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「私の妻と母親を殺した少年Aや‥その少年Aを甘い処分に下した世間は‥‥私に‥‥どんな償いをしたと云うんだ!!‥‥」

癌やエイズの特効薬の材料となるが、凶暴な肉食性の上に一噛みするだけで相手を死に至らしめる殺人コオロギ。そして少年犯罪やそれを擁護する人権派弁護士や裁判官、果ては企業汚職まで取り扱う、人間社会への罰を描いたモンキーピープルの7巻がKindle限定電子コミックで発売されました。

モンキーピープル『人類を食い尽くせ』7巻デジタル版: 人類を食い尽くせ キラークリケット


7巻はコオロギが街中で繁殖し、次々に人が死んでいったことの矛先が藤共蜂薬品に向かっているのと、重役たちがその対応をどうするかというところから始まります。

その対応方法は徹底的な事実の否定。藤共蜂薬品と街中のコオロギの関係性は全く無い、証拠があるのなら出せという態度で臨みます。まさに企業汚職の典型と言えるような姿勢を取るわけです。
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「疑わしきは罰せず」、「疑わしきは被告人有利」、心配はない、証拠不十分で無罪だ。

元々この重役たちは癌やエイズの特効薬である「ドリーム」を人体での臨床試験をすっ飛ばして市場に売り出すという製薬会社としてあるまじき態勢で動いてきているし、自責の念に駆られた東町を、コオロギの件について公表しようものなら会社が潰れて社員は路頭に迷う、お前にその責任が取れるのか、という論法で封殺しています。つまりは汚いところは既に十分見せていたんですね、それを改めてしかも最悪な形で表現したという形になっています。
うーん、大企業の闇は深い。。。


一方、妻と母親を少年に殺害された美杉の方にも動きがあり、復讐を遂行しようと少年Aに対して恩赦を与えた人権派弁護士や裁判官達に接近します。


「この件で本当に罪の償いをしなければならないのは!
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犯罪者を擁護し続ける偽善者共だ!!」



そして弁護士と1対1で会話をし、その意図を問い、殺人コオロギをけしかけようとする美杉。
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「法律が貴様らの罪を不問にしても、遺族や社会常識がお前達弁護士や裁判官を不問になぞするものか!!」

会話の末に無責任な弁護士の発言を受け、その怒りを真っ向からぶつける美杉。
これを通して作者の釋英勝は被害者の、特に少年犯罪の被害者について強く主張しています。これは実はモンキーピープルだけでなく、ハッピーピープルの方でも同様の話がありました。もっとも、あちらでは少年は捕まることもなく、殺人を犯した罪の意識もなく、のうのうとそれを繰り返す結末になっていましたが、あとがきコメントで「強い怒りを感じながら筆を執った」ということを書かれていたのを覚えています。だからこそ、このモンキーピープルは釋英勝の強い主張をぶつけているのでしょう。(おそらく)打ち切りになった後でもこうして個人で続きを描いている点でその点がうかがえます。

個人的にも、こういった美杉の主張はわかります。少年だからという理由だけで更生が、未来がというのはあまりにも被害者のことを考えていない。目には目を歯には歯をではありませんが、因果応報、それなりの罰は与えられるべきです。ましてや中学生ともなれば分別がつかないわけがありません。自分がやっていることを理解していないはずがありません。その時点で理解できないのであれば、教育不足だし社会不適合者ということになると思います。なので、もしも加害者を許すというのであれば、徹底的な再教育が必要と考えます。釈放などありえません。

また、少し脱線しますが、万引きという窃盗の俗称は即刻やめていただきたい。万引きというさも出来心でやってしまったような軽いイメージは絶対にいけません。犯罪を犯しているということを認識させるべきです。極端な話、そのようなことをした相手にはそれ相当の財産没収をすべきなのです。方で決められたことというのは、社会のルール、社会のルールは他人との関わり合い方のルールです。それなのにルールを破って相手の尊厳を傷つけたのであれば、それ相応の仕打ちを受けるべきです。それが法です。

とはいえ、そうやって罰した上で反省、更生の余地があるのなら、長い目で観察というのはありでしょう。
それでもダメなら、、、美杉のような復讐者を生むことになってもおかしくない世の中であるのは間違いないでしょう。
相手がルールを破っているのだから、破られる可能性も考慮すべきです。「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだ」ということですね。


このような世間への問題提起作品がモンキーピープルとなります。ハッピーピープル好きの私としてはこの作者の描き方、表現の仕方が好きですし、この作品も非常に楽しんで読んでいます。
おそらくそろそろ完結しそうな感じですね。このまま一気に駆け抜けていただきたいです。
だけど次が出るのは1年後とか、長いけど待つよ俺は!

そういえばハッピーピープルも電子化に向けて作業中らしいです。こちらも楽しみですね!

6巻の感想はこちら (モンキーピープル 6巻 - 打ち切り作品が電子版で連載再開!)

眠気覚め度 ☆☆☆☆