どうしてこの作品がたった6巻で完結してしまったのか。good!アフタヌーンの中で一番好きだった「半助喰物帖」の感想です。打ち切りなのかなあ。面白かったんだけどなあ。
※2021/08/31追記:終了したのは作者の意向とのこと。

慶応2年(1866年)からひょんなきっかけで現代に来てしまった楢原半助。彼が21世紀の東京で食に舌鼓を打ち、現代の食に触れつつ調理していくというのが基本のお話です。

この現代に来てしまった幕末の武士が好奇心を持って様々な食事に巡りあうというのが可愛くて仕方ないんです。ホント読んでて微笑ましい。あれやこれやに驚いたり、幕末時代の食事や文化と比較したりと読み手のこちらがニヤニヤしてしまいます。

この構成どこかで見たことあると思ったら「テルマエロマエ」ですね。「テルマエロマエ」も現代日本に来てしまっていちいち文化に驚いたり比較したりするのが面白いところでしたから、同様の構成なら面白くないわけもなく。ただ、「半助喰物帖」は元の時代に戻ったりはしないので、そこが大きな違いかと。

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冷蔵庫に驚く半助。

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コンロに驚く半助。

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出汁の素に驚く半助。

この流れが良いんですよ。好奇心が強くて異文化も容易に受け入れて、ただ美味いものを食べたいという半助さん。なるほどこれは周囲の人間に受け入れられるのも理解できます。

そんな半助が、ひょんなきっかけで出会った香澄殿の部屋に居候することになって、台所番として様々な料理を作っていくのです。面白くないわけないんだよなこんなの。

出てくる人達も悪人がいなくてみんな協力的だし、何より現代の東京に馴染んでいく半助さんもまた可愛い。加えて、安易に香澄さんと恋仲になるみたいなラブコメ展開が無いのが非常にグッド。あくまでストイックに幕末武士が現代社会に溶け込む姿を描いたのに好感が持てます。

まあ、そのため大きな盛り上がりに欠けているというのも否めないところでもあります。だけどこの作品はそこがいいところなのです。常に安心して読めます。「甘々と稲妻」もそういった感じだったので、安定して同じことを繰り返すというのはそれだけで貴重なのです。

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スーパーに行くだけで感動できるなんて今では子供しかいないじゃないですか。スーパーに行くだけでこんな反応してくれるならどこでも連れてって上げたくなりますね。それくらいこの半助さんは可愛い。

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そしてちょんまげのまま立ち食い蕎麦食べてるんですよ。こんなの設定だけで面白いに決まってます。しかもこのあと蕎麦に美味くないと文句を言う始末。素直でよろしい。

というわけで、個人的には非常に好きな作品だったのですが、10月に発売する6巻で完結してしまう「半助喰物帖」でした。うーん惜しい、もっと読みたかった。


眠気覚め度 ☆☆☆☆

半助喰物帖(1) (アフタヌーンコミックス)
草香去来(著), 灯まりも(著)
5つ星のうち4.5
¥660

半助喰物帖(5) (アフタヌーンコミックス)
草香去来(著), 灯まりも(著)
5つ星のうち4.8
¥660