アンボックスから引き続き逆打ちでちょこちょこ読んでる「ハコヅメ」14巻です。山田が草むらに放たれた精液の匂いを嗅ぎ分ける話があったり、源と聖子ちゃんの不思議な関係が読み取れたり、いよいよ奥岡島事件の過去話が始まったりする巻となります。半分は奥岡島事件絡みですので、14巻と15巻を合わせて読むのがオススメです。

山田の精液嗅ぎ分け事件はホント傍から見るとくだらなくて笑えて最高。もちろん事件の被害者の立場や警察の苦労を考えたら笑ってる場合ではないのでしょうけど、それをこうして笑いに昇華出来てるのが相変わらず上手いなと思います。「精液ついてもいい格好で行けよ」とか警察じゃないとまず聞かない台詞でしょう。

そして肝心の山田は「オッサンのニオイで精液のニオイが消えました」とか「藤部長の良いニオイで気が散って精液のニオイに集中できません!」とかホント何言ってんだこいつ感漂ってるのにクソ真面目に話してるだけというアンバランスさが面白くて面白くて。

その後始まる「奥岡島事件」関係のお話。前村孝三が平然と警察署内を歩いて署長室に案内してもらってるのを見て、一般人が普通に中歩けるものなの?と思ったり。この時の前村孝三の顔の変化がホントすごくてなあ。見ただけで違いや変化がわかる漫画だからこその表現が実に上手い。結構オーバーに顔を描きかえるから尚更わかりやすいのですよ。そういうところはやはり漫画の技術、素晴らしい。
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こうしていつも通りみんなのアイドル副署長もいじられるし。この川合の一言が上手すぎるんだよな。それに対する副署長の返しも完璧だし。

あとこの話、この118話だけでも、文字がメチャメチャ多いのに全然苦も無く読めるのがスゴイ。なんでなんだろ、ひとつひとつの台詞が短いから?それともシリアスとコメディがテンポよく繰り返されるから?こう、読んでて現実にありそうな会話が繰り返されるから、まるで掛け合いを見てるかのようにスッと入っていくのですよ。キャラが立ってるからこそ出来ることでしょう。こういうところの上手さがハコヅメの面白さにも直結するのだろうなと改めて思ったり。

続いて災害に備えての警察署待機のお話。とはいえ待機なので溜まった仕事をこなしたり机で寝たりをするだけというなかなか過酷な待機。そんな中でもオッサンはどこでも寝る技術を身につけてるという話が秀逸。
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南係長の机に乗ってしまうのはまあまだわかるとして、西川係長の死体寝するところとか北条係長の諦めて床で寝てるとかが、こう年季というものを感じられるのがまた。そのあとの山田の「いろんなオッサンの生態が見られるな」という失言もまた面白い。

そして14巻の最高潮といえばラストに出てくる奥岡島事件過去話で描かれた、虎松譲二が源父と鬼瓦教官に実行した「逆問」の話でしょう。逆問は尾行中の刑事が逆に対象者からしゃべりかけられることです。虎松譲二の尾行中、気づかれそうになって喫茶店に入ったのも束の間、逆に虎松譲二が喫茶店に入ってきて絶体絶命になるのですな。

この「逆問」のやり取りが、本当に緊張感があって読んでるこちらがドキドキしてしまうほどです。地の文は鬼瓦教官の視点で描かれるため、虎松譲二の言葉と源父の言葉と、それに対してどんな行動を取ればいいのか悩みながら考えていくところが読み取れます。これが、新人の鬼瓦教官の立場と警察官のことをよく知らない読者の間でマッチングするわけです。だからこそ、鬼瓦教官の立場でドキドキビクビクしながら読み進めることが出来てしまう。本当にこういう見せ方は上手い。

そのやり取りがまた凄まじく、飲み物を注文するだけでも様々な状況を想定して動くのです。「冷たいものを頼んだらガラスのコップで来るかもしれない。ガラスは割れば凶器にもなる」とか、「ホット紅茶の提供温度は100度くらい。コーヒーが60~70度。飲み物をぶっかけられる危険性を考えたらコーヒーにしたほうがよかったのでは」とか。そのあとさりげなく紅茶にオレンジジュースを入れて冷ましたりとか。何せ犯人が隣にいるわけですから、緊張感漂いまくりなのです。その上でのこういった読み合いとか面白くないわけがない。ここはホント必見。14巻の最大の見所です。

というわけで、つまらない時が全くないハコヅメは14巻でもその面白さが健在です。バケモノだよこの作品は、読まないのは本当に勿体無い。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


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