仕事

一級建築士矩子の設計思考 - 元一級建築士が建築の魅力を存分に語る1冊

純粋なエロ漫画家だと思っていた鬼ノ仁氏が描く超真面目な職業漫画「一級建築士矩子の設計思考」です。発売が3/9なのでだいぶ乗り遅れた感があります。読むこと自体は発売直後でしたがいままで感想を書けずにいました。

20220417_000
「弟さんにすぐこの計画を止める様連絡して下さい これを建ててはダメです」

正直、最初のページの蕎麦をすすってるコマを見た瞬間に「エロ漫画やんけ」と思ったのですが、その中身はどうして真摯に建築のお話が語られていました。

上記画像は冒頭で知り合いの弟が家を建てる予定とのことで、建築士として見たことによる発言です。

20220417_001
「ここで重要なのが壁の向きです 建物をこちらに押す力をXとすると Xに向かい合う壁だけが力に抵抗します こんなふうに」


20220417_002
「構造は嘘をつきません Y方向から押されると倒壊する危険な設計です」

と、このように図面から読み取れる情報だけで、この建築構造の欠陥について語られます。こういった、本当に真面目な建築に関する話が続々と展開されていきます。

内容も特に難しいというわけでもなく、素人でも理屈を聞けば納得できるように表現されていきます。特に2話の「実測」のお話は面白かったですねえ、部屋に入って寸法を見るだけで壁の中にある空間まで推測して設計を浮かび上がらせるという技術が披露されます。

20220417_003
「目には見えない床下や空気の流れ ほら 見えて来るでしょう?」

身体を使ったメジャーで寸法を測り、階段の高さの平均値から天井までの高さを計測、建物の高さ制限がある高度地区であることから柱が斜めである理屈まで断定。本当にこういう仕事あるんだろうか。だとしたら相当な技術やなこれ。。。

そんな建築のお話ばかりかと思いきや、単に町中を飲み歩く話もあったりと、これはおそらく、作者が描きたいものを好きなだけ描いてる作品ですね。こういった作者が自由にのびのび描いてる作品ってえてして面白い作品になる傾向があると思います。この「一級建築士矩子の設計思考」も多分に漏れません。

あとがきやこの作品のネット上記事を見て知ったのですが、そもそも作者の鬼ノ仁氏は元々一級建築士として働いていたのだとか。それがどうしてエロ漫画家に、、、は置いておいて、そういった実績や経験に裏打ちされた作品ってやっぱりそれだけ面白さが増すと思っています。

だからこそ、この作品はその真面目さから目を離すことが出来ず、魅了されてしまうのではないかと。しっかり取材なり経験なりの上に成り立つものは、漫画に限らず何でも面白いものです。逆にそれがないとどうしても薄っぺらいものになってしまうというか。

ただ、この作品の欠点としては、どうしても文字数が多くなっていることですね。そのため、どんなに気軽に読めるようになっていても、読むのに力がいります。オススメしたいけどラクに読めない部類だなあ、悩ましい。


眠気覚め度 ☆☆☆


一級建築士矩子の設計思考 1
鬼ノ仁(著)
日本文芸社 2022-03-09T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.7
¥663


どるから 8巻 - 多様性に溢れる現代社会で古き道場が生き残る為の経営戦略

K-1創始者の石井館長がトラックに轢かれて貧乏道場の女子高生に取り憑いてしまう「どるから」の8巻です。実はこの作品、個人的にとても注目していて、もっと売れてほしいなと思っています。

というのも、「どるから」は石井館長が女子高生として無双するという話ではなく、貧乏道場を建て直す為に様々な経営手腕を振舞うというお話なのです。

しかも監修に石井館長本人が携わっている為、道場経営の内容も実に経験に即したものとなっています。ですので、半分くらいは石井館長の自伝相当と言っても過言ではないでしょう。

作中でも道場並びに格闘技人口を増やすためにあらゆる手段を取ろうと画策します。6巻から始まっているJK-1グランプリも、女性格闘家という特徴で売り込みAbemaTVと契約して配信することで、少しでも興味を持つ人間を一気に取り込もうとしています。

更に、人を動かすのはそのキャラクター性、スター性であると考えて、魅力ある人材は勝とうが負けようが、強かろうが弱かろうが関係ないというスタンスでもあります。

そうなのです、格闘技が主軸でバトルも様々描写されますが、決してそこが本当のメインではないのです。むしろ道場経営の経済部分がメインです。だからこそ、この「どるから」は興味深く読むことが出来ます。

20211111_000
「ワシは場所を作るだけだ!君たちがドラマを作れ!!」

JK-1グランプリを開き、これまで無名だった選手たちの活躍の場を作り彼女たちに希望を持たせ、その魅力に惹かれた人間を多く作ることで格闘技人口を増やす。石井館長がカッコいいこと言っていますが、その裏は実のところ経営の為の言葉でもあります。

とはいえ、参加者も企画者もWin-WinのJK-1グランプリですから、何も悪いことではないでしょう。むしろ金に執着することが恥ずかしいと捉えないのが、正しい経営者の姿として清々しいです。だからこそこの作品に惹かれるんだよなあ。


この8巻ではJK-1グランプリが完結し、これで売った知名度を元に経営拡大していこうと画策していきます。集まったのは全国の経営難に陥っている格闘技道場の面々。その彼らに、道場経営と格闘技道場を続ける意義の考え方を説いていきます。

20211111_001
「このままの経営方針を続けると 現在の格闘ジムや道場はほとんど淘汰されると思うんですわ!」


20211111_002
一つは「コンビニ型の道場運営」を目指すこと。もう一つは「アカデミー型の指導スタイル」を取り入れることです!


このように、今後の道場経営のあるべき姿を論理的に分析し、この時代を生き残る為の経営戦略が展開されていきます。経済ものの作品は数あれど、格闘技に限ったものは無いのではないでしょうか。だからこそ非常に興味深いものとなっています。

加えて、経済の話として固いわけではなく、前述したようにしっかりバトルシーンも描かれているのです。なので読み手としても難しいことを考えることなく、経営もバトル漫画も楽しめる。おまけに出てくるの格闘家は女子高生を始めとする女の子ばかり。しかもノリが軽い。非常に気楽に読めます。


と、このように面白い作品だと思っているのですが、どうも知名度がそれほどには無いような気がします。もっと読んでほしいなー。結構読みやすいと思うんだけどなー。

ちょっと調べたら1巻が安くなるタイミングとかもあるので是非ご一読ください。



眠気覚め度 ☆☆☆☆


9巻の感想はこちら(バトルロワイヤルがメインの巻です)


どるから (8) (バンブーコミックス)
石井和義(著), ハナムラ(著)

¥792



どるから (1) (バンブーコミックス)
石井和義(著), ハナムラ(著)
5つ星のうち4.5
¥11

1巻が安い!試しに読むなら今!
 

百姓貴族 7巻 - 相変わらず高クオリティの農家エッセイ

荒川弘が自身の経験を基に農家のなんたるかをありありと描く「百姓貴族」7巻です。なんだかんだもう7巻ですか、よくネタが尽きませんなあ。

20211027_000

今回特に面白かったのは農家と虫の関係。

牛の酪農をやめたら、糞や堆肥によってくるハエがいなくなった。ハエがいなくなったらそれを獲るクモがいなくなった。ハエもクモもいなくなったからそれを食べるスズメも減った。スズメがいなくなったら畑の害虫が増えた。

まさしく食物連鎖ですな。こういうのを実体験出来る農家にはちょっと憧れる。


他にも犬がいなくなったらキツネが来るようになった話とか、野菜泥棒死すべしの話とか、農家ならではであり、かつ農家ではない人がなかなか知りえない、理解し得ない話を淡々とコミカルに進めるため、非常に勉強になります。いかなる職業でも、職業漫画はやはり面白い。

しかも中身が濃い。Kindle版で127ページしかなく、やたら少ないページで出すなあと思ったのですが、字が多いのでとにかく時間が掛かる。それだけ内容が濃いのです。刃牙とかと比べると1ページあたりの所要時間が5倍とかなんじゃなかろうか。

それでいてしっかりオチもつけて笑いを取るのだから、やはり荒川弘の技量がうかがえます、さすがです。正直他の作品よりもこの「百姓貴族」が一番荒川弘らしさを出しているのではなかろうか。


眠気覚め度 ☆☆☆



 

刷ったもんだ! - 印刷屋がテーマの職業漫画

世の中に職業関連の作品は数多あれど、なかなか見たことがなかった印刷屋をテーマに展開されるのが「刷ったもんだ!」です。

主人公である新人の真白悠が印刷屋の仕事に戸惑いながらも仕事を徐々に覚えていくという王道の職業作品。1話からいきなり18禁の同人誌からスタートさせるのは漫画を読む人にとってグッと掴むためなのでしょう。そのあとも半分近くはエロ関連の印刷ばかりしているようには思えるけれども。

真白悠は元ヤンということで、目つきが悪くて酒を飲むと地が出てヤンチャしてしまうという設定。とはいえ、この元ヤン設定いるかなというくらい、元ヤン設定が生かされていないような。単なる漫画好きの仕事に一生懸命な新人なのだけど。目つき悪いくらいでよかったんじゃないだろうか。
20210708_002
主人公の真白悠の対極として存在するのがこの黒瀬宏文。仕事は丁寧でめちゃめちゃ細かい上、つっけんどんな態度でなかなか交流も難しいという位置づけ。いるいるこういう人どんな会社でも態度悪いけど仕事は出来るとかね。またそういう態度が実は単に人との距離感が計りにくくて近づきたいのに近づけないヤマアラシのジレンマだったりね。

話は主にこの2人が中心で進み、それがコミケに繋がったり趣味のオフ会に繋がったり。特筆すべきこんなストーリーが面白い!という感じではありませんが、職業漫画としてのあるあるを全面に出していますので安定した面白さで読めます。

なので好きな人にはめちゃめちゃハマると思いますこの作品。絵も綺麗だし、話もわかりやすい。キャラも立ってるし、印刷の仕事に関しても丁寧に描写されています。講談社作品だと1巻が無料のタイミングも多いので機会があれば読んでみてはいかがでしょう。


眠気覚め度 ☆☆☆

 

今のイチオシ!
ちょっと前のイチオシ!!
結構前のイチオシ!!
それなりに前のイチオシ!!
スピリットサークル完結!!
タイムリープサスペンス!!
ゲームとギャグが好きなら!
漫画もいいけど山賊もね!
記事検索
応援してますその2
応援してますその5
Twitter
日々読んだ漫画の感想を中心に記事を更新しています。記事更新と同期していますので、漫画の感想情報を見逃したくない方はフォローお願いします!
メッセージ

名前
メール
本文
「眠気が覚める面白さを求めて」は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。
  • ライブドアブログ