「野人転生」は異世界転生ものにも関わらずノーチートノースキルで転生し、持ち前の空手技術のみで生き延びていくサバイバルです。その潔さが好き。あと露骨な人気取りの女キャラがほぼいないのも好き。もの凄く硬派。

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おまけに強さもネトゲさながらのレベルキャップあり。この世界の多くの冒険者がレベルキャップを突破出来ないがゆえに、それ以上の相手に対峙すること能ず。だからこそ、同じレベルで止まっている野人たちも例外でなく、幅が広がらない状態。こういうところをご都合やチートであっさり解決とならないのが「野人転生」の良いところ。

加えて、冒険者は人間だから味方というわけでなく、むしろ狩りやすい、手頃な冒険者は他の冒険者から狙われるというのがまた妙にリアル。
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ノーチート転生だからこそ、その世界が凄く現実的で、魔物を狩る冒険者のような集団がいるならそれは殺伐とするし互いを敵視して命のやり取りまでするわなというのが納得出来ます。ちょっと戦闘面では野人が上手く行き過ぎてるところはどうなのかと思う時もありますが、殺してもただではやられないとかなんだかんだ大怪我を負っているとかあり、野人もこの世界を生き抜く為に必死なのがまたグッド。

4巻ではそんな追われる冒険者達をゴブリン集落にぶつける話がメインです。この戦闘もゴブリン達が冒険者よりも戦い慣れしているのがまた妙にリアル。たかがゴブリンと格下に見ている冒険者達が足元をすくわれているのとか、集団戦ゆえにやられたりしているのが妙に現実的。命のやり取りになったら死に物狂いで戦う方が強いことを、まざまざと見せ付けられます。

たぶん、「野人転生」を面白いと思うところはこういうところなんだよなあ。何でも出来る異世界ではなくて、何が何でも生き延びるという意思が無いと明日の朝日すら怪しい異世界。ご都合主義なレベルアップなどなく、ひたすら地道にトレーニングしなければならない異世界。

これってつまり、異世界で魔物相手でなくても、十分に面白い要素なのだと思います。ただ、歴史上のある時代とかを使うと歴史背景の考証が大変だし、かといって現代の話にしてしまうと法の話だとか武器や兵器の話がついてまわってしまうし。格闘に絞ると結局格闘漫画になって命のやり取りとかそういうところ難しいだろうし。

そういう意味で、世界観や人間の人生観の設定を都合よく決められる異世界というのがちょうどいい舞台だったのではないかと。無法でも全然ありですし、出したければ法に従った国家や軍隊を出せばいいだけです。なるほど、ファンタジー世界というのはこういう意味で都合がいいのだな。現代劇にするとリアリティとか難しいものな。

そんな硬派な異世界もの「野人転生」4巻でした。面白いのだけど、展開がちょっと遅いかな。レベルキャップの話が3巻で出てきて、まだ解決してないし。次も期待します。


眠気覚め度 ☆☆☆

3巻までの感想はこちら(ノーチートノースキル転生で生き残れ)
5巻の感想はこちら(第1部完ッ!!)
6巻の感想はこちら(第2部スタートで早速追われる野人が最高)
7巻の感想はこちら(人の悪意に巻き込まれまくる展開が最高)


野人転生(4) (電撃コミックスNEXT)
小林 嵩人(著), 野人(その他)

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