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「この世にひょうげものなぞ要らぬ」

全ては江戸幕府安寧の為、そして徳川家泰平の為、家康は遂に豊臣家を滅ぼしに動き出す。

前巻20巻で既に大阪冬の陣への動きが始まっていましたが、21巻ではそこから大阪冬の陣に突入します。
家康の泰平への思い、世の中の戦国武将達の泰平への思い、そして古田織部の豊徳合体を目指した泰平への思い。それぞれの思惑が互いに絡み合い、駆け引きがされていきます。

秀吉が天下を取るために信長を斬ったという話の「へうげもの」ですが、思えば秀吉の人間の変わりようも描き方が凄まじかったものがあります。最初は単なる小物風に描き、その野心を徐々に表し始め、関白となってからは常に自分の世を、豊臣の繁栄を思い描くがゆえに様々な思惑、疑念にかられ、遂には利休をも処刑し孤独の身になるまでを描いていました。
一武将から、上り詰めた人間の変化の様をまざまざと描くのは壮絶な表現となっていました。

この家康も同様です。初期は一大名、国の行方を慮るまさに理想的な君主というような描かれ方をしていました。しかし、秀吉が倒れ関ヶ原の動きになってからその権力を得るために、野心のために様々な策略を張り巡らせ外堀を埋め、遂には豊臣方を打ち破り江戸幕府を開くに至ります。江戸幕府開幕後もその野心は衰えることなく、その結果が大阪冬の陣へと繋がります。

ここまで「へうげもの」を読んできた方ならその家康の徐々に、しかし大きな変化をしっかと感じるはずです。21巻の家康には初期の面影はありません。野心が、権力が人を変え、そして友人らの人間関係までをも変えてしまうという実に素晴らしい変化の仕方だと思います。


その家康の変化に対し古田織部も、「大御所様の仰っていた「泰平」とは、
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徳川家の泰平が事だったのですな」

と、思わず皮肉を言う始末です。
この当時の家康の動きが如何に一個人の為だったのか、諸大名からは如何に捉えられていたのかを適切に表現したワンカットでしょう。

痺れた、このシーンとここから冒頭の「ひょうげものなど要らぬ」で完全に古田織部と家康が決別したシーンまでが最高に痺れた。心にガツンと来た。その絵、その表情、その間、まさにこれが最高の漫画的表現と言えるでしょう。


やっぱりすごいなあこの作品は。心理描写、駆け引き、それらが高度に描画されていて、一気に読み手を世界に引き込ませる。それでいて、ところどころに古田織部の「ひょうげた性格」から笑いを外さないところも素晴らしい。狙撃された時に頭に日光が反射して致命傷に至らなかった時の表現とか最高に笑えました。


思わず
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こんな顔もしてしまうというものです。



ホント、歴史漫画というのは作者の描き方、歴史の捉え方ひとつで大きく面白さが変わってくるのがまた面白い。
「へうげもの」は間違いなく歴史漫画のトップクラスとなる作品と言えるでしょう。


さてさて、古田織部の寿命も後少し、この「へうげもの」もあと数巻で終わってしまうのかなと考えると寂しいものがありますなあ。


20巻の感想はこちらから (へうげもの 20巻 全てを疑い始めた家康、そして大阪冬の陣へ)
22巻の感想はこちらから (へうげもの 22巻 - 愚民政策)

眠気覚め度 ☆☆☆☆