村を滅ぼしたのが森の魔女だと思って全力で殺しに掛かったら魔女のせいではなかったところから始まる正統派サバイバルファンタジーの「魔女と騎士は生きのこる」です。読んだ感想として、素直に面白いです。

ここで読めます


まず、前置きもほとんどなく主人公が狩りから村に帰ったら村人が全員死んでます。スタートからスピード感があるヘヴィさです。この最初の状況説明にド直球でハードな展開をつきつけてくる素直さが素敵です。

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「生き残った我が領民たちをお前が代わりに導くのだぞ」

辺境伯だった父に代わり領民を導けと託されるものの、既に領民の息は無く。ドン底から始まる物語ってそこから立ち直る為にあれやこれやを試行錯誤していく過程が面白いんですよね。


で、冒頭で前述したとおり、この状況を作り出したと思われる魔女のところへ行くのですが、実は魔女の仕業でもなんでもなく、むしろ領民たちに正しい死を与えてくれる存在になります。そうして、そこから始まる魔女と、生き残った数人の領民とのサバイバル生活がいまのところメインテーマです。

そのサバイバル生活も、領民たちを養う領主の苦労という形で表現されます。

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当然領主であるアグレディオスだけの力ではこの生活を生きのこることは出来ず、領民同士で助け合って生活をしていくことになります。

このあたり、領主の息子であり騎士としての生活は送ってきたけれども、普通の生活に関する知識が無かったり、料理ひとつとっても満足に出来なかったりと、特徴が出ているのが面白いです。生き残った領民の子供も、漁師の子供だからこそ魚を獲ったり捌いたり出来たりするのがまたリアル。


また、ファンタジーならではの敵も出てきたり、それに対する様々な戦法を取ったりとバトル観点での面白さもあります。しかもいつまでも付きまとう生き残るためのサバイバルの必要性。そのあたりの組合せがうまくて、続きをどんどん読みたくなってしまうものです。面白い。

そしてその中でメインとなってくる、魔女との関係。殺そうとしたもののなし崩し的に一緒にいることになったこの魔女が、特異点として作中にいます。人間のものごとを理解していない魔女。人間の行動を理解していない魔女。ふとした瞬間に魔法を使う魔女。このあたりの謎がひとつも解明されず、まだまだ謎は謎のまま展開していきます。


サバイバルファンタジーとして非常に面白いですし、サバイバルがなくてもそれだけで十分面白いファンタジーものとして読めるくらいの重厚さがあります。

しかも単に重いのではなく、キャラにも可愛さあり、クスッとするような笑いありで、気楽に読める要素も満載です。飛び抜けて面白いとまでは言わないですが、これは安定した面白さで続いていきそうです。

この手のものって、大抵最初の設定とか固有名詞とか多くてなかなか入り込みにくかったりするものだと思いますが、それが最初のドン底からの始まりで全てを賄っているとも言えるでしょう。設定を語らなくても読めばわかるようにしている展開は見事です。次巻も期待します。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


魔女と騎士は生きのこる (1) (角川コミックス・エース)
新川 権兵衛(著), 近本 大(その他)
KADOKAWA 2022-02-04T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.8
¥634