春高準決勝、中学の進学を裏切られた小学校時代のチームメイトである青磁との決戦で大盛り上がり中の「少女ファイト」18巻です。

尚、2022/01/27までの期間限定で、10巻分である75話まで無料で読めるので読み直したい方や布教したい方はどうぞお願いします。この名作を埋もれさせるわけにはいきません。

少女ファイト - 日本橋ヨヲコ / FIGHT.1 多い試練 | コミックDAYS



とりあえず18巻を読み始めると全く17巻を思い出せなかったので、17巻から読み直して18巻まで読みました。17巻も面白いです、扉絵で各キャラの心情というか、格言というか、が記載されるのがカッコいいし、学の本気が見れるのも本当にゾクッと来ます。


さて、18巻を読んだ率直な感想を述べたいところなのですが、正直なところ、とても重厚な小説を読んだ後の様に一言一句が心に染みて様々な感情を揺さぶられています。ただ漫画を読んでいるだけなのにどうして漫画を読むのとは違う読後感なのか、そんなことを思わせてくれるのが「少女ファイト」なのです。

とても重厚な小説をというのはあくまで印象になります。ただ、この18巻はまさしく因縁の対決であることと、彼女達のぶつかり合いによる感情の爆発と心情の吐露がそう感じさせるのです。その吐露が非常に深く、思いも重く、彼女達の人生を表現しているのがそうさせるのでしょう。

心情の吐露に加えて、小学校時代の過去の出来事をクロスさせながらその思いの裏づけを表現しているのもまた上手く、本当にひとつのドラマを見ているようなのです。重厚な小説のようであり、しかし確実に映像が存在するメディアでしか表現出来ないものであり、そこに引き込まれる、その没入感が本当にたまりません。



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「いつもそうだよ練  お前が全部持っていく」



大石練に関わった人間はみんな何故か大石練に惹かれていきます。この18巻は殊更それを表現し、何故練が人を惹きつけるのか、惹きつけた人はどうなってしまうのか、どれだけ大きな影響を与えているのかが説明されていきます。

その影響で嫌悪してしまったり、憎悪を持ってしまったりしたのが今の青磁メンバーであり、小学校時代のチームメイトです。その彼女達とバレーを通して一人ずつ対話し、良し悪しは抜きにしてそれぞれの呪縛を一つずつ解放していきます。


そして影響で練に心を許し、その思いに、期待に応えようとしたのが今の黒曜谷メンバーであり、小田桐学です。図らずも同じ人間が与えた影響として結果が異なるというのは幸か不幸か。もちろんその当時の練の感情に揺さぶられた結果ですが、それは1巻から18巻まで紡がれた黒曜谷メンバーとの軌跡です。それはここまで読み続けた読者が一番理解しています。



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「もっとこいよ練!! 顔面なんかいくらでもくれてやる」


過去にはひたすら恨み憎んでいた小学校時代のメンバに、素直に当時のことを謝り、はたまた素直な心情を告げることでひとつずつ過去の呪いが解けていきます。こうなれたのも、黒曜谷のメンバと出会えたことと学に出会えたことが大きく影響しており、成長を感じることが出来てとても良いです。涙が出てしまう。



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「あすかが私を嫌いだという気持ち私がしっかり受け止めた  あすかが今もバレー続けてくれてうれしい」


例え嫌われていたとしても、相手のありのままを受け入れて許容する練はなんと人間が成長したことか。1巻の頃からは完全に見違えてます。

練に限らず、登場人物全員が大きく成長しているのもまた「少女ファイト」の大きな魅力のひとつです。その過程、そのきっかけを丁寧に描写してくれているので本当に心に来ます。この18巻の呪縛解放も同様です。



そして練の影響を一番大きく受け、メンバの中で特に成長した小田桐学の超絶カッコいい姿が見れるのもまた18巻なのです。


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このシーン、この流れるコマ割が本当に素敵で何度も読み返してしまいました。

これまでで間違いなく最強のレシーバーである亜莉に対して、直前まで目線を切らず、決めると決意した時にしっかりと相手を見据えたこの表情、この真っ直ぐな視線、表情に表れた思いが読み取れるのが極めて漫画表現なのです。この場面好きだなあ。



そんな流れで、異端中の異端、純然たる悪意として描かれたのが雨宮摩耶でした。呪縛が解けていく彼女達に対比するように、一切自身の思いはぶれずに自分の欲望のためだけに練を利用していきます。その依存はこれまでも、これからも。その依存の闇が底無しでひたすらに暗く、誰の光も届かないのがただただ可哀相になりました。

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試合終了後は彼女の動きによる怒涛の展開が繰り広げられ、その流れには開いた口が塞がらないほどの驚きをもたらしました。そこには彼女の思い、信念、闇、欲望全てが詰め込まれており、まさしく悪意の集大成です。何よりも、最後までぶれることなく、最初から一貫して悪として描かれ続けたのが見事でした。


さらにその後も、三國会長がこれまでどういう思いで活動をしてきたのかが明かされるなど、驚きの展開が連続してますます続きに目が離せなくなります。20巻で完結予定と聞いていますが、ここでこういう話を持ってくるというのはまさしくまもなく完結へ向かってるのだと思うとやはり寂しくなります。


16年以上の連載を通した彼女たちの成長は筆舌に尽くし難く、最初から読み直すとこんな嫌なやつだったなあとも思ったり。初期の頃のバレーに対する説明や練習に対する説明も丁寧だったし、何より人間の心情心理を描くのが非常に上手いので、何回読み直しても面白いです。是非とも最後までこのまま走りきっていただきたいところです。


尚、今回の特装版のおまけは作者作成のキャラ同人誌のため、Kindleでも特装版が販売されています。紙版はかなり品薄らしいので本にこだわりなければKindle版をどうぞ。

この18巻の通常版特装版の表紙、対比になってて凄くいいなあ。18巻読んだら尚更そう思える。どっちもほしくなる。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


少女ファイト(18) 特装版 (イブニングコミックス)
日本橋ヨヲコ(著), 木内亨(監修)
講談社 2022-01-21T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥1,210


少女ファイト(18) (イブニングコミックス)
日本橋ヨヲコ(著), 木内亨(監修)
講談社 2022-01-21T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥682