眠気覚め度 ☆☆☆☆☆

ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 21巻 - 虎松譲二事件完結!大事件の事後処理といつものギャグパートが再開します

20巻の大事件事後処理から始まる「ハコヅメ」21巻です。アンボックス含むと実質22巻目です。

21巻の前半は伊賀崎交番署長の過去篇から繋がる物語の後処理になります。主にあの事件がどれだけ対応した川合と源に影響を与えたのか、どうしてあの事件当時あのような行動を取れたのか、そして伊賀崎は今後どうなるのかという描写がされています。これで虎松譲二との因縁話もおそらく完結です。

やはりその中でも、新任ながらに源を信じて人質となった川合の機転、そして感情、更に如月部長との関係と心が揺れ動きまくっているのが読み取れます。

正直この肝の座りっぷりは1巻の頃から考えられないほどの成長ではないでしょうか。いや、成長どころかむしろそれが川合のらしさなのかもしれません。

元々似顔絵捜査の時から発揮されていたように、川合は洞察力がものすごいのです。人の顔を見るだけで今日は機嫌が悪そうですねと挨拶代わりに言ってしまうほどで、誰よりも周りのことを観て察していいます。人質になった経緯もそのような洞察があったからこそと語っています。

20220622_001
「私は女だから源部長ほど酷い目に遭わなかった」「弱音を吐けない源部長のほうがきついはず」

その洞察に加えてこの気遣いです。源のことを嫌っていると言いつつも、山田や聖子ちゃん同様に源のことを信頼しており、源ならこう動いてくれる、源ならこう考えてくれるというところまで察して行動しています。おまけにその後のことまで気を遣えている、とんでもなく成長していますね。敷根に爪のアカ飲ませてやりたい。

それだけの洞察力、気遣いがあるくせに、頑なに如月部長の気持ちに真正面から応えようとしないのがまた川合らしくていいですよね。恋愛慣れしていなくて、自分が憧れていてイケメンに迫られていて、感情がわけわからなくなっているんだと思います。

だからこそ、事件後にどれだけ如月部長から心配されても、心の余裕がまだなくて、むしろ心の負担になってしまっているのが見ていて切ない。


20220622_000
「好き  藤部長が大好き‥!」

そうして、心の弱った時に一番言葉を掛けてほしい相手が聖子ちゃんなんですなあ。元々女性警官バディものとして始まったハコヅメ、ここで原点回帰してきましたね。

なんかこの流れだと、結局如月部長とはどうともならない気がしてきます。20巻まではまだ何か起きそうな気がしてましたが、川合が無理ってなるんじゃないかなあこれ。


21巻の後半は事件の後遺症を残しつつも、徐々に元のハコヅメに戻って来てます。いわゆるこれまでもあったギャグパートを挟みながら事件に対峙していく流れです。

この元の流れ、面白い、確かに面白いんですが、、、シリアスパートが面白すぎたことに加えて、事件の事後処理である21巻前半も面白かったので、正直ギャグパートが相対的に面白くなく感じてしまっている気がします。

それと、絵がうまくなりすぎてるのも弊害な気がするんですがどうでしょう。やっぱり8巻とか10巻あたりの絵がギャグパートには向いていた気がします。シリアスパートは今の絵で抜群に合うと思うのですが。

うーん、難しいですね、どっちもまさしくハコヅメなんだけど、どっちであるべきなんだろう。やはりギャグあってのハコヅメとも言えるので、今くらいのバランスが丁度いいのかなあ。


そしてそして気になる次巻予告ですよ。重大事件は起きなさそうですが、聖子ちゃんと山田がどうなっちゃうのの展開じゃないですか。もしかしてギャグと恋愛を全面に押し出していくのかな?


ギャグパートはみたいなことを書いてはしまいましたが、21巻も実に面白かったです。噂ではそろそろハコヅメは完結して、今の年齢のうちに描ける作品に取り掛かる予定とのこと。ハコヅメが何巻まで続くのか、そして終わってしまうのは寂しいのですが、新作が読めるならそれも待ち遠しいです!

参考:販売絶好調の『ハコヅメ』、なのになぜ今“終わる”のか?


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ハコヅメ3巻の感想はこちら(川合先生初登場の似顔絵特別捜査本部)
ハコヅメ4巻の感想はこちら(黒田カナ伝説はここから始まった)
ハコヅメ5巻の感想はこちら(とにかく笑える内容盛り沢山)
ハコヅメ6巻の感想はこちら(伝説の笑ってはいけないお誕生日会が収録されたハコヅメの最高傑作巻)
ハコヅメ7巻の感想はこちら(煽り役としてパーフェクトな聖子ちゃんが見れます)
ハコヅメ8巻の感想はこちら(これ警察学校で習ったやつだ!)
ハコヅメ9巻の感想はこちら(色々な話が詰め込まれている、これぞハコヅメ)
ハコヅメ10巻の感想はこちら(迷惑防止条例と強制わいせつの違いが勉強になります)
ハコヅメ11巻の感想はこちら(1巻の伏線を見事回収、この日の出会いを何度も後悔することになる)
ハコヅメ12巻の感想はこちら(同期の桜完結、川合の成長を感じられる最高の展開)
ハコヅメ13巻の感想はこちら(アンボックス事件のカップルが登場)
ハコヅメ14巻の感想はこちら(奥岡島事件発生篇)
ハコヅメ15巻の感想はこちら(奥岡島事件解決篇)
ハコヅメ16巻の感想はこちら(1巻で出てきたキャラが再登場する感動の成長譚)
ハコヅメ17巻の感想はこちら(アンボックスを読んだ後に読むと非常に切ない)
ハコヅメアンボックスの感想はこちら(警察の負の感情を全力で主張した傑作)
ハコヅメ18巻の感想はこちら(即ハメあんあん激イキスクール)
ハコヅメ19巻の感想はこちら(20巻を読むために覚悟させられる巻なのではないか?)
ハコヅメ20巻の感想はこちら(アンボックス級のシリアス話が一貫した傑作巻)


ハコヅメ~交番女子の逆襲~(21) (モーニングコミックス)
泰三子(著)
講談社 2022-06-22T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.7
¥693




おまけ
20220622_002
遂に噂の術科師範が出てきてここは盛大に笑ったwww


青春は変態 - 山本中学の新作は陰キャ同士の悶々とした恋愛をニヤニヤ見れる

これ、本当におすすめです。

内面の心理描写が抜群の山本中学先生の新刊「青春は変態」がめでたく発売されました。もう、とにかくニヤニヤが止まらなくて一気に眠気が覚めてしまいました。これは恋愛もののひとつとして絶対に人気が獲得出来るレベルです。知名度が上がれば売れるはず。

実は、山本中学先生が描く作品ってドロドロしてたものが多かった気がするんですよ。「繋がる個体」は好きなのに理由があって別れたアラサーがくっつく話だし、「戯けてルネサンス」は高校ものだけど出てくるクラスメイトの過去が壮絶だったし、「サブスク彼女」はそもそもメンヘラがテーマだったし、「左様ならこんばんは」に至ってはヒロイン最初から死んでるし。

だけどこの「青春は変態」はとにかくピュアな陰キャの恋愛が見れるんです。相手のこと好きなんだけど、実は好き避けしちゃってたり、勝手に卑下して相手に不快な思いをさせていると思いこんで落ち込んでいたり。

そんな男女それぞれの心理描写が代わる代わる表現されることで、陰キャ思考が実は全然大したことない杞憂で、そんなごちゃごちゃしなくていいからとっととくっつけよコンチクショーとなるんです。そう、ちょうど作中の樒(しきみ)さんと同じ立場になれます。

20220609_002

序盤から友人にからかわれることを契機に、隣同士の席だった二人が、これまで実はお互い密かに意識しあっていた二人が急に接近を始めるんです。しかも女の子の檜さん側からの大胆のアプローチで一緒に帰ることに。そんなきっかけで、少しずつ二人の歯車が動き出すんですね。

だけど前述した通り、自分のことなんか好きになるわけがないという勝手な思い込みが二人共あって、一緒に帰って楽しいはずなのに緊張して考えすぎて、そしてその心理描写が次々と繰り返されます。ある意味双方が主人公として様々な思いを交差させるわけです。

もちろんこの二人の思考なので、それぞれの思いには気づいていません。読んでいる第3者の読者だけがわかるという、まさに神視点で二人を見守る事ができるんです。これがやっぱり、元々心理描写が上手いからこそ出来た手法なんじゃないかと思うわけです。これは上手いと思うなあ。


20220609_001
えっこの時間はもはやデートでは!?

色々あって、何かおごるということで喫茶店に入った二人、実際にケーキを食べるまでこれがデートであると気づきませんでした、初々しくて可愛い。

そしてこのシーン、水を注ぎに来る店員がこの二人を見てニヤニヤしていて、それがまた良いんです。この店員もまさしく、読者である我々と同様に二人の初々しい姿を見守ってるんですねえ。作中キャラと読者もシンクロさせて、何よりもこの主人公二人の恋愛がメインですと主張してるのがまた上手い。


こんな展開をしながら、徐々に近づいたと思いきや、陰キャ思考が故にやっぱりなかなかすぐにはくっつかなくて、ニヤニヤもモヤモヤもさせてくれる展開になっていきます。

そんな展開が続いてくのかなーと思いきや、中盤に息を呑むような大きな動きがあります。

20220609_000

このシーン。ポイントになるのはこの前のページなのですが、さすがにそれはネタバレなので貼れません。ただ、このシーンがめちゃめちゃ良すぎて、「青春は変態」が絶対に売れるべき作品だと思わせてくれました

これがきっかけでお互いの意識がさらに深まっていって、いよいよタイトルにある「変態」的な妄想やらなにやらが始まっていくのです。


いいなあ、若い頃は確かにこういう思考しちゃった時もあったなあと色々思い出させてくれます。なので、二人が考える陰キャ思考もわかるし、そんなのは杞憂だというアドバイスもしたくなるし、それでも徐々にお互いのことを理解して思いが深まっていくのをじっくりニヤニヤ見届けたいしという気持ちになるんです。

これ好きな人は好きどころか、知名度上がれば絶対に注目されると思うんだよなあ。それくらい一般向けな内容になっている気がするし、山本中学作品に触れるならすごく入り込み易いと思うんです。

何より他の作品よりもドロドロしたところがないし。せいぜい陰キャ思考が過ぎてイライラするかもくらい。出てくるキャラも悪い人物はいないし、作中キャラはみんな杉村くんと檜さんのそれぞれの思いに気づいていて、二人を応援してる人たちしかいないし。

じっくりとニヤニヤしながら二人の行く末を見守りたくなる「青春と変態」でした。抜群にオススメです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


青春は変態 1
青春は変態 1
posted with AmaQuick at 2022.06.10
山本中学(著)
日本文芸社 2022-06-09T00:00:00.000Z

¥734


宇宙兄弟 41巻 - We are "Space brothers"!

40巻で遂に南波兄弟が月で邂逅し僕たちは宇宙兄弟ですとタイトル回収した「宇宙兄弟」41巻です。当然内容は40巻の続きとなります。

この「宇宙兄弟」という言葉が作中でもとても大きな意味を持つことになります。それは全ての宇宙飛行士たち、全ての宇宙開発に携わる人たち、そしてその全ての関係者、それらは皆、宇宙開拓へ向かう仲間であり兄弟である。その意味が世界中の人たちに伝搬し、宇宙兄弟という一つの思いとなる。それがなんと素晴らしいことでしょう。

そしてまた、主人公である六太がその言葉の発信者であり、宇宙開発者全員に大きな影響を与える存在になったのが非常に感慨深いです。1巻から読んでいる読者にとってもそれはひとしおでしょう。

最初は日々人への劣等感を抱え、会社を辞めて宇宙飛行士の夢を追い、宇宙飛行士になるための試験では様々な困難を乗り越えて仲間も増え、宇宙飛行士としての訓練でも同様に非常に困難な道のりを歩んで行き、遂に月へ旅立つ宇宙飛行士となり、月でも様々なハプニングアクシデントに巻き込まれつつも乗り越えたからこそ、非常に深みのある「宇宙兄弟」という言葉になったのではないでしょうか。

20220526_000
「誰もが宇宙兄弟の一員であるということを このマークが思い出させてくれるでしょう」

それが宇宙開発企業間でも共通の言葉となり、「宇宙兄弟」を宇宙開発のシンボルとする動きになります。月で発した言葉が地球でも展開されて、地球にいながらも月にいる六太たちを感じられるシンボルへ。

いいなあ、この流れ。悪い人が出てこないのが「宇宙兄弟」の良いところなのですが、この流れも実に優しい。読んでるだけで幸せな気持ちになれます。


41巻の半分くらいはこの「宇宙兄弟」に関する話で、あとは月開発の続きを日々人たちロシアチームと共同で進めることとなります。兄弟揃って夢を叶えて月のミッションを実行していく姿がまた美しい。

途中で少し事故が起きそうな不穏な流れになるのがゾクッとしました。正直なところ、ここまで事故が発生しまくった月の作業にこれ以上の試練は与えず、無事六太を地球へ返して上げてほしいところです。これ以上事故発生させるのはさすがに酷でしょうよ。。。


というわけで、前巻の40巻に引き続きタイトル回収をして大盛り上がりの「宇宙兄弟」41巻でした。ところでこれ終わる時はどこまでやって終わるんだろう。ある意味既にクライマックスだと思うのだけど、これ以上長く続くのだろうか?六太帰ってきて、日々人を待ち受けて終わりとかが綺麗な気がする。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


40巻の感想はこちら(遂にタイトル回収!)


宇宙兄弟(41) (モーニング KC)
小山 宙哉(著)
講談社 2022-05-23T00:00:01Z
5つ星のうち4.8
¥500


ヴィンランド・サガ 26巻 - トルフィンの贖罪が解放される日

遂にヴィンランドに降り立ち開拓生活を送る「ヴィンランド・サガ」26巻です。

本当に端的に一言だけ、すごく良かったです。この「ヴィンランド・サガ」という物語が迎える終焉ともいうべき結末を迎えています。これを描くためだけに、この26巻という長い話を連ね続けたと言っても過言ではないのではないでしょうか。

20220524_000
「トルフィン 私はお前を赦すよ」

このシーン、そしてここに続くトルフィンの表情、思いが「ヴィンランド・サガ」で描きたかったものなのでしょう。それほどまでのインパクト、そして感情を揺さぶられる最高のシーンになっていました。読者の多くはこれを読むためにこの作品を読み続けていたのかもしれません。

思い返すと、戦士という存在に憧れて密かに船旅についていき、そこで父親を殺され、その仇を殺すために一流の戦士となり何人もの人を殺め続けた子供時代。

仇敵であり育ての親でもあるアシェラッドの死による喪失感と、それまで人を殺め続けたことによる後悔、苦悩に苛まされ続けた奴隷時代。

良き友を得、過去の罪を抱えながらも正面を向き立ち上がり、その贖罪のために人を殺さないという誓いとともに送った時代。

そして、妻や新たな仲間たちとともに緑豊かなで戦争のない国を目指して開拓を始めた開拓時代。

これらの人生を送る中で、トルフィンは前向きになりつつも心の陰では常に過去の自分と立ち向かっていました。そしてその罪は、決して許されるようなものではなく、永遠にトルフィンの心を蝕む闇として立ち塞がるはずのものでありました。

それが、トルフィンが次に人を殺した時には必ず殺すと言って見張りの如くついて来たノルドが、トルフィンの罪を全て赦すと告げたわけです。

決して許されることのないと思っていたトルフィン。そして何よりも、トルフィンに家族を殺されたことからずっと殺意を向けていたノルド。そのノルドが赦すと告げたことで、如何にトルフィンの心の闇が晴れたのか。それは、このシーン後のトルフィンの描写で見事に語られています。

やはりこういうシーン、漫画だからこそ得られる素晴らしいシーンなのではないでしょうか。ほとんどセリフなどなく、その場での表情、動き、それらの表現全てから、トルフィンの心が解放されたことを読み取ることが出来るのです。さながら、名映画のクライマックスシーンを見ているかのようでした。素晴らしい描写だと思います、前述しましたが、このシーンのために「ヴィンランド・サガ」という長い物語があったのでしょう。


本当に、本当によかった。たった数ページなのに、感想描くためにシーンを見返す度に涙が出てきます。最初から名作だと思って読み続けて来ましたが、この26巻で改めて名作であるということを証明したと思います。

さて、「ヴィンランド・サガ」はあとはエンディングに向かうだけな気がしますが、ここからあとどれくらい続くのでしょうか。原住民との争いがありそうな気もするので、そこも描かれたら余裕で30巻越えそう。でも逆に、次の巻で一気に時代が進んでエンディングを迎えても納得できます。さてどうなるやら、楽しみです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ヴィンランド・サガ(26) (アフタヌーンコミックス)
幸村誠(著)
講談社 2022-05-23T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.9
¥693


ジャンケットバンク 7巻 - 一皮剥けた御手洗くん篇

御手洗くんがオークション行きになりそこから這い上がる「ジャンケットバンク」7巻です。

ホント面白い。ジャンケットバンクはホント面白いよ。いつものごとく、日付が変わると同時にKindle版をDLして読んだのですが、眠気ほぼマックスだったのにも関わらず眠気が覚めて一気に読んでしまいました。まさしくこれぞ眠気が覚める漫画です。

20220518_000

賭けに負けてキャリア100年の債務を追った御手洗くんは銀行員だけれどもオークション施設に送られます。ここは自分の価値に値段をつけられて、日に日に価値が落ちていく世界。そんな在庫管理と同等の扱いをされる債務者達の行きつく場がオークションなのです。

実はこのオークション、2巻の時点で既に言及されている施設なんです。

20220518_001
「一週間でオークション行っちゃたもんね」(2巻より)

上記セリフは御手洗くんが特四に配属された時のものです。なので、最初の時点でここまで想定してシナリオは練られていたということでしょう。さすが田中一行先生といったところでしょうか。


オークション施設はさながらカイジの地下強制労働施設の如くでわくわくさせてくれます。自身の落札最低価格の半分までなら自由にお金を使える、それを使って食事をするもよし、着飾ってオークションで売れるように努力するもよし。こういう設定はやはり面白い。

しかしやはり、ジャンケットバンクの良さはそのスピード感です。これだけ大規模なオークション施設という仕掛けを作りつつも、そこの生活にはあまりフォーカスすることなく、オークション施設で行われる一発逆転のギャンブルに御手洗くんが挑戦することとなります。

20220518_002

それがこの「ザ・ショートホープ」。これまでの真経津が挑戦してきたギャンブルとは難易度が大きく異なり、内容は非常に簡単、他の参加者との駆け引きもほぼ無い、単純明快なものとなっています。

それゆえに、ギャンブルの攻略よりも、オークションまで落ちてきた債務者を見ていくこととそれを通して御手洗くんの成長を描いたものとなっています。なんでも疑り深くなっている御手洗くんがカッコいい7巻です。そしてことごとく裏目に出ていく姿が素敵な7巻でもあります。

そして「ジャンケットバンク」の良いところはやはりそのスピード感。7巻でこのオークションは結末を迎えます。中途半端に8巻へ跨がないのでキリが良くてグッドです。

それにしても、オークションで出てくる債務者達は紛うことなきクズばかりで清々しかったなあw


あと、しばしば御手洗くんの様子を伺うために真経津たちギャンブラーが仲良くキャッキャウフフしてるんですが、あの異常者たちの中で真人間に一番近い獅子神が世話役の苦労人になっているのが本当に面白い。これ獅子神の人気上がりそうだなーw

20220518_003
獅子神の家で獅子神が人間を使って土下座させてたんじゃないかと推測する真経津たち。全部推測だけでそこまで想像されてはさすがの獅子神も辛いところw


20220518_004
やってたんだけどねw (1巻より)

読み返すと、獅子神もオークションで債務者を買っていたくだりの説明がありました。なので繰り返しですが当初からしっかりこのオークション設定を構想していたのでしょう。

だとすると、どこまで構想練ってるんだろう。8巻の予告では御手洗くんと真経津が戦うみたいなことになりそうだし、そこまでスピード展開で本当にいいんだろうか。その組み合わせはあるならてっきり最後のバトルになりそうだと思っていたので。


いずれにせよ、相変わらず抜群に面白いです「ジャンケットバンク」。当初から構想されていた設定がバンバン出てくるし、ギャンブラーたちも一回で終わりじゃなくて和気あいあいしてて可愛いし、新刊を読む度に最初から読み直したくなるほどの名作です。絶対的におすすめ。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


3巻までの感想はこちら(大金を持つ銀行は最高の賭場になり得る)
4巻の感想はこちら(まさかの決着方法に脱帽のジャックポットジニー篇完結)
5巻の感想はこちら(閑話休題でも一切手を抜かないギャンブラー達)
6巻の感想はこちら(またもや驚きの結末を迎える「アンハッピー・ホーリーグレイル」戦はこの巻で全て読めます)


ジャンケットバンク 7 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
田中一行(著)
集英社 2022-05-18T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥659




ところで、御手洗くんをギャンブルに誘った特二の朔くんはどういう目的で御手洗くんに接触したんだろう。今後御手洗くんが驚異になるだろうから、確実に始末するために接触した?でもそれならそのまま放っておくだけでも勝手に御手洗くんが自滅してただろうし。

ということは逆で、御手洗くんを評価している人が他にいて、そこの依頼で御手洗くんの成長を促すように接触した?こっちの方がまだ納得できるかな。それがもしかして7巻の結末になっているところの影響なのか?


もういっぽん! 18巻 - 強者同士の思いをぶつける戦いが熱すぎる

来年のTVアニメスタートが決定して原作も超大盛りあがりしている「もういっぽん!」18巻です。

未知たち2回目の金鷲旗、去年を超えるための3回戦、超強敵のダークホースである幸徳学園と決着する巻となりました。

20220506_001

勝負はもつれにもつれて大将戦、青西のエース氷浦永遠と幸徳学園最強大和が全力でぶつかります。

ここまでの幸徳学園戦、先鋒の南雲を始めとした、ある意味青西側は挑戦者という立場であったように思います。

剣道から柔道に転向し、まだ柔道を始めて1年しか経っていない南雲、中学から未知とともに柔道を続けていたけれども、決して強者とは言えない立場で努力を続けてきた早苗、相撲の経験があるとはいえ高校から柔道を始めたばかりの司、柔道を続けていたけれども強さにあまり結びつかず試合で一本経験をしたことがなかった姫コ。

いずれも強者という立場ではなく、いつ何時も挑戦者としての心持ちで戦ってきたのではないでしょうか。

そこに対して、青西のエース氷浦永遠は、青西内だけでなく周囲から認められる強さを持った強者です。絶対的な青西のエースとして、時には相手を秒殺し、時にはチームの強さを底上げするために尽力し、青西を代表する強者として立ち振舞いました。

その相手となったのが幸徳学園のエースである大和になります。すなわちこれは、弱者による挑戦ではなく、強者による頂上決戦なのです。※あまり弱者と書くと早苗達が弱いという誤解を生みそう。


何が言いたいかというと、早苗や姫コは、試合中いつも練習を思い返すことで、これまでの練習や努力の上で強者に立ち向かうジャイアントキリングが幾度も表現されてきました。

そしてそれが何度も私の涙腺を刺激して感情を思い切り揺さぶってきたので、この努力やみんなの力を一つにする思いというのが「もういっぽん!」の最大の魅力だと思っています。

それに対し、実は永遠の試合というのはあまり努力を思い返すことが無いというか、これまで作中で培ったものを使って勝利に繋げるというわけではなく、作中で描かれていない永遠自身の練習努力の成果で勝っていたところがあると思うのです。※もちろん、その強さの背景にみんなの思いが乗っかっています。

例えばやぐら投げを繰り出したところとか、腹包みを繰り出したところとかは、いきなり永遠が作中で繰り出すわけじゃないですか。これが永遠の強さと成長を描写しているところだと思うのですよね。

どうしても未知や早苗を始めとした実力が足りないキャラ達の練習にフォーカスするために、永遠の細かい練習描写にはあまり割かれていません。そのためか、これまで早苗や姫コの試合で表現されたようなこれまでの努力成果による盛り上がりはありません。

しかし、強者の戦いには強者の戦いによる盛り上げ方があるのがまた、「もういっぽん!」の面白いところなのだと改めて気付かされたわけです。

強者というのはもちろん永遠だけでなく、対戦相手の大和も含んでいます。この2人の戦いはこれまでの4人の戦いと違い明らかに異質であり、お互いがただお互いのためだけに戦っているのが本当に強者であることを感じさせるのです。

20220506_002
「自分を強くしてくれる相手さえおれば…大和忍/氷浦永遠は…どこまででも辿り着ける」


20220506_003
「自分のために 私は今この瞬間 私自身がただこの人より強いことを証明したい 柔道はみんなが作ってくれた…私の道」

このシーン、これまではチームとしてというところがあったにも関わらず、彼女たちには自分のことしか見えていないという人間臭さが本当にたまらなくて良かったです。

そして何度も書きますが、これまでのみんなの思いと努力を重ねたチーム戦から、強者による自分自身のための戦いを表現しているのが素晴らしいと思うのです。

また、この場面を応援している未知の表現がまた良くて、2人の世界が出来上がっていることに気づくと同時に、まだ自分がそこのレベル達していないと思い知らされてるんです。怪我で試合に出られなく、練習期間も短くなってしまい、おそらく未知は心の中で負い目を感じています。

しかしそんなことをおくびにも出さず、チームメイトを全力で応援サポート、そして気遣いが出来るように成長した未知にも拍手を贈りたいところ。試合に出ることができなくても、大きな成長をまたしたのだろうなあ。


熱い青春から熱いスポ根まで見せてくれる「もういっぽん!」は本当に面白い。感情は揺さぶられるし青春を思い出すしこんな学生生活送りたかったと思わせる。この作品に出会えたことに感謝。


お話としては、やはり3巻に及んだ幸徳学園戦が青西の金鷲旗のピークでした。お互いのキャラを掘り下げまくるし決勝みたいな盛り上げ方してたもんなあ。そのぶん熱量が物凄くてこっちも本当に心から楽しめて読めました。

また、これまで既に多くのキャラクターが出てきて、その彼女たちもまた成長を続けていることをしっかり表現していることが嬉しくなります。特に霞ヶ丘のモブキャラたちがモブから完全なレギュラークラスまで成長していて、早苗や未知達の思いを焚き付けているのがホント素敵。

キャラが沢山出てるのにしっかりみんな個性的だし、みんなが魅力的なのがたまりません。主人公やライバルだけでなく、それ以外をきちんと掘り下げてキャラ付けされる作品は名作の証だと思います。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


15巻の感想はこちら(2回目の金鷲旗、青春と若さをぶつけ合う)
16巻の感想はこちら(最高に熱い青春ドラマが眩しすぎる)
17巻の感想はこちら(全員の思いを一つにして挑む団体戦が美しすぎる)


もういっぽん!【電子特別版】 18 (少年チャンピオン・コミックス)
村岡ユウ(著)
秋田書店 2022-05-06T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥446



おまけ
20220506_000
最後のこの顔好き過ぎるwwwwwwww


青野くんに触りたいから死にたい 1~3巻 - これほどまでに青春と恋愛とホラーが噛み合った傑作があっただろうか

死んでしまった恋人の幽霊が単なる霊なのか悪霊なのか判断がつかなくなる「青野くんに触りたいから死にたい」です。今回は1~3巻までの感想となります。

前から読んでみたいと思い続けていた椎名うみの初連載作品となります。何かのセールに乗じて8巻まで購入、ようやく最近読み終えて、一気に最新刊の9巻まで購入してしまうほどハマってしまいました。面白い。


20220503_000

簡単なあらすじは、男の子に免疫が一切なく、どこかクラスで浮いている女の子 優里ちゃんが、青野くんにひょんなきっかけで惚れてしまいあっという間に付き合うことになり、そして2週間で死に別れするところから始まります。

20220503_001

その後、青野くんがいないことに絶望し、死を考えてしまう優里ちゃん。カッターを手に当てるほど追い詰められてしまいます。

20220503_002

すると突然現れる青野くん。そう、幽霊の姿で優里ちゃんの前に現れたのが青野くんです。しかし幽霊だから触れません。目の前に愛しい人がいるのに、死ぬほど追い詰められていたのに、話は出来ても触れることは叶いません。

20220503_003
「青野くんは幽霊でわたしは生きてるから君に触れないんでしょう!?だったらわたしが死ぬしかないじゃない君は生き返れないんだから!?」

ここでタイトル回収です、「青野くんに触りたいから死にたい」優里ちゃんのお話となります。幽霊となった付き合ったばかりの恋人、そんな幽霊と仲良く生活していくハートフル青春ストーリーがここから展開されます。


しかし、単なる恋愛ものではなく、純然たるホラー展開をするのが「青野くんに触りたいから死にたい」なのです。


正直な感想を述べると、この作品のホラー要素はそんじょそこらのホラー漫画では太刀打ちできないくらい怖いと思います。椎名うみが描く漫画の間、漫画の上手さ、作品の空気感が相乗効果となって最高の恐怖感を演出しています。


20220503_004
「君の中にちゃんと俺を招いて」

ふとした瞬間に出てくる青野くんの別の顔。これが出ると一気にホラー感が増します。

日常では絶対に見せないこの顔へ、ふとした瞬間に切り替わるその空気が物凄く上手く恐怖を演出しています。本当に、瞬時に日常から非日常に切り替わるのが凄くて怖くて、得も言われぬ恐怖感を感じることが出来ます。

この恐怖演出が本当に怖い。普段読む時は寝る前の暗い部屋でタブレットで読んでるのですが、思わず怖くなってしまうくらいに本当に怖いんです。

果たしてこの青野くんは青野くんなのか、それとも他の悪霊なのか、その謎に近づきながら優里ちゃんと青野くんはより関係を深めていき、謎を解くための仲間も増えていきというのが基本のお話となります。

1巻では謎のまま話が進んで、2巻から怖い青野くんに関する話が徐々に明らかになっていき、3巻で青野くんや優里ちゃんの取り巻く環境が明らかになっていくこととなります。

3巻では青野くんとは違う霊の話が出てきて、別の話も同時に展開されていきます。その霊と青野くんの違いが出てきたりして、さらに青野くんのことを深く知れることになるわけです。


本当に面白い作品だと思います。見てるこっちが恥ずかしくなるような初々しい恋愛表現があると思いきやいきなりホラー展開になるし、ホラー要素もきっちりそれなりの理由をつけてあって徐々に明らかになっていくのが先の展開を気にさせます。

20220503_005

2巻のこのシーンとか、抜き出しただけではなんとも思わないのに、読んでる流れだとめちゃめちゃ怖かった。本当にゾクッとした。普通の絵なのにものすごいホラー演出なんですよここ。こういう表現が上手い。


20220503_006

3巻で出てきた優里ちゃんの姉である翠と、優里ちゃんの家庭事情が垣間見えるところはホラー演出じゃないのでこれだけで怖い。

こんな頭おかしい人間いるのかよと思うくらいひどい翠ですが、これがまた現実にはこういう人もいるんだろうなと思わせてしまうところがまた。たぶん家庭崩壊の家とかはこういうところもあるんだろうなあ。

そして3巻の後半から始まる学童保育篇が別の視点になっててまた面白い。藤本や新たに幽霊が見える小学生との交流が始まり、話に深みが出てきます。読む人によっては脱線してるとも捉えられそうですが、私はこの話を楽しく読めました。


今回は作品紹介と3巻までの簡単な感想に留めましたが、既刊9巻までは読んでいますので是非ともそこまで感想を書ききりたいところです。こういう作品が出てくるから漫画読みはやめられない。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


青野くんに触りたいから死にたい(1) (アフタヌーンコミックス)
椎名うみ(著)
講談社 2017-06-23T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.5
¥660


青野くんに触りたいから死にたい(2) (アフタヌーンコミックス)
椎名うみ(著)
講談社 2017-10-23T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.7
¥660


青野くんに触りたいから死にたい(3) (アフタヌーンコミックス)
椎名うみ(著)
講談社 2018-04-23T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.8
¥660


忍者と極道 9巻 - ガムテが主人公になりました

ガムテが主人公になった「忍者と極道」9巻です。

9巻でグラス・チルドレン篇が完結します。忍者の犠牲者3名、破壊の八極道の犠牲者3名、双方とも残るは5人ずつで、互いの素性も明らかになり、10巻から第2部が始まる形となります。

20220413_000
「これがッッ 殺し屋ガムテすべてを賭けた本気の本気だ!! 多仲忍者 てめーには絶対負けない!!」

これまで共に戦ってきたグラス・チルドレンの極道技巧を次々と使い、仲間と共に宿敵忍者(しのは)を倒そうとするガムテ。こんなんもう主人公だろ。。。


しかも忍者(しのは)を倒す為に、自分の命を投げ出してヘルズクーポン2枚服用しているガムテ。

20220413_001
「オレは…5分で死ぬ」

こんな命の賭け方、もう主人公だろ。。。



20220413_002
「他人に殺された心はッッ!他人を殺さなきゃ正気ではいられないッ!! 殺さなきゃ生きらんない!!」


20220413_003
「オレ達は!!そんな生き物なんだ!!! そんな生き物になっちまった!! なっちまったんだ!!!」

いずれも悲しく辛い過去を持つ、グラス・チルドレン。大人に壊されて、壊す立場にならなければ生き残れなかったグラス・チルドレン。彼らの代表として、彼らの受け手として振る舞ってきたガムテの強い思いの吐露。こんなんもう主人公だろ。。。


ガムテが終始格好良くて、正直なところ主人公の忍者(しのは)よりも応援したくなるくらい魅力的なキャラでした。9巻の作者あとがきで少し触れていたのですが、ガムテの初登場はとことん道化で、嫌われる為に存在するキャラだったんですよ。

そんなガムテの思いが解き放たれて、グラス・チルドレンを束ねるカリスマ性を持つ裏付けも明確に受け取れて、忍者(しのは)の宿敵としてここまで格好良い存在になるなど誰が予想出来たでしょうか。

おまけにグラス・チルドレン篇の終盤では、ガムテが忍者(しのは)をずっと名前呼びして明確にライバル視してるのがまた格好良くて。それだけ思いが強いことが読み取れて感動してしまいます。

本当に、本当にこのグラス・チルドレン篇のガムテは素晴らしかった。誰よりも強くて、誰よりも闇が深くて、誰よりも自身の信念を貫いて。そんな魅力的なガムテがいたからこそ、グラス・チルドレン篇はとても面白かったのだろうな。

決着がついたあとも、これまでの中では唯一生首にならず終わりを迎え、その瞬間まで忍者(しのは)と極道(きわみ)の関係をぶち殺す執念は本当にお見事。これでグランドフィナーレになってもおかしくないくらい格好良さが際立ってました。

しかも本当にガムテがほしかったのは、極道(きわみ)からの愛だったことがまた涙を誘います。ガムテらしく、その本心を明かすことなく、信念を貫き通した姿もまたカッコいい。


正直グラス・チルドレン篇はガムテがカッコよすぎたので、忍者たちのカッコよさが霞んでしまっています。これまでは笑いながらも忍者の活躍を見れて、そこまで極道側に肩入れは出来なかったように思います。

それが、このグラス・チルドレン篇では立場が完全に逆転。極道側、特にガムテに個人的には物凄く肩入れしてしまいました。

弱者が挑む強者への挑戦。弱者だからこそ様々な策を弄して忍者を殺そうとする立ち振舞い。その一挙手一投足が全て格好いい。

前回の感想でも書いたのですが、これ以上面白い展開に出来るのでしょうか?グラス・チルドレン篇が面白すぎたので、このあとの展開で盛り下がってしまうことが心配になってしまいます。もちろん相対的な話であって、これまでの面白さを維持するだけでも十分名作に値する作品になると思うのですけれども。


なんかもう、ガムテが死んだことで消失感があります。残りの破壊の八極道が勢揃いしたり、忍者(しのは)と極道(きわみ)が互いの正体を知ってしまったりと第2部に続くための仕込みはいくらでもあるのですが、そこを語っても仕方ない気がするのでここまでにしておきます。

ガムテに合掌。10巻が待ち遠しいです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


6巻の感想はこちら(生首エンターテイメントはグラス・チルドレン篇で大きな転換期を迎える)
7巻の感想はこちら(忍者と極道の共闘は生首エンターテイメントを最高潮に盛り上げる)
8巻の感想はこちら(グラス・チルドレン篇最高潮、ガムテと忍者の決着迫る) 


忍者と極道(9) (コミックDAYSコミックス)
近藤信輔(著)
講談社 2022-04-13T00:00:00.000Z

¥693




おまけ
連載時に気づいていたのですが、以下のコマはそのままでした。

20220413_004
左手が無いはずなのに両手を使って消火器を潰すガムテ。

左手は2巻時点で忍者(しのは)にぶっ飛ばされてるので、無いはずなんです。ここだけ復活した?



GROUNDLESS : 10巻 -君殺す事なかりせば- - 政治家と軍人

個人的に激推ししている「GROUNDLESS」10巻です。10巻も本当に面白かった。政治家と軍隊の関係性の苦悩を表現していたり、図らずも疫病の話が現実世界と同期していたり、戦闘を繰り返して歴戦の兵になっているダシア自警団の凄さが描写されたりしています。

20220317_002

10巻はユズハの故郷の話です。9巻はシュバーハンの話を掘り下げていたので、順番にメインキャラクターの背景を掘り下げている形になります。

シュバーハンは当初から活躍しまくってたし、ユズハも衛生兵として最初から活躍していたのでこの展開は嬉しいところ。狙撃兵ソフィアだけでなく、ダシア自警団の面々の過去を含めて苦悩が見えていくのが本当に興味深い。

そしてユズハは島民系の出自で、この世界では差別を受ける側の民族であり、今回の舞台はそのユズハの故郷なので、架空戦記としての国家形成設定を存分に発揮しています。

というのも、今回の政治家と軍隊の話というのは、大陸系にすり寄って島民区を維持し続ける被迫害側の政治の話と、その体制に不満を持つ軍隊派閥の話なのです。現実でもよく聞く話ですね。それが行き過ぎるとクーデターが起きたりとか。

ではなぜ文民統制が成り立つのか、なぜ武器を持たない政治家が軍隊に命令ができるのか、そういった疑問にダシア自警団がある種答えを出す話とも言えます。これは、ユズハの故郷アイアンクラウンがそうなってしまったことと、なぜダシアはそうはなっていないのかの国家形成も含んでいます。

なんだか難しい話になってしまったなあ。まあ、いずれにせよ、そういった思想の話、民族迫害も「GROUNDLESS」のテーマなので、そういったものが楽しめる方なら絶対に楽しめると思います。


今回もダシア自警団が訪れたアイアンクラウンで開放市民軍が蜂起して戦闘が起こってしまうのですが、そのあたりもダシア自警団とアイアンクラウンの防衛隊の違いが如実に出てくるのがやはり面白い。

幾度も訓練を重ねるよりも、数度の実戦を経験し死線を乗り越えた部隊の方が、実戦では結果を出してしまうというところとかが凄くリアルなのです。

20220317_003
「我々は…落ちこぼれと寄せ集めが運よく生き残っているだけのしょうもない部隊ですよ。」

ここまで読み続けている読者ならまさしく共感するはずなんですよこのセリフ。とんでもない戦いを切り抜けてきて、しかもその大半の成果はソフィアの狙撃で、しかしここまで生き残ってきたダシア自警団。初期メンバしかしっかりとした訓練などしておらず、半分近くがほぼ訓練なしで実戦投入されてきた背景を鑑みると、このセリフの通りなんですよね。ここまで生き残っているからこそ、実戦になると統率の取れた動きができる精鋭となっているわけですが。

20220317_004
「訓練のときとは比べ物にならないくらい 方針も指示も精神状態の作らせ方も、詳細で明確に行っている…」

やっぱり実戦になるとカッコいい。この命令もひとつひとつが丁寧で非常に緊張感を持って読めるのが「GROUNDLESS」の良さなんです。好きな人にはホントたまらないです。


そしてこの10巻の肝は、やはり前述した通り政治家と軍隊の話でしょう。

20220317_005
「我が区出身者を前衛に置く事は譲れませんぞ!!!そこは最低限、徹底してお願いしたい!!!」

アイアンクラウン自治区の防衛隊だけでは開放市民軍に敵わないと判断した区長は、即座にダシア自警団に協力を依頼し、その上ダシア自警団にいるアイアンクラウン出身者を前衛に出せと厚かましい依頼をするのです。

これは、ダシア自警団に手柄を取らせても、アイアンクラウン自治区としては自身の自治区出身者が開放市民軍を制圧したと放言したいがゆえですね。そうすることで大陸民に島民自治区として戦えるという牽制になると。

これ、言っていることは人でなしなんですが、ある意味政治手腕としてはそんなに間違っていないとは思います。ただ、作中ではこの区長は悪く書かれすぎかなという気はしますね。実態としてアイアンクラウン自治区の為ではなく区長自身の手柄という欲が強いからというのもありますけど。

20220317_006
「あなたはどれだけ恥知らずで他力本願なんです…!!!軍人の命もその仕事も…あなたのものではないんですよ!?」

この区長の態度に対して、やはりこの軍人の反応になるわけです。自分たちの力では開放市民軍を制圧できないことがわかってしまったアイアンクラウン防衛隊は、恥を偲んでダシア自警団に制圧を依頼するわけですから。

自分たちが無力だとわからされるのはキツイよなあ。おまけに損害が出たあとであり、しかもその原因はやはり区長の命令に起因してるというのがまた。

なぜ武力を持っている軍人が、武力を持たない政治家に道具のように命を扱われなければならないのか。その葛藤が10巻では炸裂します。

正直この区長は読んでてホント胸糞。人によっては読んでてイライラするかも。

これに似たような話どこかであったと思い返したら「ナポレオン-獅子の時代-」3巻でした。こっちは単に兵士とその上官の話ですが、無能な上官のせいで兵士が死ぬというのは、政治家におもちゃのように扱われる軍人という構図も同じようなものではないかと。

20220317_000
「戦死者の何割かは味方の撃った銃弾に殺された者だ  兵たちの間で実しやかにささやかれる噂によればその割合は四人にひとり」(ナポレオン-獅子の時代- 3巻より)


20220317_001
「理由もなく部下をイジメる上官や無能な将校はそうやって片付けられるんです」(ナポレオン-獅子の時代- 3巻より)

軍人の命を好きなように扱う政治家、同じ様なことをされるのでは。。。


というわけで相変わらず高水準の面白さを保っている「GROUNDLESS」10巻でした。ホント面白い、もっと売れてほしい。これが売れないのはおかしい。

ただちょっとキツイかなと思ったのは、ベースになる字が小さいことです。字が小さい上に文字が多いので読むのに苦労するかも。読み切るまで40分くらい掛かりました。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


1巻の感想はこちら(隻眼の狙撃兵 - ミリタリーアクションの傑作)
2巻、3巻の感想はこちら (第三穀倉地域接収作戦 - 初侵攻、新兵、暗闇の戦い、問題山積みの接収作戦)


GROUNDLESS : 10-君殺す事なかりせば- (アクションコミックス)
影待蛍太(著)
双葉社 2022-03-17T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥730


ナポレオン ―獅子の時代― (3) (ヤングキングコミックス)
長谷川哲也(著)
少年画報社 2005-02-10T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.5
¥547


日本三國 - 傑作になりうるポテンシャルを存分に秘めた怪作に酔いしれろ

オンラインで1話を読んだ瞬間にこれはとんでもない作品になると確信した「日本三國」1巻が遂に発売されました。Webで連載は追っているけれども待ちわびました。

ここで1話と最新話が読めます
なお、コミック1巻には3話まで収録されています。1話の時点で80ページ強あるので1話毎がものすごいボリュームです。


それでは完全オリジナルストーリー架空戦記のため、まずはあらすじをAmazonから引用してみます。
文明崩壊後の近未来、再び戦国時代と化した日本を再統一すべく一人の青年が立ち上がった。
名は三角青輝。後に奇才軍師と称される彼の伝説が、いま始まる!!
ものすごく簡潔。正直これで説明を終わらせるのはもったいないです。が、きちんと書こうとすると絶対に理解できないくらい設定が深いのでそれも無謀。なのでまずは1話を読んでください


簡単に書くと、今から150年ほど後の日本のお話です。とりあえず日本は滅亡、文明は大幅退化、人口は1/10になって、3つの国家が群雄割拠する時代です。

20220310_000

もうこの時点で自分の琴線にビンビン触れまくりなんですよ。元々戦争ものとか戦記物とか好物で、それに伴う政治だったり宗教だったりの考え方とか好きなんです。だから歴史ものが好きだったり。例えば「蒼天航路」とか「GROUNDLESS」とか「皇国の守護者」とかですね。

で、それが架空といえど日本が舞台で、しかも極めてシビアな世界観で描かれるのだからそりゃ食いつかないわけがないってもんですよ。

おまけに読み始めると、主人公三角青輝のキャラが非常に立っていて、好みが分かれるだろうけども自分は好きな部類のキャラなんです。これだけで魅力ビンビン。1話を読んだ時、その凄さ、面白さに衝撃を受け、これは間違いなく傑作になるだろうと確信しました。

まあ、戦記物と言いつつ、まだ実際の戦争自体は始まっていないのでそこはどうなることやらというところではありますが。今連載でやってる時点までも、まだ状況や設定説明が続いており、これから盛り上がるための準備をしているところと言えます。

しかし、その準備の時点でこれだけの面白さを放っているということが、この「日本三國」の凄さがわかるのではないでしょうか?

20220310_001
「そう!あんたの知識を活かせば、辺境を平定し、三国時代を終わらすことができるかもしれん!日本再統一も夢じゃないで!」


面白さの下地になっているのが、入念な歴史設定と魅力溢れるキャラ造形だと思うのです。

「日本三國」は既に日本が崩壊して3つの国家「大和」「武凰」「聖夷」になっているわけですが、当然そこに至るまでの「日本三國」ならではの歴史があります。おそらく、それらの国家成立までの背景だけで1つずつの作品が起こせる設定があるのでしょう。その時点で、この作品の設定、物語を構成する深みが凄いと言えるのではないでしょうか。

しかもこの作品の凄いところは、そういった背景を丁寧に説明せずに済ませていることだと思います。というのも、こういった架空戦記ものは、得てしてシナリオを説明する為に詳細な設定を作中で語ることが多いのではないかと。

で、「日本三國」はそれを説明口調ですることがなく、作中のキャラが今の政治や日本について語ることでそれを済ませてしまっているのです。もちろん、中央権力が持つ情報のような詳しい政治事情はまだ語られません。それは主人公三角青輝も知る由がありませんし、そもそも三角青輝の話であるのでそこに触れる必要性が無いためでしょう。

むしろ、一地方の人間である三角青輝が、この時代を今までどう生きてきて、どのような人間で、その能力をどのように活かしていくのか、その説明に注力しています。

つまり、極めて深い下地設定があるにも関わらず、読者には三角青輝の人生を追わせることに終始していると言えるのではないかと。このような架空戦記は設定を作ったがあまり全てを語りたくなる作品もあるような気がするのですが、それはあくまで話を盛り上げるためのソースであり、メインディッシュは三角青輝の話となるわけです。

ここまで書いて思い返すと、先程上げた好きな作品もキャラが非常に立っていたなあと。やっぱり話の面白さを大きく決めるのは魅力的なキャラクターということなのでしょう。

そういう意味では、1巻で出てきた三角青輝、阿左馬芳経、龍門光英といったメインキャラクターは極めてキャラが立っています。これはそれぞれしっかりと人気が出るだろうなあ。


20220310_002
「本気でこの世を変えるために、ここに来たんです。」


うーん、色々書いてみたのですが、正直自分の力ではこの作品の面白さをきちんと伝える自信が全く出てきません。これはあれこれ語るよりも、1話を見た方が絶対に早いです。1話を見て合わない人には絶対合わないだろうし、合う人には抜群に合うのではないかと。

それくらい魅力的に面白く、1話で三角青輝というものを綺麗に描かれています。1巻に収録されている2話3話は三角青輝の魅力を描きつつ、阿左馬芳経と龍門光英の紹介をしてるだけとも言えます。それだけなのにこれだけの面白さを読まさせてくれるのはやはり相当凄いと思うのだけど。


何度も書きますが、現時点では間違いなく傑作になりうるポテンシャルを持っている作品だと確信しています。この作品を連載開始時点から追えているのが非常に嬉しい。続きが何よりも待ち遠しい「日本三國」、もしもまだ知名度が無いのであれば、存分に広めていきたいところです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


日本三國(1) (裏少年サンデーコミックス)
松木いっか(著)
小学館 2022-03-10T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥693


今のイチオシ!
ちょっと前のイチオシ!!
結構前のイチオシ!!
それなりに前のイチオシ!!
スピリットサークル完結!!
タイムリープサスペンス!!
ゲームとギャグが好きなら!
漫画もいいけど山賊もね!
記事検索
応援してますその2
応援してますその5
Twitter
日々読んだ漫画の感想を中心に記事を更新しています。記事更新と同期していますので、漫画の感想情報を見逃したくない方はフォローお願いします!
メッセージ

名前
メール
本文
「眠気が覚める面白さを求めて」は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。
  • ライブドアブログ