2021/05/19に第3巻が発売されました「ジャンケットバンク」。
私が全力で推している「エンバンメイズ」の作者、田中一行の新作となります。
掲載誌は講談社から集英社のヤングジャンプに移ったものの、内容はエンバンメイズを大いに継承しているかのような他に類を見ないギャンブル勝負となっています。


カラス銀行中央支店勤続2年目「御手洗 」は異動命令が下されて「特別業務部審査課」通称”特四”に配属されます。当日に案内された先はどこかというと、、、
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厳重にロックされた銀行の地下深くへ潜り込んでいくことになるのです。
下りていくその先には、
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開かれたギャンブル場が存在していました。

そう、大金を抱える銀行ならではの銀行賭博が繰り広げられています。
"特四"とは彼らのギャンブルを公正中立に審査し、確実な取立てをする特殊な課なのです。
この設定だけでいうと、「エンバンメイズ」のヤクザが取り仕切るダーツ賭場とあまり代わり映えはしていない感じですね。エンバンメイズもヤクザならではの確実に取り立てるというスタイルだったし。


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公平中立、それが一番大事。

そんな設定なのでまあギャンブル漫画よろしくで負けたものは自分の金歯を買い取ってもらおうとしたり、目を指差して札束をちらつかせたり血生臭い表現もあるわけです。
ただこの作品はカイジのようにどこにでもいそうな素人がギリギリの戦いをしていくものではなく、ある超人的な主人公の活躍を追いかけるものとなっています。

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その主人公が「真経津 」。この銀行賭博に来て日が浅い彼と御手洗が出会うところから物語は始まるわけです。

この真経津がもう超人的。全然隙を見せなくて、ひたすらにギャンブルセンスがよくて、毎回最後にはギャンブルに勝利していきます。
なので、基本的には新しいギャンブルに対して真経津がどうやって勝つのかを読み進めるものなんです。この形は「エンバンメイズ」も同様で、あちらも主人公の烏丸が超人で全然隙を見せなくて勝負センスが良くてどんな勝ち方をするんだろうというのがメインでした。
ということは、「エンバンメイズ」が好きなら「ジャンケットバンク」も好きにならないはずがなく。

クセとかも真経津と烏丸で似たようなイメージ持てるように作ってるんですよね。
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ジャンケットバンク:真経津がルールを聞いて理解する時のクセ


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エンバンメイズ:烏丸がルールを聞いて理解する時のクセ

前からずっとこの「びびびびびびびび」が好きだというのは言っていたのですが、それと同じような「トントントントントン」があるだけでもう垂涎です。



おまけにトドメのキメ台詞もお互い持っていたり。
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ジャンケットバンク:「鏡の中に君を助ける答えはない」


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エンバンメイズ:「そこが行き止まり(デッドエンド)だ」


正直烏丸の方がまだまだカッコいいなという感想は置いておいて、やはりジャンケットバンク自身がエンバンメイズを意識した作りをしているのだと思います。エンバンメイズ面白かったもんなあ。あれがたった6巻で終わったのはいまだに信じられない。

そんなジャンケットバンクの真経津なのですが、先に書いてしまったように個人的にはまだキャラが弱いかなと思ったりします。というのも、エンバンメイズの烏丸と比較してしまうとどうしても個性が弱いというか。真経津がまだ無名のギャンブラーであることに対して、烏丸は迷路の悪魔という異名を持つ強者として最初から描かれていたのがまず大きいのかなと。
加えて、真経津は基本大人しいのがなあ。烏丸が割りとお調子者で熱に上がりやすくだけど最後は冷静に勝利するというスタイルだったのでちょっとキャラが弱いのかも?比較してしまっては駄目かもしれないですが。


とはいえ、エンバンメイズをなぞるだけの作品では当然ありません。その差として大きいのが冒頭の御手洗の存在です。真経津が感情の起伏に乏しく大人しいのに対して、御手洗が感情を出して驚いたり焦ったりとドキドキハラハラ感を演出していきます。しかもグッドなのが、この御手洗もギャンブルに関わるべくして狂っているのがたまらんのですよ。
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田中一行が描く作品は通常時と違う、ここぞという時の絵が抜群に破壊力あっていいですなあ。その表情からどんな心境なのか読み取れるのがすごく素敵。エンバンメイズのびびびびびも大好きだけどこの御手洗くんの顔もホント素敵。人目で狂ってるのがわかってホント素敵。


というわけで、エンバンメイズと大きく異なるのは、ジャンケットバンクは御手洗と真経津のバディ物だったということだったのです。これは3巻で明確になりました。
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真経津が次のギャンブルをするためには、担当となった御手洗くんが他のギャンブラー担当を持つ担当員と直接交渉してまず勝負を成立しなければなりません。すなわち画像の通り、ギャンブラーではなく担当行員がギャンブルの場を設けなければならないのです。

そして実は、この銀行内でのやり取りというのがジャンケットバンクの真髄なのです。
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銀行内の"特四"では無能を排除するためのシステムとして「勤続年数(キャリア)」を通貨としてやり取り出切ることとしています。これを交渉に用いて勤続年数を稼げば、それが正当な評価となるのです。
この建前として「年功序列を重んじて、その勤続年数自体を評価に繋げる」という発想が実に面白くて上手い。ギャンブラーは金で自分の立場を、銀行員は勤続年数で自分の立場を確立するのですな。

そして前述の通り、担当行員は他の行員とギャンブルの場を設けなければ、ギャンブラー自身はギャンブルすら出来ません。そしてギャンブルの場を設けるためにはこの勤続年数を支払う必要があるということです。
つまり、御手洗くんが真経津にギャンブルをしてもらって最終的に盛大に負けてもらうためには、御手洗くん自身が銀行内で成り上がらなければならない、これが面白い。
正直、ギャンブルそのものよりもこっちのやり取りや紆余曲折の方がずっと面白いと思ってしまっています。その辺り、正式に配属されてチームメンバとのやり取りが2巻で始まるのですが、もう熾烈苛烈でたまらんのですわ。


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先輩からの先制攻撃。配属初日の仕事に必要な情報を勤続年数3ヶ月分で売ってくれるゾ!

この御手洗サイドの話もあるのがエンバンメイズと大きく異なる点なのです。正直御手洗側のテーマだけで別の作品描けるんじゃないかというくらいこの設定がしっかりしてます。
しかも御手洗くんは配属新人の立場で疑問点ばかりの読者と同じ目線で進むので実に読みやすい。そこから御手洗くんの手腕であれやこれやと成り上がっていくのもまた爽快。ジャンケットバンクはギャンブル描写中心ですが、それを裏打ちした面白さというのはこの銀行員である御手洗サイドにあるのではないかと思うわけです。


というわけで、ただのギャンブル漫画と思いきや金だけではなく勤続年数もギャンブルになり得るジャンケットバンクはまだまだこの先も楽しみです。3巻でいよいよ銀行内の派閥争いみたいなものも開始されたし、ギャンブラーのレベルも上がっていってこの先どんなギャンブルが行われていくのかも大いに楽しみです。次巻も待ち遠しい!

エンバンメイズは6巻で終わっちゃったし、概念ドロボウも3巻で終わってしまったのでジャンケットバンクは長く続いてほしいところ。ヤンジャンでやってるからもっと日の目浴びて人気出ていいと思うんだけど、どうなんでしょ。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


4巻の感想はこちら(まさかの決着方法に脱帽のジャックポットジニー篇完結)
5巻の感想はこちら(閑話休題でも一切手を抜かないギャンブラー達)
6巻の感想はこちら(またもや驚きの結末を迎える「アンハッピー・ホーリーグレイル」戦はこの巻で全て読めます)
7巻の感想はこちら(一皮剥けた御手洗くん篇)












おまけ:この御手洗くん最高の顔してる。
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