超絶生首エンターテイメントを全力で発揮している「忍者と極道」7巻です。

6巻の感想でも触れたとおり、今のグラス・チルドレン篇で大きな転換期を迎えています。それは忍者(しのは)と極道(きわみ)の共闘、そして極道(きわみ)が忍者(しのは)を忍者ではないかと気付き始めることからです。

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「忍者(しのは)君…!! 教えてくれ「聞きたくない!!」君は…君は"忍者"なのでは…!?」
「極道(きわみ)さん…!! あんたは必ずオレが守る!! だが…だがよォ~ どうやって…!!?」

「忍者と極道」のストーリーに大いに関係している「フラッシュ☆プリンセス」をなぞるように、忍者(しのは)と極道(きわみ)の関係値が進んでいくのがホントに素晴らしい演出です。お互いが敵とは気付かずに築いてきた友情関係。敵という事実に辿りついた時、果たしてどのような心理になり、どのような行動を取るのか。今から既に非常に楽しみであります。

また、この時点では一方的に極道(きわみ)が気付きつつあるというのがまた上手い。忍者(しのは)はあくまで友人に忍者であることがバレてはいけないというだけなのです。ということは、極道(きわみ)次第で状況は変えることが出来るのですね。つまり今の時点では極道(きわみ)がどのような行動を取るかに注目が集まります。

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そして、このグラス・チルドレン篇、総理官邸の戦いでは、極道(きわみ)は忍者(しのは)は忍者ではないと思い込むことで、友人として忍者(しのは)を助けることにするのが本当に熱い展開。

しかも、忍者(しのは)は極道(きわみ)をかばうことによるダメージを負っていることと、極道(きわみ)はヘルズチケットを自由に使えないことから、どちらもハンデを背負った状態でグラス・チルドレンに立ち向かうわけです。強者が弱者として手を組んで、共通の強敵に立ち向かう構図というのは、王道ながら熱い熱い戦いです。

本当に、単純に破壊の八極道と帝都八忍の争いでなく、内部抗争だったり極道(きわみ)が手を持て余すグラス・チルドレンの暴走だったり、シナリオの組立てが上手いです。「フラッシュ☆プリンセス」と共鳴させながらの展開も相まって、グイグイ引き込まれるもんなあ。


しかもキャラ登場のさせ方も上手い。特に忍者側は1人1人話毎に出していくのではなく、一気にほとんどの忍者を登場させて、逆に敵側の極道を1人ずつフォーカスさせるというのがグッド。

帝都八忍と破壊の八極道のように数字が合っているものだと、よくあるのはそれぞれのライバル関係があって戦うということだと思うのですが、「忍者と極道」ではあくまで忍者(しのは)がメイン。夢澤のアニキは陽日と相打ちだったけど直後駆けつけたのは忍者(しのは)だし、殺島のアンちゃんは忍者(しのは)が倒してるし。

特にこのグラス・チルドレン篇の相手は忍者(しのは)因縁のガムテ。色姐のカタキであり、陽日が死んだ時の因縁の相手であり、唯一互いの存在が明確にわかっている相手。そんな相手の時に、極道(きわみ)と共闘することになるのだから、面白くないわけがないですね。

他の帝都八忍にもフォーカスは当たってますが、あくまでお膳立てだったり他の雑魚を蹴散らす役目に回ってます。このあとどうなっていくのかな。これまでの流れとしては、グラス・チルドレン篇でも忍者側が誰か死んでもおかしくないのだけど。今の段階ではどうあっても忍者は誰も死ななさそうな感じがします。

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確認した限りではガムテが初めて忍者(しのは)の名前を呼んだシーン。これまでの「タケノコキノコ」呼びから、明確に強敵意識を持った瞬間とも言えるでしょう。

そう、ガムテはこれまでのうち、忍者(しのは)として間違いなく最大の敵です。そして極道(きわみ)との共闘。おまけに8巻では最後の帝都八忍が合流しそうな雰囲気。おそらく、このグラス・チルドレン篇が第一部的な位置づけであり、この戦いが終われば話が大きく変わっていくと想像出来ます。

というのも、7巻でも残りの破壊の八極道が動き始めてるのです。
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1巻より、奥の方の4人は極道(きわみ)、夢澤、殺島、ガムテ。手前の4人がまだシルエットのみ。

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一番手前がおそらくこの極道。

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一番右がおそらくこの極道。

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右から2番めの長いドレッドヘアがこの極道。

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一番左の細身がこの極道。そしてこいつが極道(きわみ)が与り知らぬところで色々と画策しているように表現しています。よっておそらく、グラス・チルドレン篇の次の展開は、この極道が中心として話を展開していくのでしょう。


話もグラス・チルドレンの幹部が出てきて対決を進めたり、愛多間七総理達の話もグングン展開したり本当に読み応えがあります。特にヘルズクーポンをグラス・チルドレンから奪うものの、使用済みなので一瞬しか使えないという制限を設けたりしてるところも良い足枷になってます。

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宿敵として待ち構えていたガムテが忍者(しのは)に襲い掛かるところとか最高。

個人的にめちゃめちゃ良い展開だと思ったのは、最後のところで愛多総理がヘルズクーポンを使うシーンですね。初めて本当の素人がヘルズクーポンを使ったことになります。しかもそれは、ガムテから忍者(しのは)を守る為。最高の展開やな。


いやあ、どこを切り取っても面白い「忍者と極道」。グラス・チルドレン篇も佳境に入ってきたし、全体のシナリオとしてもとても大きな岐路に立っているし、ますます目が離せません。

それにしても、正直ここまでグラス・チルドレン篇が面白くなるなんて思いませんでした。巻数が進むごとに話が面白くなっていく作品なんてなかなか無いですよ。まだまだ「忍者と極道」熱は覚めませんな。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


6巻の感想はこちら(生首エンターテイメントはグラス・チルドレン篇で大きな転換期を迎える)
8巻の感想はこちら(グラス・チルドレン篇最高潮、ガムテと忍者の決着迫る)
9巻の感想はこちら(ガムテが主人公になりました)
10巻の感想はこちら(第2部スタートの狼煙が上がる極道革命)


 




おまけ:個人的に凄く好きな表現
一番最初に貼ったのですが、2人で対比して双方の思いを読める表現が凄く好き。
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両方の立場で、今何を考えているのか。それぞれの立場を表現しているのがとても面白いと思うのです。特に7巻の極道(きわみ)の表現は、冷静な思考の上に強調文字で自分の希望を上書きしているのがもの凄く漫画的表現だと思っていて、思考が混乱している姿をすぐにわかるのが非常に上手いです。気持ちがぶれているのがわかって素敵。


この表現、1巻でも似たようなものがあるんですよね。
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ここでも互いが思うのは忍者(しのは)のことで、敵対しているのに思う相手が共通という皮肉を表現しているのです。こういった2者による並列思考って他の作品であったかなあ?あまり見ない気がする。

「忍者と極道」という、明確な敵対者をストーリーの軸に表現していることと、ある意味ダブル主人公と言っても良いくらいに忍者側も極道側も魅力的に描いているからこそ出切る魅せ方だと思います。こういう表現が上手いからこそ、「忍者と極道」をより面白くさせてると思うのです。だからこそ、「忍者と極道」はやめられない。