イザベラバードの「日本奥地奇行」をベースに繰り広げられる偉人物語「ふしぎの国のバード」9巻です。

1巻の頃からずっとファンなのです。偉人物語をこれだけ丁寧に入念に描写しているものが、面白くないはずがありません。面白さ絶対保証。

舞台は1878年、明治政府が始まり文明開化した直後の日本です。この日本を、横浜から出発し、北海道のアイヌ文化に触れていくのがバードの目的となります。そこに至るまでの道のり、旅程の苦労や現地の村人たちとの交流や風習に触れていくのが本当に面白い作品となっています。

何よりも、風習に触れれば常に文化考察を始めるバードさんがカッコいい。まさに学者。自分の足で情報を集め、集めた情報を分析し、考察を深める。これほどまでに旅を楽しめる人間などいないのではないかと感心するほどです。

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「何故大切な儀式には必ず 文明の主食が用いられるのかしら……?」

バードさんの学者としての好奇心、考察は大変な目にあった9巻でも相変わらず発揮されます。このどんな事態にもへこたれない、なんでも楽しみに変えてしまうバードさんが本当に素敵で読んでて健やかな気持ちになれるのです。

道中はそれはもう本当にひどい目にあっています。虫だらけで雨漏りだらけの宿に止まったり、皮膚病が蔓延している奥地の村で一泊したり。そこで薬を提供したら村中の人間が医者が来たと集まり始めたり。

そんな目にあっても、持ち前の元気と好奇心で乗り越えていく。そんなイザベラバードの人柄がもの凄く丁寧に描写されているのが特徴です。へこたれない人間の前向きな物語というのはやはり良いものですなあ。


従者の伊藤鶴吉もまた、一癖も二癖もあっていいのですよ。文明開化に乗り遅れている地方村の住人たちを蔑んだり、冷たい態度を取ったりする一方で、甘いものに目がなくて暇さえあればお菓子を漁っている姿とか。

何より仕事とはいえ、バードさんを献身的にお世話する姿が甲斐甲斐しくて。粗食が合わず肉や魚が食べたいと言い出すバードさんに自分で料理を振舞ったり、夜な夜な覚えた按摩でバードさんの身体を気遣ってあげたりと、ぶっきらぼうな態度の裏側が垣間見えて本当にいいんですよこれが。


そんな二人の珍道中、村々の風習に触れていく姿が本当に面白い。読んだことがない人には絶対オススメ出来る作品です。


9巻では青森に向かう途中で土砂崩れに巻き込まれて孤立村に閉じ込められたり、そこで怪我をした村人達を助けて、村の文化に触れたりとまたまた大変な目にあっています。

そんな状況でも考察を続けるバードさん。土砂崩れで犠牲者が出ても、「山の恵みで生活が出来ているのに、たまに発生する山の怒りを嘆くなどとんでもない」という村人の思いに日本文化のなんたるかを考えます。


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「ずっと考えていたの この国の文明の深淵」

こうして、これまで出会ってきて実際に触れた日本地方の文化について考察を巡らせます。

「識字率が高いのは紙の生産量が多いからでしょう」
「製紙技術が高いのは水も土壌も豊かで原料が潤沢だから」
「そして自然が強いからこそ 厄災も滅びも日常の中にある」
「生活も文化も技術も世界観も 文明のあまねく万象が 気候風土の奥深くに起源をもっているんじゃないかしら」


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「興味深いわ……」


この考察の流れ全てが、これまでの道中で出会ってきたことに端を発しているのです。ここまで読んできた読者なら、全ての場面を見てきたことがわかる表現と共に、この考察が語られます。さながら東日本縦断の集大成です。

そんな強い思いを持ったバードさんだからこそ、強い好奇心で真摯に立ち向かうバードさんだからこそ、この物語はこれほどまでに面白いのだなと実感する次第です。

現代人の我々にとっても、明治初期の日本奥地の人々の生活など知る由もなく、こうして得られる歴史知識が外国人の残した資料であるというのがまた感慨深いところがあります。外国人だからこそ得られる正確な記録とも言えるでしょう。やっぱり歴史を知ることは面白い、歴史大好き。


そして物語は紆余曲折あって遂に函館まで辿り着きます。1878年の函館です。既にほぼ旅の終着点ですね。このあと平取まで進んで、アイヌと交流する旅程です。

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これまでは会津道を通って新潟経由で青森まで来ています。そこまでの旅程も非常に楽しめて読めましたが、この先の展開もまだまだ楽しみがありそうです。本当に続きが早く読みたい。待ちきれない。


抜群に面白いので、是非ともみなさま読んでみてください。



眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ふしぎの国のバード 9巻 (HARTA COMIX)
佐々 大河(著)
KADOKAWA 2022-02-14T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.8
¥673