「唯一残されるのは罪。マクベス夫人が、そして私が見たくなかったもの」

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 舞台「マクベス」の公演と野菊の復讐が平行で進んでいる「累」8巻は本当に素晴らしかったです。特にマクベス夫人を累の境遇と重ねることによって、その役に没頭すると同時に罪から目をそらせなくなる展開が非常に良く表現できています。

夫であるマクベスと共謀して王を殺害し、マクベスを次の王へ、そして自身を王妃へとするマクベス夫人。共謀時は怖いものなど無く、人を殺すことすらいとわない信念と野心の強さを見せます。しかし、いざ王権を奪取したものの、その後は悪政等々より周囲から追い立てられ、最後にはその信念、野心を失い犯してきた罪に脅え心を壊していくその姿、それを演じる累自身がまるでマクベス夫人そのものになってしまったかのような演技。このマクベス夫人と累のこれまでの罪を重ねることによって、改めて現実を直視させるという見せ方は本当に上手い。ただただ魅入ってしまい、ページをめくる手が止まることはありませんでした。

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それにあわせて、復讐を誓った野菊の動きと心の葛藤も素晴らしいですね。復讐するために、決して許すまいとしていた過去の自分をも利用するその信念。こちらも累同様に、内に秘めた熱い怒りが煮えたぎっています。その駆け引きがたまらなく面白い。

とはいえ、既に体勢は決しているかのようで、全ては野菊の計画通りに進んでいきます。そして終盤のあの展開ですよ。非常に、非常に続きが気になるところで終わってるので早く続きが読みたい!


ところで、その引きの為にあまりページにデビルズラインの1話が載っていたんだけど、これどういう関係なんだろう?


7巻の感想はこちら (累 7巻 - 姉妹の騙し合いが始まる)
9巻の感想はこちら (累 9巻 - 明かされる "いざな" の生い立ち)

眠気覚め度 ☆☆☆☆☆