3巻までのギャグ全面に押し出すところから一転して、シリアスシーンが多くなり急激に面白くなってきた「何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?」4巻です。

4巻を読んで正直びっくりしました。シリアス路線を多く描画することでこんなにも面白くなるとは。それも全て、信長の強烈なキャラクターゆえなのでしょうか。

この4巻時点では、信長が何度も本能寺をやり直した結果、光秀が信長に立ち代り天下人となろうという状況になっています。さらに信長の残機は2で、あと1度しか時を遡れないという状況。そんな中、信長は遂に光秀の元に辿りつき、時をやりなおす為に必要な情報を集めるのです。

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そして、信長と同じ立場まで上り詰めた光秀は、その苦悩について、つまり天下人としてあるべき姿について信長と話をしたいと切り出します。この展開が凄く面白い。

「天下布武とは」「日の本を治め次に成すべきは」「生きる者全ての想いを受け入れ……その責務に胸潰れんとする時、如何にして面上げれば宜しいか」

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「アホウが そのように些末なこと 是非に及ばず」

歴史にIFがあったらとは歴史好きが誰もが通る道でありますが、まさか信長と対等に天下について語り合える光秀が、出オチでしかないと思っていたギャグ漫画で見ることが出来ると思いも寄りませんでした。

ここのやり取りが、本作のアホでギャグ寄りな信長とは思えないくらいカッコよくて痺れたのです。それはこれまでのアホ信長を見てきたからこその反動なのか、それとも元々信長という偉人が好きな自分だからなのか、定かではありませんが、実にこのやり取りがカッコよかったです。

何よりこの絵が上手いんだよなあ。ギャグだったゆえにそこまで気にして見ていなかったですが、こういうシリアスシーンでガッチリ描き込んだ絵がカッコいい。これくらい描き込むのは相当時間掛かるだろうけど、全体がこのテンションで読んでみたいものです。いや作画で命削ることになってしまうかそれは。

ストーリーもこれまでのギャグ調からうって変わって、天下人として悩める光秀と、思わせぶりなことを言う光秀を観察することで、ギャグではなく真にこのループを利用して天下人になろうという野望が無くなっていないのがグッド。

おそらく最終的な展開はギャグで落すのでしょうけど、そこまでは本気でシリアス展開すると面白いだろうなあ。しかもその流れでいけば、下手にずっとシリアスではなくなるので全体のギャグとのバランスも良くなるはずなんですよ。

良くありがちなのは、ギャグ漫画だったものが段々とシリアス展開になっていき、最終的にはほぼシリアス一辺倒だったりします。しかし本作は最初のストーリーベースがギャグスタートの為、それも上手く防げる構造になってるのがお見事です。ずっとシリアスだと息が詰まるし、初期のファンも離れてしまうしね。

うまいことギャグとシリアスのバランスを取り続けて盛り上げていけば、十分大物に化ける可能性を持つ作品だと思います。これはこの先も期待です。


「何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?」4巻からグッと面白くなったので、是非皆様にも読んでいただきたいところです。実は正直なところ、3巻時点で追うのやめようかなと思っていました。それが本当に良い意味で裏切られました。4巻買ってよかった。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


3巻までの感想はこちら (タイムリープ信長を出オチで済ませない立ち回り)
5巻の感想はこちら(歴史人物とタイムリープの組合せがシナリオと噛み合って面白くなってきた)
6巻の感想はこちら(歴史改変信長物語の面白さはゲーム感覚に通ずる)
7巻の感想はこちら(上杉謙信立ち塞がる)
8巻の感想はこちら(都合のいい展開を何度繰り返しても謙信が息の根止めに来るんじゃが)