20代未満の少年少女が数学力を競う数学オリンピック。2021年の数学オリンピックでは日本人が金メダルを獲得しています。文武両道の内、スポーツのオリンピックを武とするなら、この数学オリンピックは文の頂点と言えます。その数学オリンピックをテーマに描く熱血物語が「数学ゴールデン」です。

この作品、間違いなくスポ根ものと言えます。それくらい、主人公 小野田春一 の熱意が凄い。高校入学時点で既に数学オリンピックへ挑戦することを明言します。
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この目標を達成するために、あらゆる努力を惜しまず続けていくのです。時には挫折を味わい、時には自分が単なる凡人であることに気づかされ、上には上がいるということを思い知らされます。しかし、高校で新たに、共に数学オリンピックを目指す仲間を得ることにより、次へ次へと成長を見せ頂点へ上り詰めようとしていきます。この姿こそ、まさしくスポ根でしょう。テーマが数学なだけで、中身は激熱の成長譚なのです。

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「数オリってな こんなもんいっぱい理解して抱えて挑んでいくんだ。すげぇ難しい問題ばっかでさ まいっちゃうよ。どうやって思いつくんだって柔軟な発想も必要でさ でもそれ思いついたらさ すげぇ気持ちいいんだよ!絶対っ!」

こんなに数学に思いを馳せる高校生、見たことがありません。難しくて、わからなくて、でも問題が解けた時の快感が忘れられなくて、だから次々と数学の問題が解きたくなって、またわからなくて。その繰り返しだけど、それがやめられない。数学が好きでしょうがない。だからこそ、数学オリンピックに出たい。これまでは友達もいないし数学のことしか考えてこなかったし、自分が単なる凡人であることに気づかされてしまうし、でもやっぱり数学が好きだからこそ、それに向き合いたい。こんな熱い主人公がカッコいい、たまらない。うむ、間違いなくスポ根だ。

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「手強ければ手強いほど 逆に燃えてくるんで」

例え凡人と気づかされても諦めない。どんな問題だって解いてやりたい。解く時の快感が忘れられないから、それを解くことが好きで堪らないから。カッコいいなあ。これだけひとつの物事にこだわることが出来るのは本当にカッコいい。熱いスポ根が読みたい人には本当にオススメです。

話としても、共に数学オリンピックを目指す仲間と出会い、様々な問題を解いていくその勇姿や、仲間たちとの掛け合いも成長が徐々に見れてたまりません。何より登場キャラのほとんどが数学に極めて真摯に取り組んでいて、変な寄り道が一切無い。それゆえに展開も早くてテンポよく読めてしまいます。

それと数学に興味ない、もしくは苦手という人でも、そこまで多く数学問題の内容には触れていないので安心して読めますね。そもそも数学オリンピックの問題自体が大学入試レベルだとか東大の数学科レベルだとかで、問題出されても全然解法など思いつきません。よっぽど数学やってこないと無理ですあれは。もう少し勉強しておけばよかったなあと色々考えてしまいます。

読んだ感覚としてはFLIP-FLAPが近いかなと思いました。FLIP-FLAPも恋愛のためだったはずのピンボールが目的になってしまうスポ根ものでした。あれは良かった。


眠気覚め度 ☆☆☆☆

FLIP-FLAPの感想はこちら(FLIP-FLAP - 恋する相手と付き合うために始めたピンボール、次第にそれ自体が目的になる!)



 
FLIP-FLAP (FUNUKE LABEL)
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posted with AmaQuick at 2021.07.27
とよ田みのる(著)
5つ星のうち4.8
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