純粋なエロ漫画家だと思っていた鬼ノ仁氏が描く超真面目な職業漫画「一級建築士矩子の設計思考」です。発売が3/9なのでだいぶ乗り遅れた感があります。読むこと自体は発売直後でしたがいままで感想を書けずにいました。

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「弟さんにすぐこの計画を止める様連絡して下さい これを建ててはダメです」

正直、最初のページの蕎麦をすすってるコマを見た瞬間に「エロ漫画やんけ」と思ったのですが、その中身はどうして真摯に建築のお話が語られていました。

上記画像は冒頭で知り合いの弟が家を建てる予定とのことで、建築士として見たことによる発言です。

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「ここで重要なのが壁の向きです 建物をこちらに押す力をXとすると Xに向かい合う壁だけが力に抵抗します こんなふうに」


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「構造は嘘をつきません Y方向から押されると倒壊する危険な設計です」

と、このように図面から読み取れる情報だけで、この建築構造の欠陥について語られます。こういった、本当に真面目な建築に関する話が続々と展開されていきます。

内容も特に難しいというわけでもなく、素人でも理屈を聞けば納得できるように表現されていきます。特に2話の「実測」のお話は面白かったですねえ、部屋に入って寸法を見るだけで壁の中にある空間まで推測して設計を浮かび上がらせるという技術が披露されます。

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「目には見えない床下や空気の流れ ほら 見えて来るでしょう?」

身体を使ったメジャーで寸法を測り、階段の高さの平均値から天井までの高さを計測、建物の高さ制限がある高度地区であることから柱が斜めである理屈まで断定。本当にこういう仕事あるんだろうか。だとしたら相当な技術やなこれ。。。

そんな建築のお話ばかりかと思いきや、単に町中を飲み歩く話もあったりと、これはおそらく、作者が描きたいものを好きなだけ描いてる作品ですね。こういった作者が自由にのびのび描いてる作品ってえてして面白い作品になる傾向があると思います。この「一級建築士矩子の設計思考」も多分に漏れません。

あとがきやこの作品のネット上記事を見て知ったのですが、そもそも作者の鬼ノ仁氏は元々一級建築士として働いていたのだとか。それがどうしてエロ漫画家に、、、は置いておいて、そういった実績や経験に裏打ちされた作品ってやっぱりそれだけ面白さが増すと思っています。

だからこそ、この作品はその真面目さから目を離すことが出来ず、魅了されてしまうのではないかと。しっかり取材なり経験なりの上に成り立つものは、漫画に限らず何でも面白いものです。逆にそれがないとどうしても薄っぺらいものになってしまうというか。

ただ、この作品の欠点としては、どうしても文字数が多くなっていることですね。そのため、どんなに気軽に読めるようになっていても、読むのに力がいります。オススメしたいけどラクに読めない部類だなあ、悩ましい。


眠気覚め度 ☆☆☆


一級建築士矩子の設計思考 1
鬼ノ仁(著)
日本文芸社 2022-03-09T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.7
¥663