宗教という概念が無い異世界、そこで宗教戦争を勃発させるのが「神無き世界のカミサマ活動」です。異世界ものの中では異色系の作品と言えると思います。これがなかなか面白い。

まず舞台となる異世界には魔法という概念はありません。そしてありがちなスキルだのレベルだのの要素もありません。当然修行がどうのこうのも無ければ、ギルドに登録してハンターランクがみたいな話もありません。まずここが新鮮。

そして世界観としては、単に文明レベルが低いだけでなく、宗教どころか神という存在もありません。おまけに性欲という概念も無く、命じられたら生殖活動を行い人口を増やし、命じられたら死ぬという世界です。なんともいびつな世界。

そんな世界に来たのは、現代の新興宗教教祖の息子に生まれてしまった卜部征人。新興宗教の「産霊の儀」という、三日間水中に沈められる儀式の結果命を落としてしまいます。その時に願ったのが「神も宗教もない世界に生まれ変わりたい」ということ。
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こうして、本当に神も宗教も無い世界に転生してきます。前述した通り、本当に宗教も無い世界なので、征人の望みどおりの世界です。その世界を堪能するのですが、異世界で仲良くなった相手が命令に従って死を迎えることに抗おうとすることで、新興宗教として崇めていた神が降臨することとなります。

ここからがこの作品の真骨頂。この神が他の異世界ものでいうところのチート能力を使えるのですな。ただし使用には制限があって、神にどれくらいの信者がいるかが能力を使用できることの指標となります。村の仲間たちを救うため、神の信者を増やして、死の命令に抗おうとするのです。
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と、ここまでが最初のお話。このまま宗教活動を始めて信者を増やして国に逆らえーみたいな話だと思うでしょう。が、違うんです。この先が本当のメインの話になるのです。

それは、神となりえるのは征人の宗教であるミタマだけでなく、この世界に存在する他の神という存在も出てくるということ。それらが同時に動き出し、宗教活動および信者集めをスタートすることとなります。つまり、新興宗教同士の宗教戦争が勃発するわけです。この設定が実に面白い。

異世界ものとはいえ、単にチートでおれつえーするのではなく、むしろ周りの神の方がやり手でどんどん勢力を広げていく様がいいですな。敵は強い方が読んでて面白い。

また、宗教が元々無いということと、飢饉だったり災害だったりが目立って発生しているわけではないので神に対する求心力がそもそも無いところから信者を集めなければならないというあの手この手もいいですね。まだ出てきていませんが、おそらくそのうち人心掌握するためにどういうことをするのか等も出てくるのではないでしょうか。そういったアプローチはあまり見たことがないので新鮮です。

絵はそんなに上手くはないのですが、笑えるようなネタもあり全体的に明るい展開なので読みやすいです。それよりもストーリーが面白いのでグイグイ読んでしまいます。まだ3巻までしか出てないので、読み始めるなら今のうちかと。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


4巻の感想はこちら(宗教と熱狂は紙一重)
5巻の感想はこちら(宗教の最小単位は家族)