら何でもするハルだからこそ、常に読者をワクワクさせて、一気に読み進めさせる起爆剤になっているのだと思います。

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「ああ。俺のワガママは、世界一だ!!!」


このハルに誰もが振り回されて、誰もが魅了されて、誰もがその行く末を見たくなる。作中のキャラは勿論、読者もすっかりこのキャラに魅了されています。このハルなくしてはありえない「トリリオンゲーム」の濃密さ、すっかりこの虜になってしまいました。

当初は作画が池上遼一先生であることに驚きましたが、今ではこの劇画調の池上先生以外では「トリリオンゲーム」の魅力を引き出せないとすら思えるようになっています。この作画で、このシナリオで、この疾走感だからこそ「トリリオンゲーム」は面白い。そう断言できますね。


ところで3巻まで来ていまだにガクが表紙になってないのは意図があるんだろうかw 最終巻に持ってくるとかなのかな。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


2巻までの感想はこちら(稲垣理一郎×池上遼一の異色コンビが見事にはまった傑作)


トリリオンゲーム(3) (ビッグコミックス)
池上遼一(著), 稲垣理一郎(その他)
小学館 2022-01-04T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.8
¥605


少女ファイト 18巻 - 小学校時代の呪縛が解き放たれた

春高準決勝、中学の進学を裏切られた小学校時代のチームメイトである青磁との決戦で大盛り上がり中の「少女ファイト」18巻です。

尚、2022/01/27までの期間限定で、10巻分である75話まで無料で読めるので読み直したい方や布教したい方はどうぞお願いします。この名作を埋もれさせるわけにはいきません。

少女ファイト - 日本橋ヨヲコ / FIGHT.1 多い試練 | コミックDAYS



とりあえず18巻を読み始めると全く17巻を思い出せなかったので、17巻から読み直して18巻まで読みました。17巻も面白いです、扉絵で各キャラの心情というか、格言というか、が記載されるのがカッコいいし、学の本気が見れるのも本当にゾクッと来ます。


さて、18巻を読んだ率直な感想を述べたいところなのですが、正直なところ、とても重厚な小説を読んだ後の様に一言一句が心に染みて様々な感情を揺さぶられています。ただ漫画を読んでいるだけなのにどうして漫画を読むのとは違う読後感なのか、そんなことを思わせてくれるのが「少女ファイト」なのです。

とても重厚な小説をというのはあくまで印象になります。ただ、この18巻はまさしく因縁の対決であることと、彼女達のぶつかり合いによる感情の爆発と心情の吐露がそう感じさせるのです。その吐露が非常に深く、思いも重く、彼女達の人生を表現しているのがそうさせるのでしょう。

心情の吐露に加えて、小学校時代の過去の出来事をクロスさせながらその思いの裏づけを表現しているのもまた上手く、本当にひとつのドラマを見ているようなのです。重厚な小説のようであり、しかし確実に映像が存在するメディアでしか表現出来ないものであり、そこに引き込まれる、その没入感が本当にたまりません。



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「いつもそうだよ練  お前が全部持っていく」



大石練に関わった人間はみんな何故か大石練に惹かれていきます。この18巻は殊更それを表現し、何故練が人を惹きつけるのか、惹きつけた人はどうなってしまうのか、どれだけ大きな影響を与えているのかが説明されていきます。

その影響で嫌悪してしまったり、憎悪を持ってしまったりしたのが今の青磁メンバーであり、小学校時代のチームメイトです。その彼女達とバレーを通して一人ずつ対話し、良し悪しは抜きにしてそれぞれの呪縛を一つずつ解放していきます。


そして影響で練に心を許し、その思いに、期待に応えようとしたのが今の黒曜谷メンバーであり、小田桐学です。図らずも同じ人間が与えた影響として結果が異なるというのは幸か不幸か。もちろんその当時の練の感情に揺さぶられた結果ですが、それは1巻から18巻まで紡がれた黒曜谷メンバーとの軌跡です。それはここまで読み続けた読者が一番理解しています。



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「もっとこいよ練!! 顔面なんかいくらでもくれてやる」


過去にはひたすら恨み憎んでいた小学校時代のメンバに、素直に当時のことを謝り、はたまた素直な心情を告げることでひとつずつ過去の呪いが解けていきます。こうなれたのも、黒曜谷のメンバと出会えたことと学に出会えたことが大きく影響しており、成長を感じることが出来てとても良いです。涙が出てしまう。



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「あすかが私を嫌いだという気持ち私がしっかり受け止めた  あすかが今もバレー続けてくれてうれしい」


例え嫌われていたとしても、相手のありのままを受け入れて許容する練はなんと人間が成長したことか。1巻の頃からは完全に見違えてます。

練に限らず、登場人物全員が大きく成長しているのもまた「少女ファイト」の大きな魅力のひとつです。その過程、そのきっかけを丁寧に描写してくれているので本当に心に来ます。この18巻の呪縛解放も同様です。



そして練の影響を一番大きく受け、メンバの中で特に成長した小田桐学の超絶カッコいい姿が見れるのもまた18巻なのです。


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このシーン、この流れるコマ割が本当に素敵で何度も読み返してしまいました。

これまでで間違いなく最強のレシーバーである亜莉に対して、直前まで目線を切らず、決めると決意した時にしっかりと相手を見据えたこの表情、この真っ直ぐな視線、表情に表れた思いが読み取れるのが極めて漫画表現なのです。この場面好きだなあ。



そんな流れで、異端中の異端、純然たる悪意として描かれたのが雨宮摩耶でした。呪縛が解けていく彼女達に対比するように、一切自身の思いはぶれずに自分の欲望のためだけに練を利用していきます。その依存はこれまでも、これからも。その依存の闇が底無しでひたすらに暗く、誰の光も届かないのがただただ可哀相になりました。

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試合終了後は彼女の動きによる怒涛の展開が繰り広げられ、その流れには開いた口が塞がらないほどの驚きをもたらしました。そこには彼女の思い、信念、闇、欲望全てが詰め込まれており、まさしく悪意の集大成です。何よりも、最後までぶれることなく、最初から一貫して悪として描かれ続けたのが見事でした。


さらにその後も、三國会長がこれまでどういう思いで活動をしてきたのかが明かされるなど、驚きの展開が連続してますます続きに目が離せなくなります。20巻で完結予定と聞いていますが、ここでこういう話を持ってくるというのはまさしくまもなく完結へ向かってるのだと思うとやはり寂しくなります。


16年以上の連載を通した彼女たちの成長は筆舌に尽くし難く、最初から読み直すとこんな嫌なやつだったなあとも思ったり。初期の頃のバレーに対する説明や練習に対する説明も丁寧だったし、何より人間の心情心理を描くのが非常に上手いので、何回読み直しても面白いです。是非とも最後までこのまま走りきっていただきたいところです。


尚、今回の特装版のおまけは作者作成のキャラ同人誌のため、Kindleでも特装版が販売されています。紙版はかなり品薄らしいので本にこだわりなければKindle版をどうぞ。

この18巻の通常版特装版の表紙、対比になってて凄くいいなあ。18巻読んだら尚更そう思える。どっちもほしくなる。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


少女ファイト(18) 特装版 (イブニングコミックス)
日本橋ヨヲコ(著), 木内亨(監修)
講談社 2022-01-21T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥1,210


少女ファイト(18) (イブニングコミックス)
日本橋ヨヲコ(著), 木内亨(監修)
講談社 2022-01-21T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥682



忍者と極道 8巻 - グラス・チルドレン篇最高潮、ガムテと忍者の決着迫る

グラス・チルドレン篇から急速に面白さが加速し、いよいよ忍者(しのは)とガムテの直接対決が始まった「忍者と極道」8巻です。尚、決着は9巻になります。

連載でも追っているほどこの作品が大好きなのですが、このグラス・チルドレン篇、特にガムテと忍者(しのは)の最終対決はとてつもない面白さを放っています。まさしく「忍者と極道」の前半戦最終対決として相応しい対決でしょう。


この8巻では、7巻のラストで「ヤマイダレ」を喰らってしまった忍者(しのは)がその傷を回復するところから始まります。

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「忍者と極道」7巻より。


その回復には多少の時間が掛かるため、その間は無防備となってしまいます。そこで立ち上がったのが、忍者(しのは)の友人となり、国を守る意思に満ち溢れた内閣総理大臣 愛多間七なのです。


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ヘルズ・クーポンは誰でも恐ろしい力を得ることができ、それをただの一般人が使用する機会が出てきたのがまた、このグラス・チルドレン篇の大きなポイントでしょう。

つまり、単に忍者と極道の戦いではなく、そこに巻き込まれた一般人も戦闘に参加せざるを得ない状況となっているわけです。しかもそれが誰であろう総理大臣であり、さらに動機は友である忍者(しのは)を守る為というのが非常に非常に熱いではありませんか。

忍者ではなくただの一般人が、友人である忍者の為にその命を掛けて極道に立ち向かう。こんなにカッコいい展開はなかなかありません。好きだなあ、こういう展開。


そしてまた一方、総理官邸に仕掛けられた爆弾を解除する為にプリマと対峙している極道(きわみ)。極道(きわみ)もまた、忍者(しのは)との約束を守る為、総理を助けるのを忍者(しのは)に任せたからこそ、自分が爆弾を解除すると誓っています。その約束を果たす為に、ヘルズ・クーポン無しでプリマに1人で立ち向かいます。


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「約束したんだ……! "彼"と  爆弾は…私が解除すると…!!」
「私が…時間をかせぐのだ…! "彼"は死なせぬ…二度と…誰も死なせるものか!!」




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「すべては   友達のため!!!」

カッコいいなあ。

これまでは仲間意識としては忍者同士でしかいなかった忍者(しのは)にとって、初めて一般人の友人と共に戦うことになるのです。しかもその2人はまた超強力で、自らの強い意志を持ち、自分の命を顧みずに忍者(しのは)の為に命を賭けるのです。

作品が始まってから出会ったこの友人2人、これまでの話を通じて築き上げた友情がこのような形で結びつくのが本当に素晴らしい。個の1人ではなく、3人でガムテと戦うという流れであり、まさしく少年漫画の王道と言えるのではないでしょうか。


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また、読んでる諸兄は既にご存知の通り、極道(きわみ)はこの作品の最大の敵でもあるのですよね。今は共闘しているけれども、このあと忍者(しのは)がこの事実を知ったらどうなるのか、それがもう楽しみで仕方ありません。


極道(きわみ)の凄さ、怖さ、カッコよさはこれまで読んできたらいくらでもわかりますし、それはそれは本当に魅力的なキャラ設定がされています。しかしこの8巻は、何よりも総理大臣 愛多間七のカッコよさが際立っていました。

爆弾が極道(きわみ)によって解除され、最後の総攻撃も遅れてやってきた斗女たんに全て防がれ、もうグラス・チルドレンの勝利は無いと悟ったガムテに対して語る姿が本当に熱い。


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「私が聞こう…! いや  … 聞かせてくれ!! 教育制度改革…!! 児童虐待防止策の強化・改善  君達のために出来ることがあるはずだ…!!」




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「…ハッ アホくさ……できることなんて  」




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「私を誰だと思っている!? 内閣総理大臣 愛多間七である!!!」


ガムテの表情からわかる通り、愛多間七のこの言葉に、ガムテの傷つき全てを拒絶してきた心の塊が融け始めています。

元々グラス・チルドレンは皆、親兄妹や世間から虐待を受けて行き場を失った子供達の拠り所になっていました。大人は誰も助けてくれないから自分たちだけでやっていく、クソみたいな大人は全員殺してしまう、「割れた子供たち」は心が壊れてしまった子供の集まりです。

そこに、本当に他意無く、心から子供たちを救いたい、そんなことも出来ないで何が政治家だと言わんばかりの熱い思いを持つ愛多間七からの助けが来たのです。裏切られ続けた大人から初めて救いの手が差し出されたのです。それがまさかグラス・チルドレンの権化でもあるガムテにまで届くことになるとは。

正直、この総理がここまでストーリーに深く関わるキャラだとは思いもよりませんでした。また、忍者(しのは)との出会い時にも使っていた決め台詞の「私を誰だと思っている!?」が、ここまで極めて効果的に、その言葉の重さを強く認識させて表現されるとは思いもよりませんでした。本当に熱くて、「忍者と極道」で涙腺が緩むことになるとは。素晴らしいです。


元々、やけに丁寧にグラス・チルドレン達個々人の話を掘り下げるなとは思っていたのですが、まさかこういった形で回収する為に描写されていたとは。おまけにその内容はガムテのラストバトルにも引き継がれるのでホント最高ですね。

殺島篇の子供の頃の無茶をまたやりたいという思いに対して、グラス・チルドレンは自分たちの心を解放する為に戦っているので、その動機の重みが異なります。しかもそれに加えて共闘や熱いサブキャラも展開されるのだから、面白さが加速するのも当然ですね。間違いなくこれまでの「忍者と極道」で一番面白いのはこのグラス・チルドレン篇でしょう。


そしていよいよ始まる本当に最後の戦い、ガムテ対忍者(しのは)です。

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この名乗り合いの裏マナーが出てくると決着がつく合図です。どちらかが死ぬまで戦いが続きます。

忍者(しのは)にとって色姐の仇であるガムテ。総理官邸を襲撃することで友人である極道(きわみ)も愛多間七も死に直面させたガムテ。

そしてガムテにとって、自分の父である極道(きわみ)と友人であることが許せない多仲忍者。忍者(しのは)と極道(きわみ)の両方を同時に殺そうと総理官邸襲撃をしたものの、野望潰えて全ての仲間を失い全ての仇として位置づけられる多仲忍者。

お互いが最大のライバルであり、最大の因縁の敵であり、最大の強敵であるこの2人が激突します。面白くないわけがないですね。8巻ではケリはつきませんが、続く9巻でも描写されるこの戦いは本当に面白くて、最高です。連載未読の方は9巻を是非ともご期待ください。



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「決めようか…忍者と極道  何方が生存るか死滅るか…!!!」


ここからのガムテが本当に最高なんですよ、本当に。思わずガムテを応援したくなるほどのカッコよさが出てきます。9巻は必見。


それにしても、陽日にガムテがトドメ刺してなかったかなと確認する為に1巻を少し読み直したのですが、最初に登場したガムテは本当に単なる道化キャラですね。このキャラが、トリックスターとして忍者も極道もどちらも大きく揺るがし、ストーリーをここまで面白くさせることになるとは思いもよりませんでした。

最初は単なる嫌なキャラで色姐を殺した時なんかこんなやつにやられてしまうのかくらい思ってたぐらいなのに、話が進むに連れて魅力がガンガン増して本当に良いキャラになりました。強敵として、ライバルとしても本当に描写が上手いし、これこそ主役を喰ってしまうレベルの敵キャラと言えるでしょう。

この作品これ以上面白くできるのかなあ。グラス・チルドレン篇を越える面白さってめちゃめちゃ要求高くなるぞこれ。



眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


6巻の感想はこちら(生首エンターテイメントはグラス・チルドレン篇で大きな転換期を迎える)
7巻の感想はこちら(忍者と極道の共闘は生首エンターテイメントを最高潮に盛り上げる)
9巻の感想はこちら(ガムテが主人公になりました)


忍者と極道(8) (コミックDAYSコミックス)
近藤信輔(著)
講談社 2022-01-12T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥693


 
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