2021年07月

カナカナ - 西森博之の新作はウンコの在り処を尋ねる幼女

私は西森博之が大好きです。「今日から俺は!!」の谷川クラッシュから始まり、今井の閉じ込め事件の「夕暮れや 雷鳴轟く オレの腹」で一気に心を掴まれてしまいました。それから「甘く危険なナンパ刑事」で三橋の原型を見たり、「スピンナウト」でこりゃ打ち切られるわと思ったり、「天使な小生意気」は面白いけど世間がそんな騒ぐほど面白いかぁ?と思ったり。「道士郎でござる」は道士郎が主人公に見せかけて健助殿が主人公なのは面白いと思って、「お茶にごす。」はデビルまーくんの割りに本筋で大喧嘩しないところが良い作りだと思いました。「鋼鉄の華っ柱」は記憶が無いし、「柊様は自分を探している。」は最後まで読んでません。

そんな西森博之の新作が「カナカナ」です。正直1巻を読んだ時点ではそこまで面白いと思ってなかったのですが、2巻が抜群に面白かったです。非常にグッド。読んでて癒されるし、最近の西森博之作品の傾向の通り本気で頭来るような人間があまり出ない、ないし出てきてもすぐ登場シーンが終わるので非常に読後感が良いです。おまけにカナちゃんが可愛い。

お話としては「今日から俺は!!」の今井顔をした男のところに、遠い親戚筋の子供がやってくるという疑似親子コメディです。そしてこの子供の佳奈花ちゃん、通称カナちゃんは人の心が読めてしまいます。人の心が読めてしまうがゆえ、人の悪意だったり、人の善意だったりに気づいてしまいます。このため5歳にも関わらずやたらと大人びた思考を持ち、そう簡単に人に懐こうとはしません。その時今井顔のマサに出会い、マサの心に一点の悪意が無く、困ったカナのためだけに自分を犠牲にしてくれることに気づいてしまうのです。そうして、大人を信じきれないカナちゃんが初めて心を許すこととなり、共に生活していくということとなります。

この「人の心が読める」という設定がやはり面白く、大人から子供までどんなことを考えてカナちゃんに接してくるのかわかってしまうことが如何にカナちゃんを苦しめていたのかが見て取れます。人の心とは、やはりわからない方がいいのだなあ。知らなくてもいいことなんて世の中に山ほどあるのだなあ。

そんなカナちゃんと今井顔のマサとのほのぼの日常がベースのお話なので、読んでて非常に和みます。悪人顔と一般的に恐れられているマサが、なんだかんだで色んな人に好かれているのも読んでて清々しいし、大人びた思考の割りにマサや周りの大人のために一生懸命子供として振舞うカナちゃんも可愛い。5歳児なのに消費税の割合計算もポンポン出来るカナちゃんは神童。

さて、そんな「カナカナ」ですが、2巻ではカナちゃんの初めてのおつかいイベントがあります。と言っても、マサと2人でスーパーに行き、マサに言われたものを探すというだけなのですが、これがまたなかなか探そうとしたものが厳しい。
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「ウンコはどこにありますか!?」

ウンコを尋ねる5歳児。店員にウンコを尋ねる5歳児。当然この店員はトイレに行きたいのだと推測し、カナちゃんをトイレまで案内します。元気ハツラツと「ウンコの場所」を尋ねたカナちゃんはこの結果を心底恥ずかしがり、用も無いのにトイレで用を足した振りをして出てきます。

しかし大人びた思考をするカナちゃん、マサが探してほしいと言っているウンコを見つけなければなりません。カナちゃんは「ウンコって聞こえた気がするけど、きっと違うものなんだ。ウンコというのは聞き違えなんだ、でもウンコとしか聞こえなかったし」と悩み、改めて人に聞く決断をします。
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恥を忍んでウンコに似たものが無いかを尋ねるカナちゃんは可愛いなあ。この決意のおかげでウンコはウコンのことを言っているということが判明しました。そのおかげで遂にマサが必要としたウコンを手に入れることができます。やったねカナちゃん!マサの役に立てたね!

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ここでもう笑いが止まりませんでした。いやね、ウコンをウンコ呼ばわりするのは誰もが通る道ですよ。ウコンの力なんてウンコの力と呼ばれるのが運命のようなものになっています。そんなド定番ネタをここまで面白いものに昇華するとは、やはり西森博之は侮れない。

このウンコの話に限らず、地産地消するために海岸で獲物確保したり、ザリガニを勇者として崇めたりする話があるなど、面白いエピソードが沢山です。2巻で初登場したマサにホの字で心では好き好き言ってるくせに態度がツンデレのツンしかないサワちゃんが出てきたりもするし、キャラも色々集まってきた感があります。この先もまだまだ期待です。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


3巻の感想はこちら(安心してニヤニヤほわほわ読める親子ストーリーが素敵)
4巻の感想はこちら(優しいストーリーが心の清涼剤になる)
5巻の感想はこちら(世界一おにぎりはまさに家庭の味)



 

2021年週刊ビッグコミックスピリッツ33号ざっくり感想

2021/07/19 週刊ビッグコミックスピリッツ33号のざっくり感想となります。
月曜日の朝から藤本タツキの読切で話題が持ちきりだった気がします。昨夜読みました、もう、何も言えなかった。これでまだ20代だっていうんだからとんでもないバケモノですね。

それでは今回も適当にいってみましょー。


■結婚するって、本当ですか
  今回の回想シーンいる??

■アオアシ
  阿久津の顔が怖いw

■九条の大罪
  これは謀反ですねえ。

■プラタナスの実
  この漫画の兄弟確執いる??

■土竜の唄
  これ幹部の裏切り者が誰だというよりほとんどが裏切ってる展開じゃねーの。

■ひらやすみ
  こういうケンカならたまにはいいよね。

■アオアシ ブラザーフット
  本編と同じクオリティなんだけどいつまで続くんだこれ。。。

■健康で文化的な最低限度の生活
  強引やなあ。

■教場
  これ全然面白くねえんだよな。

■ジャガーン
  ラスボス粘るねえ。

■うきわ、と風鈴。-友達以上、不倫未満-
  隣の青芝やろ

■ア・ピリオド・イン・ウィンター (読切)
  この絵柄だからこそ出来る表現、間の使い方が素晴らしい。親子って難しいなあ。

■闇金ウシジマくん外電 肉蝮伝説 (出張掲載)
  これだけ見ると肉蝮がいいやつに見えてしまう。

■気まぐれコンセプト
  見事にオリンピックネタだけ持ってきたな。



週刊ビッグコミックスピリッツ 2021年33号【デジタル版限定グラビア増量「武田玲奈」】(2021年7月19日発売) [雑誌]
週刊ビッグコミックスピリッツ編集部(著), 若木民喜(著), 小林有吾(著), 真鍋昌平(著), 東元俊哉(著), 高橋のぼる(著), 真造圭伍(著), 柏木ハルコ(著), 長岡弘樹(著), みどりわたる(著), 金城宗幸(著), にしだけんすけ(著), 野村宗弘(著), 石ノ森章太郎(著), 三条陸(著), 佐藤まさき(著), カレー沢薫(著), ホイチョイ・プロダクションズ(著), 岩崎真(著)

¥400

 

桐谷さん ちょっそれ食うんすか!? 11巻 - サメとかリスなら普通に食べられるかも

ゲテモノ食いを作者が取材しながらひたすら描く「桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?」11巻です。この作品もなかなか長く続いてますね。それだけ食の世界は奥が深いのか。

11巻ではサメやリスから始まり、虫尽くしのうどん、キノコ、羊の脳カレーが取り上げられています。サメやリスはまあ、まともな食材ですね。キノコも問題なし。羊の脳はイコール白子だと思えばなんとか。虫がなあ、虫はやっぱきついよなあ。姿そのままなのがやっぱなあ。
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まあこれくらい見た目に出てこないならなんとか?虫と言われなければ食べることができるかも。。。だけどこれ中身は虫しかないくらい虫なんだよな。
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知らない方がいいことがあるとはこのことかもしれない。

11巻まで来て、これまでも様々なものを食べてきたこともあり、だいぶこなれてきた感があります。桐谷さんの良いところは虫等のゲテモノに限定すること無く食べられるものならなんでもチャレンジするところですね。だからこそ、たまにはこれ食べてみたいというのも出てきたり。11巻だと虫うどん以外なら機会があれば食べてみたいかも。リスとかはゴールデンカムイで有名になったところもありますしね。ゴールデンカムイを読んだらリス食べてみたくなるしなあ。

それと、ゲテモノ食からぶれることなく展開されるのがホントグッド。たまに桐谷さんの恋心だったりそういう展開が発生しそうになりますが、そっちに流されることなくゲテモノを持ってきて食べるだけの展開に終始するのが良いです。コンセプトがぶれること無いというのは意外と難しかったりすると思うので。

いつまで続けられるんだろうなあこれ。そろそろネタ切れになってもおかしくないような。

眠気覚め度 ☆☆☆


12巻の感想はこちら(今回は深海生物多し、あつまれ!深海の鍋!)
13巻の感想はこちら(まだまだ続くゲテモノ探求、食の世界は広くて深い)
14巻の感想はこちら(少しおとなしめなので初心者はここから読みましょう)



 

ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 14巻 - 奥岡島事件発生篇

アンボックスから引き続き逆打ちでちょこちょこ読んでる「ハコヅメ」14巻です。山田が草むらに放たれた精液の匂いを嗅ぎ分ける話があったり、源と聖子ちゃんの不思議な関係が読み取れたり、いよいよ奥岡島事件の過去話が始まったりする巻となります。半分は奥岡島事件絡みですので、14巻と15巻を合わせて読むのがオススメです。

山田の精液嗅ぎ分け事件はホント傍から見るとくだらなくて笑えて最高。もちろん事件の被害者の立場や警察の苦労を考えたら笑ってる場合ではないのでしょうけど、それをこうして笑いに昇華出来てるのが相変わらず上手いなと思います。「精液ついてもいい格好で行けよ」とか警察じゃないとまず聞かない台詞でしょう。

そして肝心の山田は「オッサンのニオイで精液のニオイが消えました」とか「藤部長の良いニオイで気が散って精液のニオイに集中できません!」とかホント何言ってんだこいつ感漂ってるのにクソ真面目に話してるだけというアンバランスさが面白くて面白くて。

その後始まる「奥岡島事件」関係のお話。前村孝三が平然と警察署内を歩いて署長室に案内してもらってるのを見て、一般人が普通に中歩けるものなの?と思ったり。この時の前村孝三の顔の変化がホントすごくてなあ。見ただけで違いや変化がわかる漫画だからこその表現が実に上手い。結構オーバーに顔を描きかえるから尚更わかりやすいのですよ。そういうところはやはり漫画の技術、素晴らしい。
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こうしていつも通りみんなのアイドル副署長もいじられるし。この川合の一言が上手すぎるんだよな。それに対する副署長の返しも完璧だし。

あとこの話、この118話だけでも、文字がメチャメチャ多いのに全然苦も無く読めるのがスゴイ。なんでなんだろ、ひとつひとつの台詞が短いから?それともシリアスとコメディがテンポよく繰り返されるから?こう、読んでて現実にありそうな会話が繰り返されるから、まるで掛け合いを見てるかのようにスッと入っていくのですよ。キャラが立ってるからこそ出来ることでしょう。こういうところの上手さがハコヅメの面白さにも直結するのだろうなと改めて思ったり。

続いて災害に備えての警察署待機のお話。とはいえ待機なので溜まった仕事をこなしたり机で寝たりをするだけというなかなか過酷な待機。そんな中でもオッサンはどこでも寝る技術を身につけてるという話が秀逸。
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南係長の机に乗ってしまうのはまあまだわかるとして、西川係長の死体寝するところとか北条係長の諦めて床で寝てるとかが、こう年季というものを感じられるのがまた。そのあとの山田の「いろんなオッサンの生態が見られるな」という失言もまた面白い。

そして14巻の最高潮といえばラストに出てくる奥岡島事件過去話で描かれた、虎松譲二が源父と鬼瓦教官に実行した「逆問」の話でしょう。逆問は尾行中の刑事が逆に対象者からしゃべりかけられることです。虎松譲二の尾行中、気づかれそうになって喫茶店に入ったのも束の間、逆に虎松譲二が喫茶店に入ってきて絶体絶命になるのですな。

この「逆問」のやり取りが、本当に緊張感があって読んでるこちらがドキドキしてしまうほどです。地の文は鬼瓦教官の視点で描かれるため、虎松譲二の言葉と源父の言葉と、それに対してどんな行動を取ればいいのか悩みながら考えていくところが読み取れます。これが、新人の鬼瓦教官の立場と警察官のことをよく知らない読者の間でマッチングするわけです。だからこそ、鬼瓦教官の立場でドキドキビクビクしながら読み進めることが出来てしまう。本当にこういう見せ方は上手い。

そのやり取りがまた凄まじく、飲み物を注文するだけでも様々な状況を想定して動くのです。「冷たいものを頼んだらガラスのコップで来るかもしれない。ガラスは割れば凶器にもなる」とか、「ホット紅茶の提供温度は100度くらい。コーヒーが60~70度。飲み物をぶっかけられる危険性を考えたらコーヒーにしたほうがよかったのでは」とか。そのあとさりげなく紅茶にオレンジジュースを入れて冷ましたりとか。何せ犯人が隣にいるわけですから、緊張感漂いまくりなのです。その上でのこういった読み合いとか面白くないわけがない。ここはホント必見。14巻の最大の見所です。

というわけで、つまらない時が全くないハコヅメは14巻でもその面白さが健在です。バケモノだよこの作品は、読まないのは本当に勿体無い。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


ハコヅメ3巻の感想はこちら(川合先生初登場の似顔絵特別捜査本部)
ハコヅメ4巻の感想はこちら(黒田カナ伝説はここから始まった)
ハコヅメ5巻の感想はこちら(とにかく笑える内容盛り沢山)
ハコヅメ6巻の感想はこちら(伝説の笑ってはいけないお誕生日会が収録されたハコヅメの最高傑作巻)
ハコヅメ7巻の感想はこちら(煽り役としてパーフェクトな聖子ちゃんが見れます)
ハコヅメ8巻の感想はこちら(これ警察学校で習ったやつだ!)
ハコヅメ9巻の感想はこちら(色々な話が詰め込まれている、これぞハコヅメ)
ハコヅメ10巻の感想はこちら(迷惑防止条例と強制わいせつの違いが勉強になります)
ハコヅメ11巻の感想はこちら(1巻の伏線を見事回収、この日の出会いを何度も後悔することになる)
ハコヅメ12巻の感想はこちら(同期の桜完結、川合の成長を感じられる最高の展開)
ハコヅメ13巻の感想はこちら(アンボックス事件のカップルが登場)
ハコヅメ15巻の感想はこちら(奥岡島事件解決篇)
ハコヅメ16巻の感想はこちら(1巻で出てきたキャラが再登場する感動の成長譚)
ハコヅメ17巻の感想はこちら(アンボックスを読んだ後に読むと非常に切ない)
ハコヅメアンボックスの感想はこちら(警察の負の感情を全力で主張した傑作)
ハコヅメ18巻の感想はこちら(即ハメあんあん激イキスクール)
ハコヅメ19巻の感想はこちら(20巻を読むために覚悟させられる巻なのではないか?)
ハコヅメ20巻の感想はこちら(アンボックス級のシリアス話が一貫した傑作巻)
ハコヅメ21巻の感想はこちら(虎松譲二事件完結!大事件の事後処理といつものギャグパートが再開します)
ハコヅメ22巻の感想はこちら(恋愛要素満載で話を畳みに来てます)



村づくりゲームのNPCが生身の人間としか思えない - ニート引きこもりがゲーム内の神に挑戦

ニート引きこもりが当選した最新ゲームのキャラがまるで実在する人間のように行動し、そこに神として接触していくのが「村づくりゲームのNPCが生身の人間としか思えない」です。

ストーリー説明もそのままです。10年引きこもりの男がふとしたきっかけで始めた最新ゲームは、村人が馬車でモンスターから逃げるところがスタートです。そこに神として接触をしていきます。神として接触する方法は1日1回だけの神託をゲーム内へ告げること。ゲームキャラはこの神託を理解し、それに従って行動を変化させていきます。
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こういうゲーム、ありそうでなかなかまだ出てきてないですよね。実際にあったら是非ともやりたいところ。似たようなものですぐ思いつくのはアクトレイザーかな。あれは人間を導いているのである意味神託を授けるのと同じかと。他にもこういったのがあった気がするのだけど。何にせよあらゆるパターンを用意せねばならないので開発がなかなか難しい部類ですね。

さて、このゲームには昨今のソシャゲよろしくで課金要素があります。それがなんと100P=1万。10年引きこもりニートをしている主人公の手持ちなどほとんどなく、おまけに課金をしないとゲーム内キャラが死ぬような窮地に陥ります。このゲームキャラを助けるために、現実の主人公もニート引きこもりから脱却して仕事でお金を稼ぐことを決意していくのです。

なので、ゲーム内をメインと見せかけて、本当のメインは主人公がニートから立ち直るストーリーなんですね。1巻ではゲームのために手持ちのものを売りに出ることで引きこもりを脱却し、2巻以降ではいよいよバイトを始めたりそれがきっかけで家族仲も改善していく姿がうかがえます。きっかけがゲームといえども、成長の話であることは素晴らしい。

惜しいのは、作品タイトルや導入からだけではなかなかそのような話であることに気づけないということでしょうか。ゲーム内の中世世界がメインと思いきや実際はニート側がメインであることはやはり肩透かしを喰らうというか。2巻以降を読んで初めてそうだと気づきました。

加えて、主人公としても過去に色々事件があったりなんだったりという理由があって引きこもっているものの、どうもパッとしません。あまり魅力が無いのです。なのでそちらをメインで見せられても正直面白いかと言うと。。。

惜しいなあ、ゲーム内の話はそれなりに読めるだけに、そっちをメインで描いてもらって主人公側はもう少しまともか最初から課金に苦心しない状態の方がよかったような。実に惜しい。


眠気覚め度 ☆☆☆




はたらくすすむ - 妻と死別した男の第2人生は風俗店ボーイ

家庭を省みず定年退職、妻と死別し悲しみに暮れた男が仕事に選んだのが風俗店だったという「はたらくすすむ」です。風俗店が舞台ではありますが、風俗そのものがメインではなく、そこで働く66歳の新人アルバイトすすむさんの物語となります。

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とはいえ、風俗描写はガッツリあるので苦手な人は無理かも。実際のピンサロに取材しているそうで、おそらく実際のものとそう差はないものとなっているのでしょう。だからこそ、そこに勤める女の子の描写だったり裏の顔だったりがリアルで面白い。

そんな彼女たちとのやり取りを通して、死別した妻へのこれまでの態度を後悔したり、娘との関係について悩んだり、連絡を取り合っていない息子との関係改善を目指したりとすすむさんが奮闘するのが見所。元下着会社の経験を生かして女の子達の出勤や客当ての管理をバリバリしたり、女の子を気遣ったりするところもなかなかグッド。おまけに元々の優しさからか女の子達の信頼も勝ち取り、アルバイトとはいえ店の中でも重要なポジションになっていく成り上がりストーリーです。こういうのはやはり読んでて面白い。

ただ気になるのが、成長することに対していちいち妻との思い出に浸ったり妻への後悔にふけったりするところがちょっとしつこいかなと思ったり。もちろん成長するために過去を振り返って反省し前向きに対応するためではあります。なのですがその頻度が多くてちょっとしんどいかなあ。問題発生→過去を後悔→問題解決へ奮闘するという流れを毎回やるようなものなので。

とはいえ、全体的に明るく、少しエッチで、女の子も可愛く、ラクに読めます。4巻で完結してるので気楽に読んではいかがでしょう。講談社なので定期的に1巻が無料になるのもグッド。


眠気覚め度 ☆☆☆



忍者と極道 6巻 - 生首エンターテイメントはグラス・チルドレン篇で大きな転換期を迎える

現在連載中の中でもマジパネェ存在感を放出しまくってるのが「忍者と極道」ッス。何がパネェッてとにかく生首が大量に飛ぶ。飛ぶ飛ぶ飛ぶ。そして生首がそのまま喋る。んで、死んでいく。大物以外は最後必ず生首なんじゃないかってくらい飛ぶ。だのにその描写に一切不快感を覚えさせず、むしろ清々しい清涼感すら感じてしまう。つまり生首を飛ばすことを極上のエンターテイメントに仕立て上げている。それが「忍者と極道」が傑作であるゆえんなのです。

その「忍者と極道」の6巻が発売されました。いやはや、毎週Web更新も追っかけているので話を理解しているとはいえ、やはりこうして単行本としてまとめて読むとまた面白いですね。

忍者と極道のWeb連載はここで読めます。

さて、6巻の舞台は「割れた子供達(グラス・チルドレン)」篇のバトル開始からとなっています。総理官邸に潜入したガムテ率いる大量のグラス・チルドレンと、逃げ惑う米国大統領を含めた首脳陣、それを守りつつグラス・チルドレンをブッ殺していく忍者、そしてその場にいた極道側の親玉である輝村極道。極道の一部隊であったグラス・チルドレンと極道(きわみ)がぶつかるということが、このグラス・チルドレン篇がこれまでと大きく違った転換期の話だということが読み取れます。

これまではあくまで忍者と極道との戦いに終始しています。その過程で忍者も極道も双方少しずつ重要人物を失い、戦力を削られている流れとなっていました。

しかしこのグラス・チルドレン篇は、単に忍者(しのは)とガムテの因縁に留まらず、ガムテと極道(きわみ)の親子因縁にも踏み込んでいます。ある意味、忍者と極道という2勢力の争いに第3勢力が狼煙を上げたとも言えるでしょう。ということは、このグラス・チルドレン篇は「忍者と極道」のストーリーとして大きな意味を持っているはずなのです。

6巻の最後は遂に忍者(しのは)と極道(きわみ)が戦闘中に出会ってしまうところまでです。そう、「フラッシュ☆プリンセス」を共通言語として深い友人関係となった相手が、本来は敵対する相手だったと気づいてしまうことになります。

友人が実は敵だったという、ある意味ベタベタな王道展開ではありますが、これがどうしてこんなにも面白く読めるのか。それはやはり、キャラの立て方が素晴らしいということにあるでしょう。

その大きなポイントとしては、忍者も極道も互いに信念を持って行動していることです。忍者は裏世界で世のために極道をブッ殺すことを生業とし、その姿を表すことなく極道を処分するという信念。極道は長年辛酸を舐めされられ続けた忍者を駆逐してやろうという信念。お互いの信念がぶつかるからこそ、お互いの正義がぶつかるからこそ、どちらも全力で事を成そうとすることに我々は惹かれるのです。

また、それらに軸を起きつつも、日常生活では普通の人間と同様に些細なことに悩んだり、好きな趣味があったりという人間臭さが窺えるのが良いスパイスとなっています。そしてその対象が忍者(しのは)も極道(きわみ)もプリキュアをモチーフにした「フラッシュ☆プリンセス」というアンバランスさがまた良い。しかも「フラッシュ☆プリンセス」を忍者(しのは)が推すおかげで関係者や総理大臣にまで普及していってるのがまた愉快。どんだけ作者はプリキュア好きなんだろう。

しかもですよ、その「フラッシュ☆プリンセス」も細かい設定がされていて、忍者(しのは)も極道(きわみ)も推しキャラがヒースたんというプリンセスの敵キャラで、プリンセスとヒースたんの関係性がまさしく忍者(しのは)と極道(きわみ)と同じというのがまた憎い。好きなアニメと同じ事を現実でやっていると2人が気づいた時、その関係がどうなるのかワクワクしてたまらないです。そういうシナリオの立て方も本当に上手い。

話も設定も面白い上に、絵の構図もカッコいいものが多いことも面白さに拍車を掛けています。例えば6巻最初の2ページですが、コミック開いた最初からこうですよ。
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警備員の生首を飛ばして回るグラス・チルドレンに対して、
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グラス・チルドレンの生首を飛ばして回る忍者(しのは)。対比で描かれててもの凄くカッコいい。漫画の見せ方というのが凄く上手い。この2ページだけで、互いの勢力がどういう動きをしてるのかわかるのがホント上手いです。しかも勢いがあるし、前述したように生首が飛んでるのに何故か清涼感があるし。ベリーグッド。

あともの凄く好きなのが、大物勝負になった時に互いに名乗り上げるところです。それがたまらなくカッコいい。これからガチでタイマン張るから覚悟しろよテメーって感じでホントカッコいい。パネェ。
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このスタンスは絶対崩してないのが本当に素敵。負けた方も全力尽くして、信念持って戦ったが敵わなかったという見え方するのが本当に良い。こう、厨二病じゃないですけど、子供の頃カッコいいと思ったものが全部詰まってる感じがするんですよね。漢気溢れるというか。忍者も極道も両方がものすごくカッコいいから素直に好きになれます。そして忍者側は殺した後に必ず「ブッ殺した」って決め台詞を告げるのもカッコいい。言葉は汚いのにそのアンバランス感がたまらないです。

カッコいいと言いつつ、極道側は一般人殺しまくったり法で裁くにはぬるすぎるようなことばかりしてるので、実際にこんなのがいたら笑ってる場合じゃないのだけど、それが何故か読んでて不快にならないのがまたこの作品の凄いところ。キャラが立ってるからなんだろうなあ。一応忍者側が主人公なのだけど、極道の方を応援したくなってしまうのは忍者が強すぎるからか、それとも極道側の方が妙に人間臭いからか。

というわけで、「忍者と極道」は今読むべき極上のエンターテイメントです。まだ6巻までだし、オンラインでも多少は読めるので読み始めるなら今のうち!


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


7巻の感想はこちら(忍者と極道の共闘は生首エンターテイメントを最高潮に盛り上げる)
8巻の感想はこちら(グラス・チルドレン篇最高潮、ガムテと忍者の決着迫る)
9巻の感想はこちら(ガムテが主人公になりました)
10巻の感想はこちら(第2部スタートの狼煙が上がる極道革命)





書いてて「忍者(にんじゃ)」と「忍者(しのは)」と「極道(ごくどう)」と「極道(きわみ)」の表現をどうしようか四苦八苦しました。少なくとも忍者(しのは)と極道(きわみ)は読み仮名振らないと何のこと言ってるかわからないよね。

神無き世界のカミサマ活動 - 異世界で起こす宗教戦争

宗教という概念が無い異世界、そこで宗教戦争を勃発させるのが「神無き世界のカミサマ活動」です。異世界ものの中では異色系の作品と言えると思います。これがなかなか面白い。

まず舞台となる異世界には魔法という概念はありません。そしてありがちなスキルだのレベルだのの要素もありません。当然修行がどうのこうのも無ければ、ギルドに登録してハンターランクがみたいな話もありません。まずここが新鮮。

そして世界観としては、単に文明レベルが低いだけでなく、宗教どころか神という存在もありません。おまけに性欲という概念も無く、命じられたら生殖活動を行い人口を増やし、命じられたら死ぬという世界です。なんともいびつな世界。

そんな世界に来たのは、現代の新興宗教教祖の息子に生まれてしまった卜部征人。新興宗教の「産霊の儀」という、三日間水中に沈められる儀式の結果命を落としてしまいます。その時に願ったのが「神も宗教もない世界に生まれ変わりたい」ということ。
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こうして、本当に神も宗教も無い世界に転生してきます。前述した通り、本当に宗教も無い世界なので、征人の望みどおりの世界です。その世界を堪能するのですが、異世界で仲良くなった相手が命令に従って死を迎えることに抗おうとすることで、新興宗教として崇めていた神が降臨することとなります。

ここからがこの作品の真骨頂。この神が他の異世界ものでいうところのチート能力を使えるのですな。ただし使用には制限があって、神にどれくらいの信者がいるかが能力を使用できることの指標となります。村の仲間たちを救うため、神の信者を増やして、死の命令に抗おうとするのです。
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と、ここまでが最初のお話。このまま宗教活動を始めて信者を増やして国に逆らえーみたいな話だと思うでしょう。が、違うんです。この先が本当のメインの話になるのです。

それは、神となりえるのは征人の宗教であるミタマだけでなく、この世界に存在する他の神という存在も出てくるということ。それらが同時に動き出し、宗教活動および信者集めをスタートすることとなります。つまり、新興宗教同士の宗教戦争が勃発するわけです。この設定が実に面白い。

異世界ものとはいえ、単にチートでおれつえーするのではなく、むしろ周りの神の方がやり手でどんどん勢力を広げていく様がいいですな。敵は強い方が読んでて面白い。

また、宗教が元々無いということと、飢饉だったり災害だったりが目立って発生しているわけではないので神に対する求心力がそもそも無いところから信者を集めなければならないというあの手この手もいいですね。まだ出てきていませんが、おそらくそのうち人心掌握するためにどういうことをするのか等も出てくるのではないでしょうか。そういったアプローチはあまり見たことがないので新鮮です。

絵はそんなに上手くはないのですが、笑えるようなネタもあり全体的に明るい展開なので読みやすいです。それよりもストーリーが面白いのでグイグイ読んでしまいます。まだ3巻までしか出てないので、読み始めるなら今のうちかと。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


4巻の感想はこちら(宗教と熱狂は紙一重)
5巻の感想はこちら(宗教の最小単位は家族)




 

2021年週刊ビッグコミックスピリッツ32号ざっくり感想

2021/07/12 週刊ビッグコミックスピリッツ32号のざっくり感想となります。
市場できゅうりを買ってきたら極太のきゅうりでした。ここまででかくなるものかと。せっせと乱切りにして浅漬けにしておつまみにします。夏野菜は美味いねー。

それでは今回も適当にいってみましょー。


■アオアシ ブラザーフット (新連載)
  アオアシのスピンオフで葦人の兄篇やるのはいいとして作者同じでやるの??同じ雑誌で2本連載とか過去に例を見ないのでは。。。隔週でどっちかずつとかになるのかな。

■チ。- 地球の運動について -
  おっとここで年代ジャンプかー。25年経ったら宗教観も色々変わったりしてるんだろうか。

■くーねるまるた ぬーぼ
  帰ってこれない発言の真意は眠くて打ち間違えて放置とか最低最悪の事情だった。岡山篇やりたいならそんな周りくどいことする必要ないじゃないか、そういう暗い流れが出る漫画でもないんだし。なんでこんなイライラするんだろうな、たったこれだけで。

■プラタナスの実
  朋美ちゃん急変で大きく動き出した感がある。

■二月の勝者 -絶対合格の教室-
  貧困家庭のこういう話を見ると自分が如何に恵まれてたのかと思ってしまう。

■結婚するって、本当ですか
  海外赴任は条件良ければ断らない派。

■土竜の唄
  ああそうか蜂乃巣会って日本最大のヤクザだったのか。そして映画化第三弾に合わせて生田斗真の画像があったろうところが白塗りで草。さすがジャニーズ電子版には許可してないぜ。

■うきわ、と風鈴。-友達以上、不倫未満-
  まあまだ不倫じゃないし、、、

■バトルグラウンドワーカーズ
  最終章あと6話って出てしまった。あと6回で最終回なのかな。

■アオアシ
  遊馬ってずっとAチームだったのにあまり凄さを感じさせない凄いキャラだったなそういや。それをこういう形で輝かせていくのは素敵。

■ダンス・ダンス・ダンスール
  エロすぎるぞこのかーちゃん。

■夫を噛む
  めずらしく夫を噛んでない系エンド。良き。

■気まぐれコンセプト
  ほーっ、テレビのリモコンってHuluボタンとか搭載されるようになってるんすねー。ただそれって公共電波じゃなくて通信電波受けてるわけだから、テレビも観る事が出来るディスプレイという方が正しいのでは。



週刊ビッグコミックスピリッツ 2021年32号【デジタル版限定グラビア増量「飯豊まりえ」】(2021年7月12日発売) [雑誌]
週刊ビッグコミックスピリッツ編集部(著), 小林有吾(著), 高橋のぼる(著), 魚豊(著), 高尾じんぐ(著), 東元俊哉(著), 高瀬志帆(著), 若木民喜(著), 野村宗弘(著), ゆうきまさみ(著), 竹良実(著), ジョージ朝倉(著), カレー沢薫(著), 鳥飼茜(著), 水瀬マユ(著), ホイチョイ・プロダクションズ(著)

¥400


刷ったもんだ! - 印刷屋がテーマの職業漫画

世の中に職業関連の作品は数多あれど、なかなか見たことがなかった印刷屋をテーマに展開されるのが「刷ったもんだ!」です。

主人公である新人の真白悠が印刷屋の仕事に戸惑いながらも仕事を徐々に覚えていくという王道の職業作品。1話からいきなり18禁の同人誌からスタートさせるのは漫画を読む人にとってグッと掴むためなのでしょう。そのあとも半分近くはエロ関連の印刷ばかりしているようには思えるけれども。

真白悠は元ヤンということで、目つきが悪くて酒を飲むと地が出てヤンチャしてしまうという設定。とはいえ、この元ヤン設定いるかなというくらい、元ヤン設定が生かされていないような。単なる漫画好きの仕事に一生懸命な新人なのだけど。目つき悪いくらいでよかったんじゃないだろうか。
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主人公の真白悠の対極として存在するのがこの黒瀬宏文。仕事は丁寧でめちゃめちゃ細かい上、つっけんどんな態度でなかなか交流も難しいという位置づけ。いるいるこういう人どんな会社でも態度悪いけど仕事は出来るとかね。またそういう態度が実は単に人との距離感が計りにくくて近づきたいのに近づけないヤマアラシのジレンマだったりね。

話は主にこの2人が中心で進み、それがコミケに繋がったり趣味のオフ会に繋がったり。特筆すべきこんなストーリーが面白い!という感じではありませんが、職業漫画としてのあるあるを全面に出していますので安定した面白さで読めます。

なので好きな人にはめちゃめちゃハマると思いますこの作品。絵も綺麗だし、話もわかりやすい。キャラも立ってるし、印刷の仕事に関しても丁寧に描写されています。講談社作品だと1巻が無料のタイミングも多いので機会があれば読んでみてはいかがでしょう。


眠気覚め度 ☆☆☆

 

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