2021年09月

はぐれアイドル地獄変 13巻 - 非常に読み応えのあった戦乙女闘宴完結

途中まで単なるエロ漫画だったのに格闘大会篇こと戦乙女闘宴に入ってからやたら面白くなった「はぐれアイドル地獄変」も13巻でいよいよ大会完結です。

この格闘大会篇、下手な格闘漫画よりもよっぽど面白かったんですよ。誰が勝つかわからないようなトーナメントだし、それぞれキャラの特徴もしっかりしてたし。何より試合のシーンはエロ要素をほぼ排除してたのが、真摯に格闘を描いていた証拠なのではないかと。

とはいえ、13巻の決勝戦ではなぜか両者際どい水着を着て最後はポロンしてるんですが。が、ポロンしててもそんなことは誰も意に介することなく、そのまま試合が継続してるのが実によかった。
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柔道家のグゼバも準決勝まで柔道着着てたのに決勝では水着になるという謎采配。理由は色々つけてたけどそここだわる必要ある?と少し思ったり。

そして肝心の試合内容も、こういったトーナメントものには珍しく決勝がしっかりと面白かった。見せ方が上手いなと思ったのは、単に試合を描くだけでなく、それを解説する形でこれまでの対戦相手に状況を説明させるところですね。

刃牙だったら本部以蔵が全部解説役を持っていったりするところを、これまでのキャラにフォーカスを当てることで使い捨て感を排除したように思います。良いキャラ多かったからまた出してほしいところだよなあ。

そういった解説がところどころ入ると大抵テンポが悪くなるところですが、そこもまた読ませ方が上手くて、絶妙に戦いの過程と解説が入り混じっています。なのでテンポは良いままで、むしろ解説が心理戦を担っているとも言えるでしょう。なので読みやすいし、状況も考えてることもわかりやすい。グッド。

回想シーン入れてもすぐ終わるので全然邪魔になりません。サクっと挿入される上、次の行動の礎になっています。回想入れるならやはりこういった、本編の補助になるべきなんですよ。見せ方が上手い。刃牙リスペクトでこういったバトルを描いたのでしょう、うまく面白い頃の刃牙らしさを出せていると思います。

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決勝がベストバウトとはいかないですが、全体的にレベルの高い面白さだったこの戦乙女闘宴のシリーズ、決勝戦としても面白い戦いでした。息を飲んで一気に読みふけってしまった。

もうこういう戦いはあまり描かないで、また単なるエロ漫画路線に戻っちゃうのかなあ。元の路線は割りとアホでエロなだけだから頭空っぽでラクに読めますが、この路線が面白かったのでまた読みたいと思ったり。

ただ、きっとそれを全面に出して格闘物とか描くと失敗しそうなイメージも勝手ながらあります。元々キャラが立ってた「はぐれアイドル地獄変」という下地があったからこそ、ここまで面白くなったのではないかというところもありますので。そもそも「ミカるんX」から主人公も出張って来てるし、そりゃ濃くて面白くなるわなというところも。


というわけで、戦乙女闘宴篇完結の「はぐれアイドル地獄変」13巻でした。何気に6巻からこのシリーズ続いてたことにびっくり。そんな長くやってたんだ。6巻から13巻までだけ読むのも十分ありなレベルで面白いので「グラップラー刃牙」や「ケンガンアシュラ」が好きな人は是非とも。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


14巻の感想はこちら(いつものエロ漫画が戻ってきました)
15巻の感想はこちら(そういえばこういう作品でしたね)
16巻の感想はこちら(最終巻でいいんですよね?)


はぐれアイドル地獄変 13
高遠るい(著)
5つ星のうち3.0
¥644
 
はぐれアイドル地獄変 6
高遠るい(著)
5つ星のうち4.6
¥424

野人転生 4巻 - ノーチートなのに人間からも狙われるのが素敵

「野人転生」は異世界転生ものにも関わらずノーチートノースキルで転生し、持ち前の空手技術のみで生き延びていくサバイバルです。その潔さが好き。あと露骨な人気取りの女キャラがほぼいないのも好き。もの凄く硬派。

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おまけに強さもネトゲさながらのレベルキャップあり。この世界の多くの冒険者がレベルキャップを突破出来ないがゆえに、それ以上の相手に対峙すること能ず。だからこそ、同じレベルで止まっている野人たちも例外でなく、幅が広がらない状態。こういうところをご都合やチートであっさり解決とならないのが「野人転生」の良いところ。

加えて、冒険者は人間だから味方というわけでなく、むしろ狩りやすい、手頃な冒険者は他の冒険者から狙われるというのがまた妙にリアル。
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ノーチート転生だからこそ、その世界が凄く現実的で、魔物を狩る冒険者のような集団がいるならそれは殺伐とするし互いを敵視して命のやり取りまでするわなというのが納得出来ます。ちょっと戦闘面では野人が上手く行き過ぎてるところはどうなのかと思う時もありますが、殺してもただではやられないとかなんだかんだ大怪我を負っているとかあり、野人もこの世界を生き抜く為に必死なのがまたグッド。

4巻ではそんな追われる冒険者達をゴブリン集落にぶつける話がメインです。この戦闘もゴブリン達が冒険者よりも戦い慣れしているのがまた妙にリアル。たかがゴブリンと格下に見ている冒険者達が足元をすくわれているのとか、集団戦ゆえにやられたりしているのが妙に現実的。命のやり取りになったら死に物狂いで戦う方が強いことを、まざまざと見せ付けられます。

たぶん、「野人転生」を面白いと思うところはこういうところなんだよなあ。何でも出来る異世界ではなくて、何が何でも生き延びるという意思が無いと明日の朝日すら怪しい異世界。ご都合主義なレベルアップなどなく、ひたすら地道にトレーニングしなければならない異世界。

これってつまり、異世界で魔物相手でなくても、十分に面白い要素なのだと思います。ただ、歴史上のある時代とかを使うと歴史背景の考証が大変だし、かといって現代の話にしてしまうと法の話だとか武器や兵器の話がついてまわってしまうし。格闘に絞ると結局格闘漫画になって命のやり取りとかそういうところ難しいだろうし。

そういう意味で、世界観や人間の人生観の設定を都合よく決められる異世界というのがちょうどいい舞台だったのではないかと。無法でも全然ありですし、出したければ法に従った国家や軍隊を出せばいいだけです。なるほど、ファンタジー世界というのはこういう意味で都合がいいのだな。現代劇にするとリアリティとか難しいものな。

そんな硬派な異世界もの「野人転生」4巻でした。面白いのだけど、展開がちょっと遅いかな。レベルキャップの話が3巻で出てきて、まだ解決してないし。次も期待します。


眠気覚め度 ☆☆☆

3巻までの感想はこちら(ノーチートノースキル転生で生き残れ)
5巻の感想はこちら(第1部完ッ!!)
6巻の感想はこちら(第2部スタートで早速追われる野人が最高)
7巻の感想はこちら(人の悪意に巻き込まれまくる展開が最高)


野人転生(4) (電撃コミックスNEXT)
小林 嵩人(著), 野人(その他)

¥663
 

2021年週刊ビッグコミックスピリッツ43号ざっくり感想

2021/09/27 週刊ビッグコミックスピリッツ43号のざっくり感想となります。
急に寒くなりすぎ問題。風邪引いたかも。最近メガテン5どうしようかと思っていて、Switch持ってないので当初は見送る想定だったのですが、発売日が近づくにつれやりたくなってきました。悩む。Steamで来ないんだろうか。DSだったメガテン4と違って移植しやすいとは思うのだけど。

それでは今回も適当にいってみましょー。

■土竜の唄
  車に残ってたwww

■アオアシ
  ええ。。。この試合ここまで引っ張る必要ある??

■結婚するって、本当ですか
  結婚というより付き合いたてじゃんかこれ。

■二月の勝者 -絶対合格の教室-
  年末番組の2時間もという言い方、極論でちょっと面白くないね。締めるところ締めればいいと思う派としては。ただ、子供でそれが出来るかってのが問題とも言えるので難しい。

■教場
  あれ、今回はちょっと面白い。

■ジャガーン
  完結まであと5話!ドクちゃんとのコンビも復活で終わりに向かって良い展開!

■プラタナスの実
  妙に兄弟の確執とか持ち込むのはどうなんだろうなこれ。純粋に小児医療の話だけやればいいと思うのだけど。

■ダンス・ダンス・ダンスール
  ひたすらにマイムの面白さにハマっていく潤平がひたすら可愛い。

■チ。 -地球の運動について-
  宗教の否定きたーーー!!!!

■くーねるまるた ぬーぼ
  葛きりって想像する以上に美味くないよね。

■君は放課後インソムニア
  不倫だとか結婚だとかの連載が満載のスピリッツでやる高校生の純愛よ。。。

■忘却のサチコ
  今回読んでそういや小林って最初スゲーやなやつだったよなと思い出した。新人教育でここまで変わるものか。。。

■お別れホスピタル
  九条の大罪が連載されてる本誌で九条さんが連続殺人を決行するこのスピリッツよ。

■うきわ、と風鈴。 -友達以上、不倫未満-
  夫婦といえど適度な距離感ホント大事。元は他人だからこそか。

■バトルグラウンドワーカーズ
  大団円で完結!打ち切られないでよかった!

■ハマらない夫婦 ~私たちは一つになれない~
  女の視点でしか描かれてないからわからんけれども、男側が悪意持って描かれすぎでしょこれ。これが本当に事実だとしたらそもそもなんで結婚したんだレベル。

■気まぐれコンセプト
  ちょっとだけ酒を飲んだら仕事が捗るのではと本気で思ったことはある。



週刊ビッグコミックスピリッツ 2021年43号【デジタル版限定グラビア増量「似鳥沙也加」】(2021年9月27日発売) [雑誌]
週刊ビッグコミックスピリッツ編集部(著), 高橋のぼる(著), 小林有吾(著), 若木民喜(著), 高瀬志帆(著), 長岡弘樹(著), みどりわたる(著), 金城宗幸(著), にしだけんすけ(著), 東元俊哉(著), ジョージ朝倉(著), 魚豊(著), 高尾じんぐ(著), オジロマコト(著), 阿部潤(著), 沖田×華(著), 野村宗弘(著), 竹良実(著), 竹充ヒロ(著), ホイチョイ・プロダクションズ(著)

¥400

ハイスコアガール DASH 2巻 - 今回は格ゲー一本で行くのかな?

「ハイスコアガール」から時は流れて2007年、屈指の人気キャラだった日高小春が中学校教師となって生徒達と共に格ゲーに興じる「ハイスコアガール DASH」の2巻です。

この書き方だとまるで遊びでヴァンパイアやってるみたいやな。今回、なんだかんだ話が全体的に重いんですよね。生徒を不良から救う為に仕方なく長年培った格ゲーの腕前を見せ付けたり、生徒は生徒で家庭内事情だとか不登校だとかいじめだとか色々問題あるし。校長は校長で典型的な嫌な校長だし。金八先生かよ。

「ハイスコアガール」はあくまで春雄と大野のゲームを通じた恋愛要素がメインだったので基本的に明るい感じでしたよね。それに対して、恋が成就しなかった小春が教師生活のストレスを味わいながら偶然再びゲームの世界に入っていくという形の為、どちらかというと社会風刺が強めなストーリーに。
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にしても、舞台の2007年の時点で、既にゲーセン事情はよろしくなくなっていたような。やはり1990年代後半が勢いづいていたイメージがあります。2007年だとゲーセン行ってもシューティングしかやってなかったな。

そんな時代背景の中、プレイに上がるのは「ヴァンパイアセイヴァー」と「ヴァンパイアハンター」。これはもう、作者の押切蓮介が一番描きやすいからなのでしょう。ちょうどその年代らしいし。何よりこのあたりのゲームを描くのが本当に楽しそう。好きなゲームを夢だった漫画でテーマにして話を描けるというのは、数少ない選ばれし漫画家がなし得る夢なのではないでしょうか。

というわけで、そんな「ヴァンパイアセイヴァー」を中心に生徒始め色々な人が巻き込まれていくこととなります。今回は小春は師匠的立場で生徒に教えていき、実際に成長を描くのは生徒という形なのかな。既に挑戦される腕前になった小春の代わりに、生徒が主人公になったと言っても過言ではないでしょう。なるほどこれは格闘ゲームを中心とした中学生の成長譚だったか。

ちょっと方向性は変わったけれども、「ハイスコアガール」から続く面白さは顕在です。「ハイスコアガール」が好きだった人、特に日高小春に肩入れしてた人には合うと思います。かくいう私も。


眠気覚め度 ☆☆☆

 



余談
「ゆうやみ特攻隊」の頃から押切蓮介ファンになり、「ミスミソウ」が最高に面白いと思って、それからありとあらゆる作品を読んで来ました。その流れで「ハイスコアガール」も読んでた次第。

なんだけど、最近はちと面白さが減少気味かなと思ってちょっと距離を置いているところ。「ピコピコ少年」がそんなでもなかったのがなあ。「サユリ」と「椿鬼」は好きだった。「焔の眼」がうーん。「妖怪マッサージ」はえっちだった。

「もののけ!くわいだん部」も「ジーニアース」も未読です。「ジーニアース」は1話だけ読みましたがやりたいことが「焔の眼」と同じなら様子見かな。

異世界最強の聖騎士は情弱すぎて今日もネット炎上してる - SNSの闇を描く問題作

現代社会の闇、SNS炎上がテーマのファンタジー世界観もの「異世界最強の聖騎士は情弱すぎて今日もネット炎上してる」は2巻で読み終える非常にくだらなくて頭を使わない良作です。

もうね、2巻の表紙時点でパッと見ても何の漫画かわからないのがこの作品を如実に表してますね。
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この表紙デザインは非常に上手い。ただ、中身知らない人には全くわからないので本当にこれでよかったのかw

お話として、タイトルの通りです。ファンタジー世界にスマホが導入されていて、その世界のSNS「ツブヤイター」を使う聖騎士が何をしても炎上していくというものです。
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いやあ、SNSの闇を感じますねえ。凄くリアル。

正直これが出オチで、もうこの話だけで完結してもいいくらい。

その後も、「獣人」という言葉を使ったら言葉狩りにあったり、仲間のエルフが自撮りを上げるために躍起になったり、アカウント乗っ取られたり。SNSのあるある炎上案件を次々と展開していきます。その他にも配信者の配信に乗り込んだり。

特に笑ってしまったひとコマはこれですね。
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もうこの一言が闇を加速させるwww

ただこの作品、やはりネタ不足というか、2巻からSNSネタとしてはちょっとずつ鈍化していきます。もちろんSNSの闇を感じるような炎上ネタもありますが、どちらかというとファンタジーの設定を活かしたものが多くなっていく感じです。

なので、あえなく2巻で完結。正直このテーマで何巻もクオリティを保ち続けるのは難しいかったのでしょう。あまりやりすぎると本当にSNSを敵に回しかねないし。感想書いてる今でも、あんまりやりすぎるとやばいかなと思って書いてるし。

おまけに最後の方の話、全然SNSも炎上も関係無くなってたのだけど、どういう意図だったのだろうか。ネタ切れ?最後だけ全くノリが違って若干困惑しました。

とにかく最初の勢いだけで面白いし、2巻でサクッとラクに読めるのでオススメです。なんだったら2巻読まなくても、1巻だけでも十分かもしれません。


眠気覚め度 ☆☆☆


 

GIANT KILLING 59巻 - リーグ戦も遂に終盤

「GIANT KILLING」も59巻まで来ました。長いな。Kindle導入前のところまでは手放してしまったけど、たぶん何回も読むものでもないからいいかな。。。

58巻が椿が立ち直るところで非常に良い終わり方をしていたので最高の巻でした。その次と来るのでさすがに58巻よりもちょっと面白さは落ちるかなというところですが、安定しています。そういう意味では「GIANT KILLING」って割とずっと面白い。ド安定。59巻続いてずっと面白いのは本当に凄いことです。

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58巻で感極まって泣いてしまった椿から始まる59巻です。話は遂にリーグ戦終盤へ。第30節時点で3位のETUですが、上位層はほとんど勝ち点差が1しかなく、残り4節でいくらでも結果が変わる状態です。

長かったなあ、ここまで。途中で椿の世界篇が入っていたとはいえ、本当に長かった。14年以上掛けてようやくリーグ戦が終盤です。まさかここまで長くなるなんて誰が想像したでしょうか。それこそ、この1年の話ではなくて、何年かにわけてリーグ優勝していくのかと思っていた時期もあったので、この長さは本当に凄い、色んな意味で。

ただ、やはり安定した面白さはずっと継続していると思うのですよ。それこそ、自分も何回も読み返すほどはまっているわけではありませんが、新刊が出る度に読んでしまいます。「GIANT KILLING」に関しては初期からついていけてる読者も多いのではないでしょうか。自分もその1人です。

59巻は残り3節の最初、4位のジャベリン磐田との対戦です。リーグ初期は圧倒的敗北を喫した相手である磐田、今度はETUを立ちはだかる敵として、全力で仕掛けてくるわけで、ETUが挑戦される立場になります。そこで磐田があれよあれよと対策を練っているわけで、いつもの調子なら前半は大いにやられるところですが、どうやら今回はそうもならない雰囲気です。

とはいえ、いつもそう簡単に終わらせない、それならば対戦自体を省略するはずですので、まだまだ60巻以降で盛り返してくれるのでしょう。

なんですが、、、正直ベースな話、椿の世界選手権レベルの話を見てしまったあとだと、どうも国内リーグ戦の勝負が見劣りしてしまうような。椿遠征篇は結構楽しんで読んでた派のため、そっちの方をメインで描いてくれても面白そうだなとか思ったり。

リーグ戦が終わったら「GIANT KILLING」自体は完結して、椿の海外篇とか始まる想定だったりしないですかね?全然ありそうだなそれ。一応「GIANT KILLING」の主人公は達海だけど、プレイヤーの主人公は椿だし。既に椿が達海を喰ってるレベルで活躍しちゃってるしなあ。

というわけで、59巻まで来てようやく終盤に差し掛かってきた「GIANT KILLING」です。終わるまでまだ1年か2年くらいは掛かりそうですね。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


60巻の感想はこちら(面白さを牽引する椿大介が何よりも最大のGIANT KILLINGである)


 

ワンダンス 6巻 - カボのダンスは対象全てをリスペクト

あまりの面白さにドハマりした「ワンダンス」の6巻です。5巻からの続きで、ダンスバトルのカボVS壁から始まります。

このダンスバトル篇、これまで出てきたキャラ全部が総力結集して戦ってるのが実に良いですよね。全力で踊って、勝つ為に必要なことを何度も何度も考えて、それでも勝てたり勝てなかったり。何回やっても勝敗が変わるような、最強キャラの戦いではないというところが本当に好きです。

で、いよいよカボVS壁です。高校入学からダンスを始めたばかりで、バスケで培った体幹と音を聞くことが出来る耳の良さであれよあれよとダンスの腕を伸ばしたカボくん。そんな彼に、年季が入った壁が立ち塞がります。

これ、最初は壁がカボくんのことを舐めてるのに、その後のカボくんの踊りに圧倒されて見る見るうちに全力で叩き潰しにいってるところが素敵。そしてカボくんも自分が持つ耳の力とこれまでの練習に至るあらゆる要素を全力で思考して対峙していくところがもう最高なのです。

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これまで聞いてきた教えを元にどう動くか考え、耳で細かい音まで聞き澄まし、バスケで培った体幹とイメージをダンスに取り入れる。これが今カボくんが出せる全力なのです。これまでで最大の敵となった壁に、カボが出せる全てでぶつかったカボくん。本当にカッコいい。

また、終わった後の壁の思いもまたキャラがすごく良く立っています。ダンスに対して、とにかく今はがむしゃらに前向きに取り組んで、全てをリスペクトして踊り続けるカボくんに対し、壁谷はダンスを自分の劣等感を払拭する為に使っているのが大きくスタンスとして違います。

だからこそ、バトル中のカボの一挙手一投足も、バトルとしてふっかけられていると壁谷は捉えてしまっていたわけですが、その実カボくんはそんなこと全く考えてなくてただひたすら全力だっただけなんですよね。

で、その違いを光莉がしっかりわかってるのがもう心をキュンとさせるわけです。
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「カボ君は壁谷さんのことを本当にリスペクトして踊ってたように見えました」

最後までカボくんの勝利を諦めなかった光莉、この信頼、思いは、今後2人で紡いでいくダンスの道を明るくすることでしょう。

ああ、ホントいいなあ「ワンダンス」。悪い人間がいなくて、全てのキャラがただただ一心不乱にダンスへ全力なところが凄く良い。次巻も楽しみです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


1~5巻の感想はこちら(ダンスものに外れ無し?高校生ダンスの傑作)
7巻の感想はこちら(カボの上昇志向が見えてくる熱い展開)



宇宙兄弟 40巻 - 遂にタイトル回収!

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いやもう、40巻の感想はこれだけでいいでしょう。ここまで本当に長かった。見事に「宇宙兄弟」のタイトルを回収した「宇宙兄弟」40巻です。

ホント作りが丁寧ですよねこの作品。弟であるヒビトが先に月へ行き、いつかここで一緒に会おうと宣言。それに感化され、子供の頃からの夢を叶える為に宇宙飛行士試験から丁寧に丁寧に描写を続け、遂に兄のムッタも月へ降り立つ。

また、月から戻ったが宇宙恐怖症になってしまったヒビトが、今度は兄の背中を追う形で恐怖症を克服、NASAからロシアに所属を移して、今度は月にいるムッタを救出する為にヒビトが再び月へ降り立つことに。

そうして、遂にこの40巻で、この兄弟の夢が達成されるのです。正直もうこの巻で終わってもいいくらいの達成感です。ここまで読み続けてきた読者としても、非常に感動するシーンとなりました。

また、これまで二人を支えてきた家族、シャロンを初めとした関係者各位の思いも丁寧に描写されていて、そこで思わず涙腺が緩んでしまいます。何よりJAXAの星加さんの描写が素敵でしたね。子供の頃から何度も足を運んでくれた兄弟が夢を叶えてくれたわけですから、こんなに嬉しいことはないわけです。

上記の「僕たちは宇宙兄弟です」のあとに、「piece of cake」も使ってるのがニクいですよね。過去にもシャロンとのやり取りで何度か出てきた「piece of cake」です。ムッタたちとシャロンの間をつなぐ言葉となったこの一節、もうここまでの思いを全部昇華してるように見えて素晴らしいです。

いやあ、ホントよかったなあ。自分の中ではもう完結してしまったくらいの気持ちだけど、あとはムッタが地球に戻って一区切りというところかな?1巻から40巻まで、だれることなくずっと面白い「宇宙兄弟」はホント素晴らしいです。(思い返すとロシアのヒビチョフの辺りでちょっとだれたかもね)


眠気覚め度 ☆☆☆☆


41巻の感想はこちら(We are "Space brothers"!)
42巻の感想はこちら(月面ミッションコンプリート)


 

うわ、過去の記事で宇宙兄弟書いてたはずだなと見返したら、28巻時点でもう月には着いてたのか。月に着いてから6年以上連載時間が経過していたとは。。。それどころか26巻で月に着いてたわw

ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 9巻 - 色々な話が詰め込まれている、これぞハコヅメ

逆うちハコヅメ感想も9巻まで来ました。9巻は如月部長が初登場です。まさかこのあと町山署に配属になってあれよあれよとスタメンに昇格するとはこの時は思いもしませんでした。しかも9巻の描かれ方はまさにできる警察官って感じだし。18巻時点での流れは全く想像出来ません。

そして抱腹絶倒の町山的実践訓練があるのも9巻ですね。ホントこれは笑いが止まらなかった。これこそドラマでやって欲しかったところでもあります。

最初は那須部長の奥さんが出産する、変態ばかりの町の話。変態の話で笑わせつつ、出産後でほっこりする話。刑事って大変だなと思わせてくれる一節です。

お次は聖子ちゃんと源が無線とマイクでやり取りして副署長に怒られる話。
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ここはやり取りが軽快でテンポ良くて面白い。これぞハコヅメのコントと思わせてくれる流れです。ある意味ハコヅメの真骨頂と言ってもいいのでは。

あと何気に桃木分隊長が初登場?してます。初じゃなかったかなー、ここまでほとんど名前しか出てなかった気がするんだよな。

続いて如月部長の初登場に加えて源の器の小ささが大いに発揮された「太陽にほえたい!」。
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ここも大笑いした記憶があります。夕日を背景に何を言い出すかと思いきや。これまで仕事っぷりから源アゲが多かったですが、この辺りからプライベートは完全にポンコツでダメ人間であるところが大きく掘り下げられてる気がします。源の運命はここから決まってしまったのか。

そして川合の同期と葵教官のお話。どこまでが本当に警察学校あるあるなのかはわかりませんが、これまた壮絶な学校時代だったことが描写されています。確かにここで徹底的に厳しく、理不尽に耐えられるように教育しておかなければ、警察官になってからの理不尽には太刀打ち出来ないのであろうと思ってしまいます。

それにしても、1時間走で水をぶっかけられたのが優しさとか、それは本当に優しさなのかどうなのか。止まれない状態で、汗だかよだれだかわからない状態でなら、水掛けられたら嬉しいのかもしれない。嬉しいかもな。。。

あとなんだかんだ感動で締めて泣かせようとしてくるのやめてください。

お次は宿直のお話。聖子ちゃん良い匂いするけどマウンテンメスゴリラなんだよね。あとここは川合聖子ちゃんにフォーカスを当てつつ、源山田のおっさんに包まれるところがメインだったり。
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「布団から いろんなオッサンのにおいがする」

いやこれはきつい。布団まではともかく、枕が嫌ですよね。布団の敷き詰め具合、雑魚寝具合はドラマ版の方が実はひどかったりします。

そしてこのあとの緊急事案の聖子ちゃんが相変わらず有能なんだこれが。
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この難しい言葉使って煙に巻く感じがホント有能。こういう手合いの相手も慣れてるんだろうなあ。ホント理不尽よね、このマスクにいちゃもんつけてくる流れ。元々の素質もそうだけど、何よりもこれまでの勤務経験を大いに生かした対応に見えるのがまたグッド。

次がカナの話ですね。アンボックスのオープニングでも描かれた警察学校時代の1シーンから始まります。
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このシーンがなあ、この話自体は山田のダメ出しの話であり、カナが有能なところを見せてくれるものだから、この時のカナの気持ちにはなかなか思い至らないのが上手いなあと。カナの表情もちょっと暗いですが、これは山田に持たせてしまった罪悪感から来るものと見えるのではないでしょうか。

その真意はアンボックスで語られるわけです。漫画表現ならではのミスリード、というかこれはある意味どうとでも捉えられるシーンだけど、人の本心というのは明かさないとわからないと教えてくれる名シーンではないでしょうか。
アンボックスの話はこちらでしてます。

お次は水難救助訓練。この手の全員集合はまさしくコント回で毎回面白い。みんなのアイドル副署長が大活躍しますしね。

この話でもカナが良い味出してるんですよね。
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「外れ警察官代表として言わせてもらいますが」「うちの代表頼もしい…」

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「なんだこの企画物AVみたいな状況」「カナ 口に出さないでくんない?」

ホントこの流れが秀逸。言いたいこと言ってしまうカナが本当に面白い。聖子ちゃんや源山田と違ってツッコミ内容が1レベル上の感があります。牧ちゃんじゃこうは行かないしなあ。やっぱカナだよなあ、こういうネタが抜群に光るのは。

そしてそして、抱腹絶倒で笑いが止まらなかった「町山的実践訓練」ですよ。本部教養課のおえらいさんに「実践的総合訓練」を完璧に見せるためにやらせを行う話。これこそ源と山田が大いに活躍する話と言えるでしょう。
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このアンジャッシュのすれ違いコントばりに噛み合わない人達。さらにこの後に山田も加わって、あれよあれよと話が展開して、もう笑いが抑えられない状況に。なんでここまで笑える話が作れるんだろう。これもドラマでやって欲しかったなあ、めちゃめちゃ人気出ただろうなあ。

最後はカリスマショップ店員になりたい女の子が盗撮されて山田に聴取されるお話。実際の性犯罪でも、こういう状況多いのでしょうね。実害がパンツ撮られただけだとしたら、怒りはすれども警察で話するまで帰れないとかめんどいと思う人もいるでしょうし。

この話でなかなか効いたのが「なぜか性的な犯罪だけ被害者に原因を求める人が少なくないが、犯罪は犯した人間が悪い」ということ。こう言われると、確かにそうだよなと。よく、空き巣に入られるのは鍵を掛けないで出かけた方が悪いということも聞きますが、防犯の観点としてはそうだとしても、悪いのは入った犯人なのですよね。

そういったところが、何故かすり替わってしまうことがあるのが難しいところではないかと。確かに未然に防げたと言えばその通りなのだけど、そうすると犯罪者が悪く無いのかと言うとそうではないですし。自衛は自衛、犯罪は犯罪。別物として考えないとならないですね。


ハコヅメも9巻まで読み戻すと、この辺りはまだオムニバスの展開だからこそ面白い頃だったように思えます。このあとは桜の話にフォーカスが当たったり奥岡島事件の話があったりと、大き目の話が中心になっていきます。

しかし、もともとハコヅメの人気が出た要因は、こういったオムニバスで展開される話のひとつひとつが非常に丁寧で面白く描かれていたことによるものでしょう。だからこそ、この頃のハコヅメが実は一番ハコヅメたらしめてる内容なのかもしれません。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ハコヅメ3巻の感想はこちら(川合先生初登場の似顔絵特別捜査本部)
ハコヅメ4巻の感想はこちら(黒田カナ伝説はここから始まった)
ハコヅメ5巻の感想はこちら(とにかく笑える内容盛り沢山)
ハコヅメ6巻の感想はこちら(伝説の笑ってはいけないお誕生日会が収録されたハコヅメの最高傑作巻)
ハコヅメ7巻の感想はこちら(煽り役としてパーフェクトな聖子ちゃんが見れます)
ハコヅメ8巻の感想はこちら(これ警察学校で習ったやつだ!)
ハコヅメ10巻の感想はこちら(迷惑防止条例と強制わいせつの違いが勉強になります)
ハコヅメ11巻の感想はこちら(1巻の伏線を見事回収、この日の出会いを何度も後悔することになる)
ハコヅメ12巻の感想はこちら(同期の桜完結、川合の成長を感じられる最高の展開)
ハコヅメ13巻の感想はこちら(アンボックス事件のカップルが登場)
ハコヅメ14巻の感想はこちら(奥岡島事件発生篇)
ハコヅメ15巻の感想はこちら(奥岡島事件解決篇)
ハコヅメ16巻の感想はこちら(1巻で出てきたキャラが再登場する感動の成長譚)
ハコヅメ17巻の感想はこちら(アンボックスを読んだ後に読むと非常に切ない)
ハコヅメアンボックスの感想はこちら(警察の負の感情を全力で主張した傑作)
ハコヅメ18巻の感想はこちら(即ハメあんあん激イキスクール)
ハコヅメ19巻の感想はこちら(20巻を読むために覚悟させられる巻なのではないか?)
ハコヅメ20巻の感想はこちら(アンボックス級のシリアス話が一貫した傑作巻)
ハコヅメ21巻の感想はこちら(虎松譲二事件完結!大事件の事後処理といつものギャグパートが再開します)
ハコヅメ22巻の感想はこちら(恋愛要素満載で話を畳みに来てます)


 

モンキーピーク the Rock 7巻 - 人間同士の対立が始まったけどちょっと話が弱い気がする

好きなんですよ「モンキーピーク」。志名坂高次が描くシナリオが好きなんですよ。壊れていく人間関係、疑心暗鬼、追い詰められた人間の狂気。色々と展開に無茶はあったものの、読んでて面白かったです。

そしてその続編である「モンキーピーク the Rock」ももう7巻まで来ました。なんだけど、「モンキーピーク」ほど面白くはないというのが、ここまで読んだ率直な感想です。

7巻は、というあらすじを簡単に書こうとしましたが、そういや洞窟に閉じ込められて猿に襲われて状況変わってないやと気づきました。ずっと極限状態で襲われて怪我して人が死んでの繰り返しです。

が、この7巻でいよいよ人間関係の対立が明確になっていきます。
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「人間の命より猿の命を重んじる!」

この赤崎の存在が、前作との大きな違いでしょう。大量の猿がいる洞窟に閉じ込められた状態で、猿に襲われながらも出口を探しているのに、猿を絶対に殺してはいけないという愛護派。この状況下における最大の敵となり得ます。

そもそも、前作「モンキーピーク」と今作「モンキーピーク the Rock」の大きな違いというのが、人間同士のサバイバルサスペンスから、人間対猿のサバイバルバトルになってるところなんですよ。

「モンキーピーク」では、猿どころか会社の登山というイベントの時点から全て仕組まれている、人間対人間の争いでした。しかもその過程で人間同士の派閥が出来上がり、登山に対する装備や食料、水の争いが発生していました。そこが実に面白かった。

それに対して、「the Rock」は本当に敵が猿なんです。いやもちろん、この大量の猿が存在する巣に閉じ込めた人間はいるわけで、裏では人間対人間なのはそうなのですが、洞窟内の現状としては人間対猿の構図であるわけです。意思疎通の出来ない相手であり、猿側の思考が何かあるわけではないのが少しつまらないところ。単なる人間対動物です。

そしてこの7巻で、遂に人間同士の対立が明確になったというわけですね。そういう意味では面白くなるはずなのですが、相手が赤崎と他1名というのがなんとも。これならレンジャー部隊と争い続けた方が面白かったかも。

あとは傍から見てると、争ったところで脱出出来ないなら意味が無いのではと思ってしまうのがね。「モンキーピーク」は猿に殺されるという恐怖で山を登り続けることしか出来ず、だからこそ派閥が出来ても双方が山を登るしかないというところは一貫していたのが、わかりやすいとともにそれしか方法が無いというどちらの意見も納得が出来る内容でした。

それに対して、「the Rock」では単に「猿を殺さないで」だけなのが。高橋は生きて帰って猿の生態で大儲けする意思があるけれど、赤崎は最終的に洞窟の中で死んでもいいと思ってるように見えるのが残念。その信念が全く共感出来なく、早乙女達を邪魔してるだけなのが勿体無い。「猿を殺さないで」じゃなくて「金の為に猿を生かせ」の方がまだ人間臭くてわかりやすかったのに。

というか、赤崎は洞窟に閉じ込められてからホント気に入らなかったな。どうにか生き延びようとする早乙女達の邪魔しかしないわけだし。ヘイト生むためのキャラだとしたら良いキャラしてます。

そんな人間同士の対立が始まった「モンキーピーク the Rock」7巻でした。正直、とっとと洞窟からは抜け出して人間同士の話をメインに見たいところです。猿と戦い続けてもあんま面白くない。


眠気覚め度 ☆☆☆

8巻の感想はこちら(遂に黒幕登場、話はクライマックスへ)
9巻の感想はこちら(洞窟サバイバルこれにて完結)

モンキーピーク the Rock 7
志名坂高次(著), 粂田晃宏(著)
5つ星のうち4.2
¥594
 
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