こんな切り口があったのかと思い知らされる「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」です。

ここで読めます。

名作「北斗の拳」といえば、原作もさることながらパチンコパチスロで再大ブレイクを起こし、一気にそのスピンオフを雨後のタケノコの如く増やしまくっている程の大人気作品。

その新しいスピンオフが、誰もが想像しなかった特撮ドラマ世界で表現されました。何言ってるのかわかりませんね全然。私も何を言ってるのか理解できません。

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まさしくドラマ風景から始まるんですよ。

いやいやいや、「北斗の拳」って人が死んでなんぼの世界でしょうよ。アニメならともかく、実写でやるなら一体どれだけ死ぬだけの役が必要になるのか。そして人体の爆発をどうやって表現するのか。動物で再現するだけでも苦情が飛び交うこの時代、人間なんて実現しようものならひどいことになりますよ。

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特撮班頑張りすぎ。



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血を噴きだす為のパイプが絡んで事故が起きたからこそできたこの表現!

そうなんです、あくまで最初は爆発なんて想定していなかったという設定なんです。しかし撮影中に発生した事故による人体爆発。この偶然の産物を「北斗の拳」のメインテーマにするというドラマ現場ならではの機転。ここから全てが始まったかのように、後付設定をつけまくるのがこの作品の基本となります。

この後付に至る流れがいちいち笑えるのがすごいところ。
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「百裂拳だけじゃなくていろんな技がある方が面白いじゃねぇか!」という理由から生まれた「岩山両斬波」だったり。


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「実るさ…下に あの老人が眠っている」という名言の誕生秘話が俳優のアドリブだったり。

このように、あらゆる「北斗の拳」の設定がドラマを盛り上げるための演出を考えたら思い至ったということにして話が展開していくのです。

その流れが全てだからというのもあるのですが、そこが上手い。ドラマ撮影の彼らは勿論、現実の「北斗の拳」の実情は知らないわけです。だからこそ、1から「北斗の拳」を作り上げていく男たちの戦いという姿を見せてくれます。しかも特撮ドラマとして。

最初はこんなの出オチで終わるんじゃないかとも思ってましたが、これがどうしてしかしネタが途切れない途切れない。おまけに原作の細かいところに忠実なものだから、原作を知れば知るほど面白い。こんなパロディはなかなか無いです。

そして絵柄がホントに原作1巻2巻と同じような絵柄なのが凄い。再現シーン以外はあえてなのかわかりませんが少し似せてはいないところが、逆に演じているシーンなのかどうかを切り分けているようにすら見えます。

これ連載が長期化していって、原作の絵柄の変遷に合わせて変わっていったら面白いだろうなあ。というかそうせざるを得ない作りになっているような。


今のところ1巻ではシンとの戦いまでですし、Web連載もまだGOLANやジャッカルの話のところです。今から既にジャッカルのデビルリバースの巨体をどうやって表現するかや、フォックスが使う跳刃地背拳をどう演出するかが楽しみで仕方ありません。あとはレイがマミヤの服を切り裂くシーンをどうやって表現するかとか。

とにかく原作ファンであればあるほど楽しめる作りになってます。下手なパロディよりも数段レベルが高いものではないでしょうか。次巻も楽しみです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆

2巻の感想はこちら(同じネタの繰り返しだけではなく新しいネタの掘り下げ方が上手い)
3巻の感想はこちら(本当に実写ドラマの現場があったのではないかと錯覚させる傑作)
4巻の感想はこちら(トキかと思ったらアミバ!)


北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝 1巻 (ゼノンコミックス)
武論尊(著), 原哲夫(著), 倉尾宏(著)
5つ星のうち5.0
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