続刊が楽しみで仕方なかった「ジャンケットバンク」の4巻です。

やはり面白い。発売日に日付が変わったと同時に電子版が配信され、寝る前に少し読もうと思ったらまずジャックポットジニーのルール等を思い出す為に3巻を読み直し、3巻を読み直してたらサウンドオブサイレンスの話を読み直したくなりもう一度読んで、おまけにジャックポットジニーの話を2回繰り返して読んでしまったので一気に睡眠不足となりました。

4巻はジャックポットジニーの決着までが収録されています。意外と珍しいですね、次の巻へ引きをつないだりしないケースは。なので、初めて読む人も4巻まで読めばキリよく読めます。たった4巻なのでお買い得!

さてさて、そのジャックポットジニーのお話です。正直読んでる最中はそこまで面白い駆け引きでも無いなと思っていました。ただとにかく、最終結果が全く想像していなかったことであるのが凄かったです。その為にすぐ2回目を読み直してしまいました。

ジャックポットジニーのルール自体は単純明快。6枚のカードを出し合ってお互いの金貨を増やし奪い合い、最終的に金貨の総量が多いほうの勝ちです。
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6枚の内訳は以下のとおり
  • 4枚存在する金貨のカードは手持ちの金貨を4倍にする
  • 1枚存在する盗賊のカードは相手の金貨を50%奪う
  • 1枚存在する魔人のカードは相手が盗賊のカードを出した時だけ、相手の金貨を90%奪う
この6枚をEカードのように1枚ずつ出し合い、これを3セット実行した時の金貨総量で決着が付きます。もしくは、対戦相手が死亡したら当然生き残った方の勝利です。

また、敗者は手持ちの金貨を頭上から全て被ることになります。単純に金貨のやり取りがなくても、1枚スタートの4の12乗で1667万7216枚の金貨が降り注ぎます。まさしく絶対絶命。

と、このようなルールですが、90%の手札がある時点で3ラウンド目にそれを実行出来れば勝ちなわけじゃないですか。なので最終的にそれをどうやって引き出すかの駆け引きになると予想していたのです。

そして真経津は対戦相手の雛形に一方的に負け進みます。見る見るうちに溜まっていく雛形の金貨に対して、御手洗くんは「このラウンドで魔人を当てられないと差は開く一方だ」だとか一生懸命「今回の手札はこうだからこの形にしないと真経津は勝てない!」とか解説ばかりします。まるでカイジのよう。

読んでるこちらとしては、いやいや、魔人を当てるかどうかのゲームでしょこれ、という気持ちで読んでいたので、この解説が凄く滑稽に見えてしまって。だからそんなに面白くないなと思って読んでしまったんですよ。

しかし途中から、真経津が明言していくのです。「殺す」と。
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「ボクは君を殺すよ」

これがどうもずっと噛み合わなくて。敗者には持ち金貨が降り注ぐわけで、最後の最後に90%も奪ったら殺すまで至らないのかなと。怪我で済むとかなんじゃないの?と。そうなってくると、90%奪うのではなく、50%を奪ってギリギリ辛勝を狙ってるのかなとも思い始めるわけです。

そんな中、対戦相手の雛形も良い顔してくれるのです。
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気持ち悪いなこの顔w

この雛形も生粋のギャンブラー。特に相手が負ける姿に喜びを見出す、金ではなく自分の心を楽しませるために相手を破壊することが出来る異常者。そういえば田中一行が描くキャラって、金なんて二の次で自信過剰で相手を痛めつけて快感得るキャラばかりだな。だからこそ人間臭くていいのだけど。

そんな雛形と勝負を続けていきます。しかしなんと第2ラウンドも完敗。取り得る限り最大の金貨を雛形に支配されることに。読んでる身としては50%か90%の決着だろうと思っていたので、予定調和だなというところでした。

そして最後の第3ラウンドです。最後の最後で大どんでん返し。負けたら死ぬ勝負なので真経津が負けないのはわかってるのですが、その勝ち方がちょっと予想出来ないもの過ぎて。作中でも真経津以外が全員唖然となっていて全て真経津の掌で転がされていた状態でしたし、読んでるこちらもそんな状態になりました。

いやいや、あんなのホント想像つかんて。で、1回読んだ後にもう一回やり取りを全部読み直すと、真経津は終始一貫してそこに向けて勝負しているのがありありとわかるのです。ホントこの流れが面白い。「エンバンメイズ」でも似たような快感を何度も得ましたが、「ジャンケットバンク」でも同様の快感を与えてくれる田中一行先生は名手ですね。天才の領域。

さすがにネタバレしては読む人の面白さを損ねてしまいますから何も結果は書けないところですが、ヒントだけ出しておきます。
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「なんで勝利条件に「対戦相手の死亡」なんて入ってる?」

そもそもこの「対戦相手の死亡」は、サウンドオブサイレンスでも似たようなことを言っていたし、「エンバンメイズ」でも同じ表現が毎度出てたのでサラッとスルーしていました。だとしても、この台詞だけでは決着方法の推測は難しいはず。それくらい度肝を抜かれました。

いやホント面白いなあ「ジャンケットバンク」は。「エンバンメイズ」が大好きだったので似たような話をずっと描いて欲しかったのですよ。それがこんな形で叶うなんて。しかもグフタからヤンジャンに移ったことでさらに注目浴びるだろうし、もっともっと人気が出て欲しいところです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


3巻までの感想はこちら(大金を持つ銀行は最高の賭場になり得る)
5巻の感想はこちら(閑話休題でも一切手を抜かないギャンブラー達)
6巻の感想はこちら(またもや驚きの結末を迎える「アンハッピー・ホーリーグレイル」戦はこの巻で全て読めます)
7巻の感想はこちら(一皮剥けた御手洗くん篇)
8巻の感想はこちら(話の展開が全く見えなくなってきました)
9巻の感想はこちら(ヒーローズジャンケットがギャンブラーと銀行員を大きく動かす)
10巻の感想はこちら(ライフ・イズ・オークショニアはジャンケットバンク史上最大の面白さ)