スプラッタ

鋼鐵の薔薇 2巻 - 戦闘描写も拷問描写も丁寧過ぎて素敵

薔薇戦争のランカスター派を描く「鋼鐵の薔薇」2巻です。

いやー、前回の感想でも書いたのですが、本当に描写が丁寧。きちんとしっかり色々最後まで描ききっています。

2巻の最初は反乱軍ジャック・ケイドが2人の捕虜を互いに殺し合わせ、生き残った方を解放するというお話なのですけど、この描写に2話掛けています。

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「約束は約束だ 生かしたままで解放する」


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「脚折って 目ぇえぐってからな」

この非道っぷり。そしてこの作品のすごいところは、決闘シーンはもちろんのこと、脚を折って目をえぐるところまでしっかり描ききっていることなのです。

脚を折るシーンは当然あるとしても、目を抉るシーンはなかなか見れるものじゃないです。おまけに抉られてる最中に痛みで地面を掻きむしって爪が剥がれてしまうところとかも細かく描いてます。

不思議なのが、自分は痛いシーン結構苦手なのですけど、このシーンはきちんと見れるのです。現実味がないからなのか、久慈光久節は読みやすいからなのか、それは正直わからんですなあ。


話の方も、中世あるあるというか、偉い人の陰謀がままになるようになるというか。手のひらで踊らされているジャック・ケイドもなんだか可哀想になってくる始末です。偉いやつは悪いやつ、いつもの流れだけどこれがやはり面白い。

ジャック・ケイドとブラッド・ハーディングの戦いも、そのあとの戦いも本当に丁寧だし、読み応えがあります。

惜しいのは、戦闘が多いのであまりシナリオが進んでいないところでしょうか。新キャラや謎組織が出てくるものの、まだまだ色々伏線ばらまいている状態です。続きが楽しみになるなあ。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


1巻の感想はこちら(狼の口の久慈光久先生新作は薔薇戦争が舞台)


鋼鐵の薔薇 2巻 (青騎士コミックス)
久慈 光久(著)
KADOKAWA 2023-05-19T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.8
¥713


北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝 4巻 - トキかと思ったらアミバ!

アミバがきっちりとトキだった設定で話が進んでいく「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」4巻です。

4巻で改めて感じましたけど、ホントこの作品天才ですわ。「北斗の拳」の読者が、ましてや既に原作を知らなくてもネットのどこかで誰もが知っている設定をものの見事に回収していくさまに本当に腹を抱えて笑ってしまいました。

4巻はアミバ編がメインなのですが、アミバという設定は最後の最後まで出てこず、そこまではずっとトキが凶悪になった設定で続くのです。しかしドラマならでは、というか芸能界ならではの外圧によってトキを善人設定にすることになり、その力技で解決したのがアミバという偽物を急遽用意したという流れになっています。

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「…ワンパンで出血って弱体化激しくないですか!?」「前回まで互角以上だったのに!!」「しょ~がねぇだろ!!伝承者候補じゃなくなったんだから!!」

このコマでひたすら笑ってしまったwww

急遽アミバという新キャラとなり、直前まで強敵だったトキの超弱体化、そこからあれよあれよと倒されるアミバの流れ、本当に原作通りなんですが、原作でもケンシロウがやられすぎ感あったところを見事に回収しています。

本作ではドラマだからという理由付けがありますが、この流れは原作の連載時にもそんな感じだったのではないかと思えるところがまた面白いのです。

こういう、読者が疑問を持っているものに対して全部ドラマならではの答えを用意しているのが、本当に原作ファンに刺さりまくると思うのですよ。しかもネットとかで記事にしたら単にツッコミ記事になるものを、ドラマ仕立てで理由をつけてるところがやはり最高。ホント最高。ホント天才だよこの作品は。


4巻では他にも気になるところへ次々とツッコミを入れています。
例えばデビルリバース。

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「これ人類なのか!?世紀末にいったい何が!?」「まずなんで巨大なんだ!?」「どうやってここまで育ったんだ!!」


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「…でかい理由説明無しで終わったな…」「世紀末なんでもありかよ…」

ドラマとしての回答はないのですけど、それがある意味世紀末のドラマだからなんでもいいんだと説明しているようです。このシーンもまた笑ってしまった。


あとはよく言われる地下シェルターのシーン。

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「「抱っこしろよ」って視聴者に言われますよ!?」「大勢の子供達が大石チャンの演技を引き出したんだぞ!?この画を使わねぇでどうすんだ!!」

そうです、あの「もうちょっと詰めればひとりくらい入るだろ」のシーンです。これはドラマ特有の理由でオチをつけてました。ただ演者はツッコむという。読者の感想を代弁していくのがこのドラマ撮影伝なのだなあ。


感想書いてて思ったのは、読者のあらゆるツッコミをベースに、それを如何にドラマとして理由をつけて描いていくかの作品なんですよねこれ。そりゃ面白いわ、ファンにとっては。


※余談:この記事のタイトルは20年ほど前に出た北斗の拳解説書に収録されていた百人一首の中の「トキかと思ったらアミバ!」から取っています。どちらに収録されていたのかは覚えてないのですけど、この一首があったのは強烈に覚えているくらい好きです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


1巻の感想はこちら(実写ドラマ北斗の拳で人が爆発する)
2巻の感想はこちら(同じネタの繰り返しだけではなく新しいネタの掘り下げ方が上手い)
3巻の感想はこちら(本当に実写ドラマの現場があったのではないかと錯覚させる傑作)


北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝 4巻 (ゼノンコミックス)
武論尊(著), 原哲夫(著), 倉尾宏(著)
コアミックス 2023-05-19T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.9
¥634


世紀末覇王列伝―北斗の拳究極解説書 (ジャンプコミックスセレクション)
原 哲夫(著), 武論尊(著)
ホーム社 1999-04T
5つ星のうち4.5
¥1 (中古品)


北斗の拳2000―究極解説書part 2 (ジャンプコミックスセレクション)
原 哲夫(著)
ホーム社 1999-12T
5つ星のうち4.8
¥157 (中古品)


大ダーク 6巻 - ライトヘッド教団に乗り込んで骨を大量ゲットだ!

戦闘描写が多かった「大ダーク」6巻です。

5巻までで4匹の害悪が勢揃いし、敵になると思われるライトヘッド教団のところへ乗り込むこととなっていました。そこでダメ丸がやられちゃってどうしようからの6巻になります。

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そこからザハ=サンコの大立ち回り。ミートボールスパゲティことサンコが次々と骨を抜いていきます。このシーンとか、立場が逆ならホラー映画のワンシーンのようで凄く好き、笑ってしまった。

そして無敵と思われたサンコの骨取り斧もあんなことになったり、死ま田=デスの肉にかける欲望はすごかったりとバトルメインの展開でした。とはいえ、お話もかなり進んでる感じがしたのでグッド。

ただ、途中で死ま田とサンコがあんなことになったりもしたわけですけど、もう理屈がなんなのかよくわからずただただすごいとしか思えないのがすごいです。なぜならそんな展開でも面白いと感じてしまえるのだから。

なんなんでしょうねこの謎の魅力。ドロヘドロの頃からそうなんですが、林田球の魅力は本当に筆舌に尽くしがたいのです。読んだら最後、その世界の魅力に惹かれてしまいます。


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ところでピカス様がニカイドウに似てるのは何か理由があるのだろうか。。。いや、死ま田=デスも能井に似てるから、そういうことなんだろうけども。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


4巻の感想はこちら(この独特の世界観が堪らない)
5巻の感想はこちら(説明が難しい面白さは一度読んで体験してほしいです)


大ダーク(6) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
林田球(著)
小学館 2023-04-12T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.8
¥968


北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝 3巻 - 本当に実写ドラマの現場があったのではないかと錯覚させる傑作

北斗の拳が実写ドラマだった設定がまだまだ続く「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」3巻です。

3巻はレイマミヤ初登場の牙一族編とジャギ編を取り上げています。相変わらず設定を作るのが上手くて、本当にこういう現場があったのではないかと錯覚させるほどの出来栄えです。ホント面白いなコレw

何が上手いって、原作のシーンに合わせて出演者を無理やり出演禁止にしたりして、そのシーンをどうしても作らざるを得なかったみたいな流れにしてるんです。

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「嘉崎くんと二見さんが出られなくなったので レイとマミヤ抜きでジャギ編を書き直してほしいんです」

いやあ、ジャギ編でレイとマミヤが出てこなかったのは降板してしまったからだったんですねえ、これは知らなかったなあ。

また、ジャギ編で存在するシンをそそのかすシーンも実は色々と背景があるんです。それはジャミングの嘉崎が降板してしまったから、スポンサーが降りようとしちゃったんですねえ。

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そこに現れた救世主が、シン役の菱川くんなんです。

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シンの出番は終わってしまったはずなのだけれど、ジャミングの出演を続けるために友情出演してくれた菱川くん。こんな裏事情があったから、ジャギがシンをそそのかすシーンが存在したんですな。いやはや納得納得。

と、こんな感じでホントにありそうな現場問題が続発するのが本当に面白いんです。こっちが真の原作なんじゃないかと思うくらいw

この作品、実に素晴らしいアイデア作品です。実は原作は実写ドラマだったという、発想を逆転させてニカワで固めて高温で焼き上げたら利休好みの真っ黒な茶碗が出来たけど秀吉は派手な色が好きだから切腹させられたってくらい斜め上を行ったアイデアなんじゃないでしょうか。こんな作品があるから漫画を読むのはやめられませんなあ。


正直このまま原作全部やってほしいくらい好きになってしまいました。早く続き読みたいです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


1巻の感想はこちら(実写ドラマ北斗の拳で人が爆発する)
2巻の感想はこちら(同じネタの繰り返しだけではなく新しいネタの掘り下げ方が上手い)
4巻の感想はこちら(トキかと思ったらアミバ!)


北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝 3巻 (ゼノンコミックス)
武論尊(著), 原哲夫(著), 倉尾宏(著)
コアミックス 2022-10-20T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.9
¥704



おまけ
顔に似合わず真面目で現場に馴染もうと色々なこと考えてる嘉崎くん好きw
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ヘルドッグス 地獄の犬たち 5巻 - 情に討たれた男たちの物語完結

巻を追うごとに面白さが加速した「ヘルドッグス 地獄の犬たち」5巻最終巻です。

本当に面白かったです。5巻は最初から最後まで魅入るように読み続けてしまいました。

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「お前を突き動かしてるのは 悪党どもをぶっ殺してやりたいという "殺戮欲"だ」

この最終巻で出てくる話が、誰しもが欲望や感情、私情で動いているということ。阿内は兄貴分警官の復讐のために十朱を執拗に狙い、兼高は命令されていることを理由に悪党を殺害する欲望を満たしている。

そしてそれらは決して彼らだけでなく、潜入捜査官として潜り込んだはずの十朱が極道に身を落としてしまった理由でもあるということがまた衝撃的な事実となりました。

その理由が、現在の兼高と同じ様に極道の身内との情だというのだからまたたまらない。巧みに計算された策略、高度に考え抜かれた陰謀かと思いきや、その本質は人間の感情が突き動かしているのです。


それと全く同じ状況に陥ってしまっている兼高。彼は潜入捜査をする上で室岡というパートナーと何年もコンビを組んで共に殺人を犯し、彼らの信頼関係は盃を分けるほどとなっています。最後には裏切らなければならないのに。

この室岡、殺人に一切抵抗が無く、人を殺すことを全く厭わない存在。当然、兼高が敵とわかれば、喜んで殺害に臨むものと考えられていました。


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その室岡が。血も涙もない室岡が、潜入捜査官の疑いが掛かった兼高への「逃げろ」と言葉を掛けます。この室岡の感情の動き方、そしてここからの室岡との別れが、壮絶で切なくてたまらないのです。

キリングマシーンとまで言われている室岡も、その感情では兼高へ絶大な信頼を寄せており、例え本当に警察官だったとしても同じ進言をしたのでしょう。その情の厚さ、その関係を築けたことが読み取れるのが本当に素晴らしい。

そこまで思ってくれる相手を、使命だからといって裏切られなければならないのか、そんな葛藤も兼高にはあるはずなのです。それに悩んで苦しんで決断していく姿がとても切ない。

そうしてこれまで積み上げてきたものを全て破壊し、潜入捜査官の使命を果たそうとする流れが、これもまた人間臭くて実に良い。読んでよかったなあ。


ラストも色々納得出来るように収束してますし、5巻という程よい長さで完結してるのも非常にグッドです。そのぶん話がスピーディだし、だのに感情の揺れ動きははっきりわかるしでとても面白かったです。

こういう作品こそもっともっと世間の目に触れて売れるべきですな。映画もやってるので、もう少し流行ってくれるんだろうか。捉え方によってはBL要素も強い気がするので、そっちの方向で好きな人も増えそうな気はします。

とはいえ、残虐描写も多いので、そこがちょっと難点なのかも。個人的にはもちろん絶対オススメの作品となりました。

超ハードボイルドで、でも出てくる男たちは実は感情で突き動かされているだけで、ある意味すごく小さな人間関係の話なのかもしれないのに、立場のせいで物凄く規模が大きくなってしまっただけとも読み取れるし。硬派なのに悩める男達の物語という位置づけかな。

なんにせよ、名作です。読むべし。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


1巻の感想はこちら(超画力で描かれるヤクザの世界)
2巻の感想はこちら(導入部分の要素が大きい2巻、話が動くのは3巻からかな)
3巻の感想はこちら(急展開して一気に面白くなりました)
4巻の感想はこちら(面白さが更に加速していく)


ヘルドッグス 地獄の犬たち 5 (ヒューコミックス)
イイヅカケイタ(著), 深町 秋生(その他)
KADOKAWA 2022-10-04T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.6
¥673


運びの犬 7巻 - 痛みを感じないからって読者を痛ませなくていいじゃないですか

見てるだけで痛い。そんな「運びの犬」7巻です。

いや痛いんですよ。個人的に、痛みが想像出来るシーンってすごく苦手なんですが、痛いんですよ7巻は。

どう痛いかって、日本刀の刃を手で握るなってことですよ。しかもそのまま滑らせないでよ。書いてるだけで痛い痛い。

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もうそのシーン見たくないのでその直前のシーンでごまかします。

で、肝心のお話なんですが、樫の家が実は裏では、、、って話はあるあるだとしてもしっかり話が作られているし、そこから逃げ出して洗脳から説かれた女の人が子供持って幸せに暮らしてたとかの話はなかなかいいと思います。

ただ、全然理解できないのが、この日本刀の男と戦わなきゃならない理由。

前巻まででもそこまで敵対している風には見えなかったし、今巻でも日本刀の男が別の理由で樫の家に乗り込んできているだけであって、全然対立しているように見えないです。だけどなぜか戦ってる。

そこが全く理解できなくて、そして痛いシーン見たくないから見返せなくて、という状況です。

いや、思い出すだけで痛い。見ただけで痛みを感じさせるってことはしっかり描写がわかるように描けているということで漫画としての技術力は確かだってことなんでしょうけど。

昔からダメなんですよね。リストカットシーンとかもダメ。なんていうか、想像できる痛みがダメ。

逆に、腕が吹っ飛んだり足が吹っ飛んだりは全然平気なんです。指が飛ぶシーンも平気。でも普通に現実的な指が切れるシーンとか、紙でスパッと切るシーンとか苦手。

昔でいうと、「るろうに剣心」で蒼紫の小太刀に対抗するために逆刃刀の刀身を握るシーンも苦手だった。あれですら痛い。

ああ、映画のSAWで足切断するシーンとかはダメだったなあ、直視できない。リアリティあるとダメなんですね。


そんなわけで痛みの話ばかりでしたが、もう痛いシーンは勘弁してくれの「運びの犬」7巻でした。面白さとは全然別の理由できつくなってきたなあ。漫画でここまで拒否反応出たのは初めてかもしれん。


眠気覚め度 ☆☆☆


4巻までの感想はこちら(AV女優の運び屋だけど専門は暴力の男)
5巻の感想はこちら(新章突入もちょっと唐突感がある)
6巻の感想はこちら(カルト宗教に殴り込み)


運びの犬 7 (ヤングチャンピオン・コミックス)
清水ヤスヲミ(著)
秋田書店 2022-09-20T00:00:00.000Z
5つ星のうち5.0
¥660


ヘルドッグス 地獄の犬たち 4巻 - 面白さが更に加速していく

超硬派エクストリームエディション「土竜の唄」こと「ヘルドッグス 地獄の犬たち」4巻です。実は3巻と同時発売です。おまけに5巻は10月に発売されます。映画化に合わせてということでしょう。

3巻も急展開して面白かったのですが、4巻はさらに面白さが加速しています。

3巻で三羽ガラスの土岐こと、潜入先のオヤジを殺せと警察上官の阿内から命令をくだされる兼高。一方で、裏を引いているのは警察だと読み取り、阿内を攫えと命令する東鞘会会長の十朱。

2人のボスに翻弄される兼高が、警官であると共に、極道としても馴染み始めている兼高の葛藤がたまらなく面白いです。

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「十朱も阿内もどちらも狂ってる」

任務を遂行し続ける兼高。その葛藤と、状況を作り出しているボスたちの異常さを次々と実感していきます。

阿内のヤバさも4巻で大きく表現されてきました。何よりも、十朱が阿内に目をつけているのに気づいているはずなのに、わざと兼高達に捕まって拷問を受ける狂気。

3巻まで読んでいる読者ならわかると思うのですが、ヘルドッグスで繰り広げられる拷問は指折る足折るは当たり前。最初の段階から身体に大きな傷を負わされます。

そしてそれを理解しているはずの阿内が潜入の為に拷問を受けるのです。よっぽど兼高を信頼していないと出来ないことであり、その綱渡りを実際に実行してしまうのだから恐ろしい。


話もテンポよく一気に進みます。元々原作が小説ですから、あまり長丁場の作品にする予定は無いのでしょう。

だとしても、その中で人間ドラマがあり、極道の仲間たちと徐々に信頼を深めていく兼高がしっかりと描かれているのですから上手いです。


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「今の兼高にとってこの仲間たちといることが楽しかった」


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「はじめからわかってたはずだ……いつか……皆を裏切り 場合によっては息の根を止めなければならないときが来ることを……」

話が進むにつれ、十朱に近づくにつれ、これまで楽しいと思えた極道の仲間たちを裏切らなければならなくなる。果たして自身はそれを本当に望んでいるのか。狂気染みたボスに従うことは自信の信念として正しいことなのか。

人殺しという葛藤に加え、身近な仲間に対する葛藤も抱えながら、それでも十朱に近づくために任務をこなしていく兼高の心情描写がお見事です。1巻でも面白くなりそうとは思ってたけど、こんなに面白くなるとは。


次の5巻でラストのようですが、結末が全然読めないのでまだまだ楽しみです。


眠気覚め度 ☆☆☆☆


1巻の感想はこちら(超画力で描かれるヤクザの世界)
2巻の感想はこちら(導入部分の要素が大きい2巻、話が動くのは3巻からかな)
3巻の感想はこちら(急展開して一気に面白くなりました)
5巻の感想はこちら(情に討たれた男たちの物語完結)


ヘルドッグス 地獄の犬たち 4 (ヒューコミックス)
イイヅカケイタ(著), 深町 秋生(その他)
KADOKAWA 2022-09-02T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.9
¥673


ヘルドッグス 地獄の犬たち 3巻 - 急展開して一気に面白くなりました

「土竜の唄」ベリーハードエクストリームエディションの「ヘルドッグス 地獄の犬たち」3巻です。

なんと3巻と4巻が同時発売。おまけに5巻は10月発売予定でしかも完結巻と、一気に展開が早まりました。おそらく実写映画版に合わせてのことでしょうなあ。

3巻に入って、話が急展開して一気に面白くなりました。ホステスに扮した殺し屋の撃退、東鞘会襲撃と三羽ガラスの死、兼高の大出世によるターゲットへの近づき、裏で手を引く警視庁上官と、めくるめく展開に息をつく暇もありません。

それらの戦闘シーンだったり、仁義溢れる極道ならではのやり取りだったりも絵が上手いおかげで凄く読みやすく、そのハードボイルドな世界観に惹かれていきます。


そんな中で面白いのは、潜入捜査官である兼高の心情の変化です。警察の司令は潜入して組長の十朱が持つ極秘ファイルを入手すること。目的達成に向けてまずは十朱に近づくために、3年以上も組の殺し屋として成果を上げ続けてきた兼高。

1巻や2巻では任務のために殺人を犯す罪に苛まれてひたすら苦しんでいましたが、3巻では死線をくぐりあった極道たちを親身に思い始めるようになります。

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いくら憎き極道といえど只の人。ましてや弟分となる彼らとの関係は決して仕事だけと割り切れるでもなく、徐々にその関係性が近くなっていきます。

しかし兼高は潜入捜査官。最後には彼らを裏切るのが使命。警察として動き続けることが出来るのか、それとも極道に染まりきってしまうのか、そういった葛藤が非常に面白いです。

極道側もまた、信念や仁義の元に動く人間が多いのが魅力的で、それが兼高をより一層悩ませています。


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三羽ガラスの一人であり、潜入した兼高の親父にもあたる土岐、彼もまた兼高の手に掛けるターゲットとなってしまうのか。もしくは極道の情に触れたことで警察としての使命を果たすことは出来ないのか、まだまだ目が話せません。


いやホント、ハードボイルド。話も急展開してそのスピード感が非常に面白い。グロいシーンも多いのでグロ耐性が無い人には辛いかもしれませんが、そこが大丈夫なら是非とも読むべき作品だと思います。


眠気覚め度 ☆☆☆☆

1巻の感想はこちら(超画力で描かれるヤクザの世界)
2巻の感想はこちら(導入部分の要素が大きい2巻、話が動くのは3巻からかな)
4巻の感想はこちら(面白さが更に加速していく)
5巻の感想はこちら(情に討たれた男たちの物語完結)


ヘルドッグス 地獄の犬たち 3 (ヒューコミックス)
イイヅカケイタ(著), 深町 秋生(その他)
KADOKAWA 2022-09-02T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.7
¥741


忍者と極道 10巻 - 第2部スタートの狼煙が上がる極道革命

壮絶な戦いと生首が飛び交う令和最高のエンターテインメント「忍者と極道」10巻です。9巻まででガムテのグラスチルドレン篇が終了、10巻からは互いの立ち位置が明確になった忍者と極道の戦いのある意味第2部スタートと言えるでしょう。

忍者は8人、現在の死者は3人。破壊の八極道は文字通り8人、現在の死者は3人。完全に拮抗した戦いが繰り広げられています。

そんな中、ガムテ戦の最後で互いの存在が宿敵と認識してしまった忍者(しのは)と極道(きわみ)、極道(きわみ)は己の極道信念の元、忍者殲滅を目的としているのでその気迫が揺るぐはずもなく。一方で忍者(しのは)は数少ない友人が倒すべき宿敵であることに心を揺さぶられることとなります。


そうして舞台は次のシーンへ。1巻以来の極道(きわみ)が極道たちに演説することへ。この演出が明確な第2部のスタートという位置づけにもなるでしょう。

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「今こそ熾さん!!!極道革命」

カッコいいんだよなあ、この人。最大の宿敵であり、最大のカリスマである。やはり敵キャラというのは信念を持った魅力に溢れたキャラであるべきというのを思い知らされます。

そんなカッコいい極道(きわみ)なんですが、カッコよく恐ろしいことを口々に語るのが妙に面白いです。

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「愚鈍な債務者を一家心中に追い込んだだけで外道と誹謗されし極道よ」「女子供の臓腑抉り捌いただけで畜生と中傷されし極道よ」

一家心中に追い込んだだけ、女子供を捌いただけってのがこの真面目なシーンにアンマッチでそれだけで面白いw

「忍者と極道」の極道側は凄くカリスマ性があってカッコよく描かれてるんですが、その信念は邪悪そのもので社会の害悪に間違いないという設定なのが非常に面白いんですよね。

少なくとも、自分含め数多くの読者が忍者よりも極道側に魅力を感じるはずなのですが、こいつらのやってることは最悪なことだと意識づけることで、忍者が極道をブッ殺す理由付けをブレさせなくしています。

中途半端にいい人を気取ったり、仁義に厚くて堅気には手を出さない、所謂お話の中でよく描かれるヤクザではなく、決して社会からは許されることのない極悪の悪役としてしっかりキャラ付けしてるのが見事だと思います。

これでまともな社会性を持っちゃってたらブッ殺す意味が無くなっちゃうしな。そういう意味では絶対に極道はブッ殺すべき存在として描かれ続けるのが本当に素晴らしいです。


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「に…忍者全部ブッ殺したら…昔みてーにまた堅気…恐喝りてえなあ~~…!!」「恐喝れば善し!」


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「邪魔な政治家──沈殺めて……いいんスかァ!?」「沈殺めて善し!」


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「児童臓物 売捌してええのか!?」「売捌せば善し!!」

ここのシーンホント笑ってしまったwww すごい真面目な顔して言ってることが極悪なんだものwww いや正直、10巻はこれだけで読む価値ある巻ですなw


と言いつつも、10巻で既に次の戦いが始まるスピード感も非常にグッドなんですよ。グラスチルドレン篇という大勝負が終わったばかりなので幕間が多く入るのですが、その幕間も忍者(しのは)と極道(きわみ)の関係性の話をしたり、すぐに次の八極道の話をしたりと急展開します。

この展開の早さも「忍者と極道」の魅力の1つですね。名乗り合いをして決着するまでも数話で終わるし、やはりスピード感があってこその面白い作品だと思うのですよ。


思い返すと、ジョジョも3部や4部は数話で戦い終わってて面白かったです。5部に入ると1巻でひとつの戦いくらい長くなって、連載で追っても意味がわからんみたいなことになってました。6部以降はノーコメント。

なので、やはり長過ぎるのも問題だと思うのです。「忍者と極道」はそのあたりまだまだスピード感があってグッドです。一気に読めてしまう。

しかも展開が早いのに対して情報量を詰め込みガチなので、決して内容が薄いわけでもないのも非常にグッド。面白い作品はきちんとそういった理由付けがあって面白いんですな。


さてさて、11巻からは次の八極道 繰田孔富 戦が展開されていきます。まだ本丸の八極道まで連載でも辿りついていないですが、当然次も楽しみですな。


眠気覚め度 ☆☆☆☆☆


6巻の感想はこちら(生首エンターテイメントはグラス・チルドレン篇で大きな転換期を迎える)
7巻の感想はこちら(忍者と極道の共闘は生首エンターテイメントを最高潮に盛り上げる)
8巻の感想はこちら(グラス・チルドレン篇最高潮、ガムテと忍者の決着迫る) 
9巻の感想はこちら(ガムテが主人公になりました)


忍者と極道(10) (コミックDAYSコミックス)
近藤信輔(著)
講談社 2022-09-14T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.5
¥726


鋼鐵の薔薇 1巻 - 狼の口の久慈光久先生新作は薔薇戦争が舞台

自分が愛してやまない「狼の口」の作者、久慈光久先生が薔薇戦争を描く「鋼鐵の薔薇」1巻です。

「狼の口」と比べて最初から戦闘描写多めのお話となっています。

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話の大筋が戦争であり、かつ一人の騎士に焦点を当てているので戦闘描写が多くなるのも当たり前ですな。

そしてこの戦闘描写、「狼の口」時から思っていたのですが、非常に細かくしっかりやり取りを描いているんです。そこがやはり久慈光久作品の魅力かなと思ったり。

特徴として、大ゴマの連発はあまり使わず、1ページに細かいコマを配置してひとつずつやり取りを描いてくれるのです。なので戦闘の細かさや駆け引きがわかり、戦闘の面白さがきちんと理解できます。

逆に丁寧過ぎるので面白くないという人もいるのかなとも思ったり。まあ、そこは趣味の問題でしょう、私は凄く好きです。


また、「狼の口」同様に、残虐なキャラは本当にしっかり残虐として描かれるのが良いんですよ。

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「距離30ヤードでは銃で装甲兵を仕留められないということか」

これは司令に失敗した兵を処刑するリチャード公の残虐性を表現する話のひとつになります。生きている人間に甲冑を着せて、何ヤードからの銃を撃てば装甲を貫けるのかという実験になります。

そしてここからが久慈光久節が出るところなるのですが、この描写を丁寧に丁寧に描いていくんです。20ヤードで撃つと甲冑はどのような衝撃を受けるのか、その下の人体はどれくらいのダメージを負うのか、10ヤードなら甲冑を貫いて兵を死に至らしめるのかなどなど。これらを1話まるまる掛けて描写します

こういう丁寧な描写をしっかり積み重ねるのが久慈光久節だと思うんです、いま名付けましたが。だからやはり、好きな人は凄く好きな漫画家の一人だと思うんですよねえ。「狼の口」も凄くよかったし、この「鋼鐵の薔薇」にも大いに期待したいところです。


とはいえ、まだ1巻であり、正直いまのところインパクトが弱いかなという印象があります。「狼の口」は1巻から抜群に引き込まれたので、興味を持たれたらまずはそちらから読んだほうがいいかもしれません。


眠気覚め度 ☆☆☆


2巻の感想はこちら(戦闘描写も拷問描写も丁寧過ぎて素敵)


鋼鐵の薔薇 1巻 (青騎士コミックス)
久慈 光久(著)
KADOKAWA 2022-07-20T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.6
¥713


狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (HARTA COMIX)
久慈 光久(著)
KADOKAWA 2011-07-21T00:00:00.000Z
5つ星のうち4.4
¥469


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