逆うちで感想を書いている「ハコヅメ」13巻の感想です。大きな話は無いのですが、ちょこちょこ今後の布石を張っている巻ですね。だからこそ、当時は面白いけれどもそこまでグッとくるほどではなかったというか。あとから読み直すと思わず「おっ」と思うような展開があったりで読み直し推奨です。

で、その布石の最たるものがアンボックスの事件にもなったカップルが初登場することですね。20210720_003
いやいや、これを見た瞬間、どうして自分はこれを覚えておらずにアンボックスを読んでしまったのか後悔してしまいました。アンボックスでも、これまでに何度も110番通報されたカップルという位置づけでしたが、この13巻の時点で初登場(だよね?)なのに2話も出てくるほど主張しているのです。この2人がここで出てることを覚えていればアンボックスでも更に感情移入が深まっただろうに。それこそ作中のキャラと同様にこの2人のことを思い、その辛さを共有できたのではないかと。これからアンボックスを読む方はこの2人を忘れないようにしましょう。

布石の2つ目としては、猿渡署長の就任と源家の話です。こちらは14巻、15巻の奥岡島事件と密接に関わってきます。この話は警察官もひとりの人間であるということと、警察官家族の思いというものに触れて、こちらの心を抉っていきます。だからこそ印象に強く残り、しかも14巻から続きの話が触れられるので忘れることはなかったです。
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「知らないよ 腰抜けでもなんでもいいから 私は生きて帰って来て欲しかった!」
痛切ですよね、この台詞。仕事とはいえどうして旦那が見ず知らずの人間の為に死ななくてはならないのか。常に危険と隣り合わせの警察官だからこそ、殉職という悲しい結末になってしまう人もいるということを泰三子先生は訴えたいのでしょう。このように描かれると、どうしても意識せざるを得ない。コメディの中にこういうシリアスを混ぜてくるからこそ、ハコヅメは面白い。

そして13巻では如月部長が町山署に配属されてレギュラーメンバーに昇格します。初登場は知能犯係所属でイケメン優秀の完璧超人でしたが、再登場3ページ目でAV8段を持っている話が登場したり、13巻では方向音痴が露呈したりと、弱いところを次々に見せます。14巻以降では自分の力を全く信用しておらず、源に嫉妬すらしている心情まで描画しています。こういう人間の弱さを見せることで、警察官はやはりただの普通の人間であり一般人と何も変わらないコンプレックスを持っているということを表現しているのだと思います。ハコヅメの良いところはスーパーマンなどいなく、必ず長所があれば短所も同じくらいあるというキャラ設定にもあるかと。人間臭いキャラだからこそ親近感が沸きます。

如月部長といえば13巻で振り込め詐欺のチラシ活動の話があります。ドラマのハコヅメ3話でもやったところですね。この話をもうドラマで使ったのであれば、如月部長もニカチョーくんも出てこないんだろうなあ。まあ、カナが出てない時点で生安の話はないだろうし。。。

川合先生の似顔絵講座も引き続き出てきます。今回は男子中学生が性的被害にあった事件の似顔絵になりますが、似顔絵メインというよりも性的被害者の聴取という側面です。そのやり取りが、読んでいて非常に切ない。
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「経験の浅い私にもわかる この子は 悲しい被害に遭っている」「説明の仕方が「大きさや形」じゃなくて「質感」…」
性的被害者は身体以上に心が傷つけられており、被害のことなど説明したくもない。ましてや、自分がされた性的なことなど、思春期の少年に取っては口にもしたくない。だけど犯人確保のために警察官は聴取をしなければならない。そんな矛盾に立ち向かうのもまた警察官の使命であることを教えてくれています。本当に、こういうシーンは見る度に切なくなります。

こうして読み返すと、大きな話はなくとも1話1話がやはり丁寧で読み応えがありますね。常にレベルの高いハコヅメは本当に素晴らしい。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


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