「醜い。」

序盤のギャグパートはいつの間にか消えうせ、すっかりシリアスな雰囲気になってきた「Helck」ですが、
この5巻では95%シリアスパートだけで構成されていました。
内容はHelckの過去編。4巻の後半から5巻まるまる全部過去編なのでかなりの長編ですね。

当然過去編なので、なぜヘルクが魔王を決める大会に参加することになったのか、その原因を明らかにすることが目的となります。

この「Helck」の世界観ですが、最近結構ある設定の魔王側(魔族側)は人道的で人間と敵対するつもりはないが、人間側がその能力の差から一方的に敵視するというものです。
特に生かしてる設定が、人間、魔族の他の第三者としての立場が魔物ということ。
魔族と魔物が別物です。魔物は環境から自然発生して、人間も魔族も同様に襲います。

そのことを魔族側は十分理解しているのですが、人間側は魔族と魔物を一緒くたにして、魔族が魔物をけしかけているという認識、そのような教育をずっと続けているわけです。
幼少から教え込まれた世の中の仕組みというものを覆すのは並大抵のことではなく、例え100人に1人や2人の例外となる人物がそれに気づいたところで、正論を唱えても集団心理を打ち破るのは難しいものです。 

今まで信じ続けたことの否定は、頭でも納得することが困難であり、心でも自分が間違っているということを認めるのに強い気持ちが必要となります。
また、人間は楽な方へ、そして声の大きい方へ流れるのが常ですから、この状況を打開するのは如何に難しいかというのは言うに難くありません。

そして始まる人間総勇者化計画。貴族以外の庶民を全て勇者という超人に変えてしまおうという実に理に適った、そして非人道的な政略です。


そんな人間が行った、ヘルクと、その仲魔たちと、そしてヘルクの弟であり、勇者として祭り上げられたクレスへの仕打ちの結果が、


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常に笑顔だったヘルクにこのような表情をさせることとなります。


このシーンはホントドキッとした。こういう表情とかの、たった一枚で様々な感情を表現することが出来る漫画ってホント素晴らしい。
言葉や文章以上に、人の心というものはその表情を見ればわかるのです。
このようなゾクッとするような、思わず震え上がるような体験が出来るのは良い作品であることの証明です。


少しそれましたが、この表情の結果が、Helck 1巻に繋がることとなります。
Helck 1巻は8割ギャグ漫画だけどな。


というわけで、ヘルクの過去編で終わってしまった5巻、おそらく6巻も少し過去編が続きます。
面白かったので当然次巻も楽しみです。

にしても、裏少年サンデーって割と読むものあるな。
懲役339年勇者が死んだ! もHelckもケンガンアシュラ も面白いもんなあ。
ぶっちゃけ週刊サンデーより面白いんじゃないのか?いや、読んでないからわからんけどさ。
昔は読んでたけど、10年位前の時点で読むもの無いと思って読まなくなってから読んでないからなあ。


眠気覚め度 ☆☆☆☆

以前の感想はこちらから(Helck - 人間の勇者は人間を滅ぼすために立ち上がる)
6巻の感想はこちらから (Helck 6巻 - ヘルクの過去編終了、アズドラの計略始動!)