今年の夏頃にほぼ全巻半額セールを実施しており、一気に読みきってしまった「もういっぽん!」の15巻です。

読んだ当時、あまりにハマってしまって、思わず感想を書きたい気持ちを多いにかき立てられたのですが、中途半端な熱量では書けないなと思っているうちに新刊が発売してしまいました。

「もういっぽん!」は平凡な女子高生が中学で辞めようと思っていた柔道を、ひょんなきっかけで高校でも続けることを決めて、笑いあり涙あり喜びあり苦労ありの超熱い青春を過ごす柔道漫画となります。

何よりも、出てくる子達がみんな真摯に柔道に打ち込んでいて真っ直ぐで、悪人が一切出てこなくて、仲間を思う気持ちの強さやだからこその遠慮のなさだったり、対戦する相手校も互いに高め合う関係だったり、とにかく全てが優しいのです。読んでこんなに心が晴れやかになる作品もなかなか見受けられません。本当に素晴らしい。

そんな「もういっぽん!」の15巻は、2回目の金鷲旗が始まります。
金鷲旗高校柔道大会(きんしゅうきこうこうじゅうどうたいかい)は、毎年7月下旬に福岡県福岡市で開催される高等学校を対象とした柔道のオープントーナメントである。
※Wikipedia:「金鷲旗高校柔道大会」より引用
私も今年の東京オリンピックで柔道を見てから知るほど無知だったのですが、高校柔道三大大会の1つです。剣道の玉竜旗に対して、柔道の金鷲旗とも言われています。


「もういっぽん!」では1年目から金鷲旗に参加していて、2年目の今回が2回目です。しかも1年目ではたった3人で戦わなければならないところを、今年は1年生も入って正式に5人で戦えることに。主人公の未知が怪我で参加出来ないのは、3年目に向けての仕込みなのでしょう。

この未知が参加出来ないということを、去年の南雲にフラッシュバックさせることが本当に見事。
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「今キミがいる場所に去年は南雲がいた あの時の気持ちがあったから今の自分がいる」

1年目の時は柔道初心者だった為、選手としての参加は許されなかった南雲。歯痒い思いを持ちながら、チームメイトを全力で応援していく姿は素晴らしかったです。

そしてそれが、怪我の偶然とはいえ、未知が同じ立場となりました。南雲は去年の思いがあるからこそ今年があります。未知も今年は我慢の時。来年に向けてこの金鷲旗を全力で応援し、チームの士気を上げ、来年の、最後の金鷲旗への雌伏の時とするのでしょう。

もうダメだ、このシーンだけで泣いてしまった。今書いてる時点も泣いてます。なんでここまで心に響くんだろう。

この後の南雲の活躍もさることながら、未知が持つ南雲への信頼が本当に素晴らしい。小学生の頃からの友達である南雲のことをずっと見ていた未知。だからこそ、初めての金鷲旗参加で、柔道を始めてたった一年の南雲安奈が大活躍することをずっと信頼していたのも未知なんですよね。

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「南雲はず~っと…超本気(南雲安奈)!!!」

それに対して有言実行で次々と一本勝ちしていく南雲も本当に素敵。最高にカッコいい仲間です、こんなに頼りになる友達がいるのだから、未知達が全力で楽しく柔道を続けられるのも納得出来ます。


そして何よりもこの1年でさらに大きく成長したのが永遠。柔道は強いけどおどおどして自分の意思を表に出しにくい引っ込み思案で、でも未知と一緒に柔道をやりたいという思いは貫き通した彼女は、何よりも誰よりも、不動のエースとしての覚悟を持って金鷲旗に臨んでいます。
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「どんどん…頼ってほしいよ 自分の役割をきちんと果たせるように… エースとしてもっと成長したいから」

この表情ですよ。1年前では見せなかったような自信に満ち溢れたこの表情ですよ。この1年を通して、未知や早苗や南雲との関係を通して、誰よりも成長したのがこの永遠なのではないでしょうか。

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こちらも有言実行、エースとしての役割をきっちり果たします。本当カッコいい、頼れるエース。先鋒次鋒は2年の南雲と早苗が務め、中堅副将は1年の司と姫コが請け負うことで負けてもよい立場にしてあげて、大将の永遠が確実に勝ち切る。一番カッコいい立場だし、何よりも永遠自身がはっきりと自覚してエースとして振舞うのが素晴らしい。

このような成長や、仲間の思いには本当に弱いんですよ。みんな良い子だしお互いのことを心から思いやってるし。だからこそ単に甘いとかではなく時には厳しく接してるし。青春してるなあ。こんな青春送りたかったなあ。


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ライバルの立学の小田桐も怪我のため金鷲旗は辞退。未知と共に、試合に出たかった思いをぶちまけます。敵ながら、共に同じスポーツをする仲間として、同じ立場として、来年の最後の金鷲旗に向けて思いを募らせます。

同じ学校だけでなく、様々な学校の仲間と共に関係を作っていく未知が本当に素敵。その独特の空気感、誰とでもすぐに仲良くなれるコミュ力。これが一番「もういっぽん!」を大きく振り回すシナリオの中心なのです。未知がいるからこそ、この「もういっぽん!」が最高に素晴らしい作品に仕上がっています。良いキャラだなあ。


「もういっぽん!」は本当に優しくて、熱くて、感動出来る作品です。柔道に勝つことが彼女達の目標ですが、それ以上に何より、仲間と共に楽しんで成長していく姿が素晴らしいです。確実に名作となる作品でしょう。

それと、話もスピード感があって凄く読みやすいです。中学卒業から始まるのに、5巻くらいでもう1年目の金鷲旗をやってましたし、15巻で既に2年目の金鷲旗です。なので次へ次へとすぐ読み進めてしまいます。こういうスピード感が無い作品が多い昨今、少し珍しいかもしれないです。

何はともあれ、次巻もとても楽しみです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


16巻の感想はこちら(最高に熱い青春ドラマが眩しすぎる)
17巻の感想はこちら(全員の思いを一つにして挑む団体戦が美しすぎる)
18巻の感想はこちら(強者同士の思いをぶつける戦いが熱すぎる)
19巻の感想はこちら(既に次の金鷲旗を見据えて成長を続ける少女たちが素敵すぎる)
20巻の感想はこちら(4人が思いをぶつけ合う姿が青春すぎる)
21巻の感想はこちら(憧れの姉を越えて新たな目標を打ち出す姿が素晴らしすぎる)
22巻の感想はこちら(勝利を目標に据えた少女たちが魅力的すぎる)